昨日、ゆきゅにゅんとの親&うちの親を含め、銀座で食事会が行われました。


結果、5月2日から同棲決定しました。


まだ、荷造りとか引っ越しどうする?とかの段階ですが、相手の御両親にも了解していただき、結婚前提で一緒に暮らすことになります。


アメブロのピグ(エジプト)で出会ってから4ヶ月。

少し早いペースですが、なんとかここまでたどり着けました。

短い期間ですが、毎日スカイプしたり、電話したり、会って遊びに行ったり・・・

楽しい日々でした。

ただこれからは近くにいるからといって、それに甘えず、彼女のことを常に考えていきたいと思っています。


また、今まで付き合ってきた人は何人かいましたが、僕の人生の中で一緒にいる人をゆきゅにゅんに決めたのは、彼女の笑顔をみた時に、

「ああ、俺はこの子を一生守っていこう。何があってもこの子の味方でいよう」


心からそう思えたからです。


とりあえず、同棲という形ですが、これは結婚の準備段階ということで。


同棲に慣れてしまって、大事な結婚をあまり先延ばしにならないよう、二人で頑張って準備していきたいと思います。

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みるめの車中アメブロ小説








新掛橋駅






*******************************************************










「うん…。あの時は花火大会に行った帰りだったんだ。ユキって子と一緒にね」



そう美紀は言い、堅くなった体を少しだけ動かした。
腰を上げるのも見るからに苦しそうだ。



「花火大会は夜9時前に終わったんだけど、駅が遠くてさ。ユキと電車に乗った時はもう10時を少し過ぎてたな…」


美紀は考え込むようにしながら、その時の様子を淡々と語り始める。


「花火客が多くて、座席に座れたのは何駅か過ぎたあたりから。降りる駅はユキの方が早くて、ユキと別れた後は、一人で携帯電話をいじってたんだけど…」



「ふーん…。ユキって、高校の頃の友達か?」



と、敦が聞く。

ここは美紀の病室。

8畳ぐらいの個室には、所々に数ヶ月間の闘病生活の跡が残っており、結樹が想像していた以上に色々な検査や治療が行われていたようだった。

窓に引かれた純白のカーテンがいかにも病室といった雰囲気をかもし出している。

両開きになったカーテンは窓の半分ぐらいを覆い、その隙間から昼間の暖かい日差しが差し込んでいた。

窓の外には青空の大海が広がっている。
そこへと小さな雲が遊覧船のようにいくつも浮かんでいて、秋風が船を大航海へと送り出しているように見えた。

網戸から風がすり抜けてきて、美紀の髪とカーテンの裾を同調させるようにヒラヒラとたなびかせている。

他の個室には個人用のトイレやバスルームまで付いている部屋があるらしい。
最初、担当医にもそちらを勧められていたが、金銭的な都合上、一番ランクを下げたこの個室を選ぶことにした。

といっても、病室のベッドの他にクローゼットや地デジ対応型のテレビ、洗面所まで完備されているのだが。
普通に入院生活を送るには申し分ない。


「ユキは中学の頃のクラスメイト。なんでも、彼氏と一緒に花火大会に行く約束してたらしいんだけどね。それが、前日になって、いきなり仕事で来れないって連絡がきたらしくてさ。だから、私がその代役に抜擢されたってわけ」



