――二日目の深夜――


香は昨夜と同じ姿で俺の元に現れた…。







If I can meet in a dream 1





前夜と違い今回は夢と現実を混合するような間違いはしなかった。
何故なら…目の前にいる香の肌には昨夜の痕跡が何一つ見当たらなかったから…
…。



いくら夢の中とはいえ今まで溜め込んできたものが一気に噴き出したのだ。
加減しろということが土台無理な話しだろう…。





始めのうちはそれこそ優しくしていたものの、一度だけで我慢出来る筈もなく―

二度、三度と回数を重ねていく度自分の思う儘、彼女の躰を貪った。


行為の合間にまた来てもいいかと訊ねてる香を不審に思いながらも俺は一言……
構わないとだけ答えた。





そして再び香は夢の中に現れた――





自分でも夜な夜な香を相手に不埒な夢を見ているという後ろめたさは自覚してい
る。

しかし…夢の中でだけでも香に対して思いの丈をぶつけることが出来る影響なの
か――
不思議なことに彼女と一緒にいても以前程の焦燥感を感じなくなっていた。




一方――香の様子はというと…俺に対する態度に全くと言っていい程変わりがな
かった。


俺の日課にしてるナンパに出くわせば相も変わらずハンマーを繰り出してきたり
…。

変わらぬ日常に俺は少しがっかりしたような…どこかホッとしたような複雑な思
いを抱いていた。





     *





現実と違い夢の中でなら俺も素直になれるような気がして普段なら決して口にし
ないような事を言う様に心掛けていた。
とはいっても……。


行為の後、抱き合っている時にメシが旨かったとか…そんな他愛無い内容だ――


それでも普段の俺ならこんな事を口にしないからか…。
香は満面の笑顔で嬉しそうに喜んでくれる。


その笑顔をもう少し見ていたくて、滅多にしたことがないリクエストをしてしま
う。



後にこの事が俺に違和感を与えることになるとも知らずに――





     *





翌朝――



いつものように香に叩き起こされた俺は洗面所で顔を洗い髭を剃るとリビングへ
と向かった。


そこで用意されていたものは焼き魚に味噌汁、納豆といった典型的な和朝食だっ
た。
それを見た俺は昨夜の夢の中で自分の言った言葉を思い出す。



――ここ最近の朝メシずっと洋食だったろ?久しぶりに和食が食いてぇんだけど
……――








なにかがおかしい――

そう感じながらも香に急かされ食卓につくと箸を手に取り目の前のメシを食べる
ことに専念する…。



しかし――やはり気になるのは朝食のメニュー……。


チーの平穏な日々



「なぁ…香。」
「なに?」
「たいしたことじゃないんだけどよ…。和食なんか久し振りだろ?だから何かあ
ったんじゃないのかと思って…よ。」
「なに言ってんの?…アンタが昨日食べたいって言ったんじゃない。」



そんなことよりさっさと食べて片付けちゃってよと言いながら香は黙々と食べ始
める。
機械的に箸を動かしながら、頭の中で今さっき香が言った言葉を繰り返す。



〝…アンタが昨日食べたいって言ったんじゃない。〟



いったいどうなってるんだ?




先程交わした香との会話――
香も昨夜の『夢』を見ていなければ…本来なら成立し得ないものだった筈。


あの〝夢〟を同時に香も見ているなんて現実にそんな事が有り得るのだろうか?

ブルッと頭を振り、そんなことは有り得ない…世迷い言だと己に言い聞かせる。
しかし…箸をきつく握り締めるその手が自分自身でも納得していない事を表して
いた…。










――その晩…香は夢の中へ現れなかった――



その夜を境に彼女は夢の中に現れず…香自身、徐々に憔悴しているように見える

俺はそんな彼女から目が離せなくなり――



ある日家の雑用をこなす香を捉まえ間近で見てみると顔色が優れないようだった

梅雨が明け連日暑い日々が続いているせいかと始めは思っていたがどうやらそれ
だけではないらしい。


「大丈夫か?」
「何が?」
「何がって…体調とか…。顔色も悪いみたいだし…。」
「大丈夫。ただ…夜が蒸し暑くて寝付きは悪いし眠りも浅いだけのことだから…
。」
「そうか…。」



寝付きが悪く眠りも浅い――
…つまり〝夢〟も見ない。



安易な三段論法で結論に辿り着いた俺だがこれ以外の説明がつかなかった。

香の声で考えていたことを遮断され結局それは確信に至らず終わった……。





     *





その夜…久しぶりに〝彼女〟が夢の中に現れた――





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珍しく人ではなく別のもの(食事)を描いてみましたかお

周りを線で囲んでいましたが

何だか邪魔だったので消してみたのですが・・・

ちょっとぼやけちゃいましたかね目