「そっか…それで?」



と、今度は結樹が美紀へと聞いた。


「うん…とにかく、その日のユキは、帰りの電車の中までずっと彼氏の愚痴ばっかりだったな。…まあ、気持ちは分からないでもないけどね…南くん?」



と、美紀は結樹の方を見て不敵な笑みを浮かべた。

結樹は少し気まずそうな顔をする。


「南くーん!」



と、敦まで馬鹿にしてくる始末。

美紀と付き合ってた時の結樹の態度と照らし合わせたいのだろう。



「ま…まあ、いいじゃんか昔のことは…。とにかく、それでどうなったんだよ?」


と、結樹は無理矢理話を戻す。



「そうね?過去のことだものね?」


と、美紀はサラっと言うと、結樹から少しだけ目をそらして話を続けた。



「ユキが降りた後、10分ぐらいだったかな…。彼女からメールがきたの。それがね、ユキが電車の定期入れをどこかに落としたって内容でさ」


「定期入れ?じゃあ、そのままだと駅降りれないよな?」



と、敦が言うと、


「乗車駅には定期使って入ったのか?もしそうだったら、落としたのは乗車駅の構内か、電車内か、もしくはユキって子が降りた駅…?」


と、結樹が言った。



「うん。乗車した駅がユキの定期の区間内だったらしいから、持っていた定期を使って電車に乗ったみたい」



と、美紀が言うと、


「そういうの、いくらか金払って、とりあえず改札だけでも出れないのか?」



と、敦が聞く。


「うん…多分、できると思うけど、ユキ、花火大会の出店でいろんな物買っててさ。お金もほとんどなかったみたいなのよ」


「ふーん。まあ、彼氏がらみのやけ食いってやつか?」



と、敦が苦笑する。


「まあ…ね…。だから、このままじゃ駅から出られない、どうしようってメールで騒いでた。それで、とりあえず私は定期を見付けるために、自分達が座っていた座席とか、立ち乗りしていた辺りとか、とにかく電車内をくまなく探してみたのよ」


「うん、それで?見つかったのか?」



と結樹が聞く。


「見つからなかった…だよね?」



と、言いながら病室に入ってきたのは理恵だった。


「あ!理恵さん、おかえりなさい」



と、真っ先に言ったのは敦。
理恵の手にぶらさげられた袋には結樹達のために買ってきたのであろう、飲料水やお菓子類などが詰め込まれていた。
おそらく、地下1階にある売店で買ってきた物だ。


「あれ?お姉ちゃん着替えたの?しかもその服、ちょっと気合い入りすぎじゃない!?」


と、まっさきに美紀がつっこむ。



「えー…そうかなあ?普通よ普通。女である限り常にルックスには気を使わなきゃね。しかも久しぶりにこの面子で会うんだし!」



と、理恵は意気揚々と語り、袋に入った飲み物やお菓子を3人へと配る。

どうやら、先程、喫茶店で結樹達に会う前にわざわざ着替えていたようだ。


「美紀、お菓子とか食べて大丈夫なのか?」


と、結樹が聞く。



「うーん、いいとも悪いとも聞いてないし…まあ自己判断ってことで。今日の検査もいつもと何も変わらずだし!」



と、美紀は少し楽しそうに話す。

理恵は久しぶりに見た二人の会話の光景を微笑ましそうに眺め、美紀の近くにあった丸椅子に腰掛ける。

しかし、結樹の目には、そんな理恵の表情が、何も進展しない美紀の治療に対して苛立ちを覚えてるようにも見えた。

自分が深く考えたって何も変わらない。
そう気持ちの上で整理できたらいくらか楽になれるのに…。
そう思いながら心の奥底で現実と戦っているのだろう。


「あ、理恵さんは何か食べないんですか?」



と、敦が聞く。


「えー…と、そうだな。私は何かさっぱりした物が食べたいかな…。例えばその棚に置いてあるリンゴとか…ね。ア・ツ・シ!」


「おやすい御用で!」



と、敦は即座にリンゴの皮むきに取りかかった。

病室の中に笑いが起こる。
しかも、昔、不器用だった敦が今は洋食レストランに勤めているらしく、すばやい手つきで皮むきをする姿は他の3人を驚かせていた。

結樹はそんな光景を眺めながらも、元気に走ってた頃の美紀を思い出してしまう。
今は空元気でも、笑っていてくれる美紀の表情がせめてもの救いだ。



(病人に救ってもらうとはな…。駄目彼氏ぶりは今でも健在か…)


そんなことを思いながらも、話を戻すように、



「あ、それで、さっきの話の続きだけど…」



と、結樹自身が切り出した。


「届けられてたみたいよ。駅にね」


と、理恵が代わりに言う。



「うん。結局電車の中はどこにも見当たらなくて、とうとう私の降りる駅に着いちゃったの。だから、一旦その電車を降りたのよ」



「美紀の降りる駅って山王駅か?」


と、敦が聞く。



「うーん、今は違うんだよね。一人暮らししててさ。だから、山王駅から3つ駅を過ぎた新掛橋で降りるの。南くんには前に話したけど、今、私、塾の講師してるんだ」


「夜仕事終わるのが結構遅いらしくてさ。あまりにもそんな日々が続くもんで、たまらず美紀の父親が一人暮らしを勧めたらしい」


と、その後を結樹が代わりに説明する。



「新掛橋か。ここらへんじゃ少し大きめの駅だな。それにしても、美紀が塾の講師かあ…。俺はさすがにもう学校の教科書は見たくねーな…」



と、敦が言った。


「大学に行って教職の免許とったんだけど、なかなか教師の空きってないのよ。まあ田舎だからしょうがないんだけどね」


と、美紀は言い、手元にあったミネラルウォーターを少し口にした。



「それでね、新掛橋で降りた後、とりあえずユキのいる駅に戻るためにさ、別のホームで電車を待ちながら、ユキへと電話しようとしたの。そしたら、いきなり構内放送がかかったのよ」



「構内放送?」


と、結樹が聞く。



「うん。『山根ユキ様、定期入れの落とし物を預かっておりますので、駅員室までお越しください』ってさ」


「おかしくないか?」



と、とっさに結樹が言う。


「うん…。私も最初は見付かったことの安堵感が大きくて、そんなこと全然気にしなかったんだけどさ…」



と、美紀が言った。


「ん?何が?親切な誰かが届けてくれたんだろ?」


と、敦が言う。



「あのな…敦。届けられたのはユキって子の定期入れだぞ。それが何で新掛橋駅に届けられるんだ?」



と、結樹が説明した。


「拾ったその人も新掛橋で降りたんじゃないか?」



と、敦が言い返す。


「じゃあ、その人が新掛橋で降りたとしても、見ず知らずのユキって子がなぜ同じ駅にいると分かる?しかも、定期に記された乗車区間はとっくに過ぎてるはずだろ?」


「あ…そうか…」



と、敦は言い、考え込む。



「つまり、美紀が定期を探してることを知っていた人間で、なおかつ、美紀が新掛橋で降りたことを知っている。その上で意図的に駅員室に届けて、新掛橋駅内に放送を流させたんだ」


「意図的に?」



「そう。例えば、『今、この駅で女の子が定期入れを落とすところを見たんだけど、その人を見失ってしまった』とかな」


「何でそんなことをする必要があるんだ?」



と、敦が聞く。


「さあ…それは分からないけど…」



と言い、結樹も考え込む。

その時、



「美紀、その続きがあるんでしょ?」



と、理恵が言った。


「うん…。実はその後、駅員室に向かう途中で立ち眩みっていうのかな…めまいみたいのがしてきてさ。地下道の通路にあったベンチで少し休んでたんだ」


美紀は先程より慎重に一部始終を話し出した。



「新掛橋の駅員室は改札とは逆方向にあるの。だから、人通りがほとんどなくてさ。しかも、地下道だからなのか電灯も少なくて周りが少し薄暗い感じだった」


「ふーん…。そういえば、昔、ツレに聞いたことがあるんだけど、かなり前にその駅は別のローカル線の終着駅にもなってたらしい。まあ、今となっては廃線になっていて、使われてたホームや地下通路も薄暗くて気味悪いって言ってたけど」


と、敦が言った。



「うーん…私はいつも改札方面しか通らないし…その時もそんな場所は見当たらなかったかな…。ただね、その薄暗い中、通路の奥から女の人が一人歩いてきたのは覚えてる」



「女?」


と、今度は結樹と敦が声を合わせて聞く。


「うん…。スラっとしてスタイルのいい女の人でさ。いかにもってぐらい高そうな赤いスーツを着てた。赤いテンガロンハットをかぶって、サングラスをした姿がその場所の雰囲気に奇妙にマッチしてて、一瞬ドキッとしたわ」



そう美紀が言う。


「それで、その女に何かされたのか!?」



と、結樹が聞いた。


「何かって言われると…何もされてないんだけど…。でも、その人が私の前を通り過ぎる時、突然、カツンって音がしたの。だから、私は何かなって思って、辺りを見回したのよ」



「何かの落とし物?」


と、結樹が聞く。



「うん。よく見渡すと、通路の端に小さな女性用の腕時計が落ちてたの。多分、その人が落とした物だと思う。でも、見るからに古そうで、その女性にはとても似つかわしくないなって、その時もそう思ったの」


と、美紀は語る。


「というか、それが今の美紀の病気と何が関係あるんだよ?」


と、敦が聞く。



「分からないよ…そんなこと。ただ…」



「ただ?」



「ただ、その時計を拾った時から医務室で起きるまで全く記憶がないの」



「記憶がない?」



と、結樹が聞く。


「うん…気付いた時には駅の医務室のベッドの上だった」



「そうか…。直接何が原因なのかは全く分からないけど、その女性と腕時計のことは気にかかるな」


と、結樹が言う。


「ごめんね、南くん。いろいろ忙しいのに…」



「別にいいさ。それに、俺はまだ何もしてないし、何もできてない」



そう言い、結樹は美紀の顔をじっと見つめる。


「ううん。そんなことないよ。聞いてくれてくれただけ嬉しいよ。ありがとう…」



そう美紀が言った時、



「はいはい!カット!カットー!そこまでー」



と、理恵が椅子から立って笑いながら口を挟んでくる。


「ちょっとお二人さん、そういうのは外でやってくれるかなー」


と、敦もニヤニヤしながら野次を入れてきた。



結樹と美紀は二人して照れた顔をしながら目を伏せる。


「あのなー…そういうことじゃなくて…」



と、結樹が言うと、


「いいっていいって!南くんの言い訳は10年前に聞き飽きたよ!」



と言って、理恵が茶化す。


敦もニヤけ顔を未だキープしているようだ。


「美紀も強がってないで、早く好きなら好きでヨリを戻し…」



と、理恵が言い掛けたのを、



「お姉ちゃん!うるさい!」



と、美紀が頬を赤らめて遮った。

昔からこの会話だけは、4人の間で絶え間なく続いていた。

半ばお決まりの会話である。

こうなると、結樹はただ茫然と会話を聞き流すしかない。


そして、この4人のやり取りが収束を迎えるまで10分以上の時間を要する。


未だ釈然としないこの議論だが、やっとのことで落ち着きを見せてくると、頃合いを見計らい、結樹が美紀へと訪ねた。



「そういえば、美紀、その女性が落とした腕時計、どうなったんだ?」



と、結樹は足組みをしながら聞く。

すると、



「ん?そこの南くんの足下にある引出しに入ってるよ」


と、美紀が言った。

意外な返答に、結樹は反射的に引出しから距離を取る。



「あの後、無くなってたと思ったんだけど、私のスカートのポケットに入ってたの。でも…何か気味が悪くてさ。私はあまり見る気になれないのよ」



「あのさ、ちょっと見てもいいか?その時計」


と、結樹が聞いた。



「うん…でも、あまり私には見せないでね」



「ああ、分かった」


そう結樹は言い、足元の引出しを開ける。

すると、奥の方に白いハンカチが敷かれ、その上に銀色の腕時計が置かれているのが分かった。


そっとその時計を取り出す。
美紀が言った通り、いかにも年代物といった作りだ。
所々細かい傷が付いていて、長針と短針は10時45分で針を止めている。
秒針は元々付いていないようだった。

敦もその腕時計を手に取ると、実際に身に付けてみたり、指でつまんだりして眺めている。



「へえ…別に何の変哲もない古時計だけどな…」


と、敦が言った。

確かに何の変哲もなく、いくら見ても特に美紀の病気に関わるようなところは見当たらない。

結樹もしばらくその腕時計を眺めていたが、美紀にはあまり思い出させるようなこともしたくなかったし、だいたい時計が病気の原因になるなんて馬鹿げてる。
そう結樹は思うと、手掛かりを探すのは一旦諦めて敦の手からその腕時計を奪い取ろうとした。

しかし、その時、不意に窓から強めの風が吹きつける。

敦がその腕時計の皮のバンドの部分だけを持って眺めていたため、風によって時計が小刻みに揺れていた。

日差しが当たり、キラキラと光が反射する。



「ん?」


しばらくそれを見ていた結樹は自分の目を疑った。

今まで何も書かれていなかったはずの時計の後ろ側の天板。

そに文字が写ったように見えたのだ。



「敦、ちょっと待て!」



「ん?何だよ?」


と、敦が眠たそうな声で言う。


「いいからちょっとその時計、貸してみろ!」



結樹は敦からその腕時計を奪い取ると、窓から差し込む日差しに直接当ててみる。

すると、何も書かれていなかった裏側の天板に文字が浮かんできたのだ。



「…な、何だよこれ…」


敦はそう言い、息を飲む。



「うーん…。どういった仕組みになってるのかは分からないけど…。とにかく、日差しに当たると文字が浮かぶようになってるらしいな」



結樹はそう言うと、窓際に近づき、太陽の光へとその腕時計をかざす。

すると、先程うっすらとしか見えていなかった文字が、そこへとはっきりと写し出された。

日差しが当たり、光の文字が浮かび上がっているように見える。

そして、その文字を見た時、更に驚いた二人は顔を見合わせた。

そこへはこう書かれていた。



『7th underground , two face』


「何かミステリーみたいになってきたな!」とか言っている敦のことはひとまず置いておき、結樹はじっとその文字を眺める。
美紀と理恵は何が何だか分からず、ただじっと二人のやり取りを見つめていた。

結樹の頭の中は少しずつ混乱し始める。


(偶然なのか…?ツーフェイス…これはあの咲月という子が言っていた言葉だ。意味は…二つの顔?二重人格?)



結樹は自分の頭を冷やすように、目をつぶり、その腕時計を手でギュと握りしめた。

そして、美紀には隠すようにして、そっとその腕時計を元の引き出しの中へと戻したのだった。


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旧友






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もう約束した13時をだいぶ過ぎている。
昔から時間にルーズな奴だったが、数年たったとしても、人はそう簡単に変わらないらしい。

結樹が今いるのは相良総合病院の受付ロビー。
総合病院というだけあって、院内はかなりの設備投資がなされていた。

広々としたスペースには20名ぐらい座れる長椅子が何列かに渡って並べられており、受付は、内科、心療内科、外科、皮膚科というように、診療科ごと別々に設けられている。

受付事務員の手際もさながら、新しいカルテ管理システムの導入によって、診療データが電子カルテとなり、院内どこからでも、患者の詳細情報や系列病院での治療履歴までもが一括管理、閲覧できるようになっているらしい。

午前中から昼時までの混みようは言うまでもなく、老若男女、多くの患者や付き添いの人間が席を埋め尽くし、せわしない表情をした医者や何人かの看護師が白衣を揺らしながら行き来していた。

小声で話していても、これだけ大勢の人間の声が合わされば、開演前のコンサートホールのように騒がしくなる。
まあ、話の内容や事情はかなり異なっているだろうが。

通常の診療は午前中で終了するため、今のロビーは小一時間前の騒がしさが嘘だったかのように静寂さを取り戻していた。
今座席に座っている人間も結樹の他に2、3人程度しかいない。
それぞれが、お互いを干渉しないよう、無意識に離れて座っているのか、この疎らな座席配置は、そのようなことが感じ取れた。

この病院は2階までが吹き抜けになっている。
2階には精神科や心臓外科、脳神経外科のための特別診察室があり、MRIやCTスキャナー、X線レントゲン装置の他に、街の小さな病院ではとても揃えきれない医療機器が設置されていた。
と、まあ、これは、美紀から先日聞かされた話なのだが。

結樹は、待ち続けて固まった体をほぐすように腰をひねると、少しだけ辺りを見回してみる。

この病院の周囲の壁は半分以上が透明のガラス張りとなっているため、至る所から秋の柔らかい日差しが差し込み、それと共に外界の騒がしそうな景色を映し出していた。

時々、正面玄関の自動ドアが開いて人が出入りすると、そこから秋風に近いそよ風が舞い込んできて、結樹の頬をかすめる。
その程良い冷たさが、爽快感を与えてくれ、待たされている結樹の心を多少なりともなだめてくれていた。

それにしても、すでに待ち合わせから45分が過ぎている。
敦史(あつし)の携帯電話を鳴らしてみようとは何度か思っていたが、そこまで急を要することでもないし、何しろ、いちいち外に出て行ってまで話しをするのが面倒くさい。

結樹は近くにある本棚に目をやると、適当なスポーツ新聞を選んで手に取った。

一面記事には、日本のプロゴルファーが海外オープンにて残した優美な成績が大々的に報じられており、その他、野球やサッカーの注目選手のコメントが紙面の端の方へと掲載されている。



(いったい、こんな人たちは、どれくらいの賞金を稼いでいるのか…?月給にしてみると…)


そんなことを思っていた矢先、



「よ!」


と、懐かしい声を結樹の背中へと響かせ、馴れ馴れしく肩を叩いてくる男がいる。

すでに50分近くの遅刻を犯している敦史だ。
待ち人来たれりである。
表情をみる限り、あまり反省の色はなさそうだが。



「遅いぞ敦史…」


そう言って、結樹はスッと立ち上がると、読んでいた新聞を本棚へと戻す。


「悪い悪い、道が混んでると思って、早めに出てきたんだけどさ。どうもこの地域の道路事情は俺の予想を上回っていたようでな」



「別に気にしてないけどな」


そう言い、結樹は横目で昔の悪友をチラリと見ると、不敵な笑みを浮かべた。
それにつられて、敦史もニヤリと笑う。



「変わらねーなー!もう何年たったんだ?」


「うーん、お互い高校卒業してからだから、8年か9年ぐらいか?」



そう、結樹が言うと、


「そうかー、もうそんなにたつんだな。結樹、あんまり里帰りしてこなかったし、お袋さん、寂しがってたんじゃねーの?」


と、敦史は言った。



「さあ、母親もなんだかんだ和葉に振り回されて生活してるみたいだし、暇を持て余してる感じはしなかったかな」


「ふーん。まあ、親孝行は若いうちにしとけよってよく言うじゃんか?たまには帰ってきてやれよ」



「敦史から『親孝行』なんて言葉が聞けるとはな。世も末か?」


と結樹が言い、お互い苦笑いを浮かべた。

結樹が帰郷した時、地元の街並みの変化、母親の手の荒れ具合、懐かしいと思えるはずのものに、多少なりとも疎外感を覚え、心の中に小さな不安を感じていた。
だが、ここに全くの違和感を感じさせない友人と出会えたこと、それが、昔の自分へと戻してくれたような錯覚を与えてくれる。

感じていた不安は自然に地元ならではの安心へと変化していた。



「まあ、積もった話は後にして、とりあえず時間も時間だしな。3階に行こうぜ」


「ああ、そうだな。というかやっばいなあ…50分以上の遅刻か…」



そう敦史が言うと、結樹はそっと敦史の肩に手をやり、


「いや、20分だ」



と、言った。


「え?」



敦史は、少しキョトンとした顔を見せる。


「本当の待ち合わせは13時半だよ」


と、結樹は言った。



「敦史が遅刻常習犯なのは高校の頃から何度も思い知らされているからな」


これが旧友ならではの心遣い(?)である。



*******************************************************



「へー。まあ、確かに変わった話だな」



と言い、敦史はホットコーヒーを手に取ると、一気に半分ぐらいを飲み干した。


「それで?その後どうなったんだ?」



ここは見舞い客用にできた院内カフェ。
院長が直々にデザインした店らしく、店内はブラウンの壁紙やソファーがモダン風に設計されており、所々に置かれた観葉植物が来客者に静穏な雰囲気を与えてくれていた。


「いや、そこまでなんだけどな。その後は何も聞こえてこなくなったんだよ」



そう言い、結樹はアップルジュースを口に運んだ。


「ふーん、まあ、あまり気にしなくていいんじゃないか?それでなくてもおまえ、就職やら美紀ちゃんのことで手一杯なんだろ?」



「うーん…美紀のことについては、できることが限られてるしな…。まあ、手一杯なのは否定できないけど…」


そう言うと、結樹はテーブルの端に置かれた飲食メニューを眺める。
無論、注文する気なんてさらさらないのだが。


「というか、その前に、結樹…その肩、なんかあったのか?かなり大袈裟に湿布してあるみたいだけど」



「あ…ああ…。まあ、これはボディプレ…いや、気にしないでくれ…」


そう結樹が言うと、敦史はキョトンとした表情をし、残りのコーヒーを一気に飲み干した。

店の中は結樹達以外に2組ほど家族連れが座っているだけで、落ち着いて会話ができる雰囲気になっている。
この店の店員も交代で昼食を取りに行っているようだった。

まあ、店のメニューからみても、食事自体は軽食が主体で、昼時に混むというわけではなさそうだが。



「それにしてもなあ…」


突然、敦史が呟く。



「ん?何だ?」


「いや、まあな、気のせいかもしれないんだけどさ」



敦史は飲食メニューのドリンクコーナーを見ながら答えていた。


「何だよ?」


「うーん、結樹に面識がないからなんとも言えないんだけど。その子、多分会ったことあると思うんだよな…俺」



「え?その子って『咲月』って呼ばれてた子か?」


結樹は意外な展開に少しだけ身を乗り出して聞いた。



「ああ…まあ、不確かな記憶なんだけどな。中学の頃だったかな。たしか、咲月って名前で、そんな澄ました感じだったような…」


「それで?」



結樹は敦史の手にあったメニューを取り上げる。


「お…おいおい、落ち着けよ…。俺だって不鮮明な記憶なんだからさ。だいたい夢ごときでムキになるなよ。結樹らしくないぜ」



そう言うと、敦史はメニューを結樹から取り返し、店員へと同じコーヒーを注文した。


「いや、まあ…なんか、その夢も夢じゃないような夢でさ…。でも夢なんだよな…。起きてからも頭の片隅にずっと残ってて…」



そう言うと、結樹は落ち着きを取り戻すように、座席へと深く座り直す。
敦史は半ば呆れたような表情を見せながらも、


「ふーん…なんかよく分からねえな。俺もそいつが同じクラスの奴とか、友達とかだったわけじゃないから、あまり記憶にないんだと思うし。たしか誰かの知り合いとか、連れだったとか、そんな感じだったと思うんだけどな」



そう言い、運ばれてきたコーヒーへと砂糖を落としながら敦史が話し出す。


「だからな、もし、俺が知っている咲月って子が結樹の夢に出てきた子だったとしても、そいつについて知っていることはほとんどないんだよ」


と、敦史は言った。



「そうか…。でも、ほとんどってことは、覚えてることもあるんだろ?」


そう結樹が聞くと、敦史はコーヒーをすすりながら、少しだけ真剣な顔を見せた。



「まあな」


「何だよ?」



「あれだ、今はもういないってことだけだよ」


「いない?」



そう結樹が聞くと、


「死んでるってこと」



そう敦史が答えた時、店のドアが開いて、女性が一人入店してくる。

理恵だった。
こちらも待ち人来たれりなのだが。

グレーのワンピースに少しだけヒールの高い靴を履いた理恵は、先日結樹と会った時より、半ば大人っぽく見えた。
久しぶりにこの面子で集まるので、彼女なりに着こなしてきたのだろうか。

理恵は少しだけ店内を見回し、結樹達を見付けると、笑顔を見せながら近づいてくる。
今日集まった本来の目的はこの三人で美紀と会うことだった。


「こんにちは!南くん…それと…」



少しの間、沈黙が続く。


「えー?忘れたんですかー?結樹と同級の橋本ですよ」



「うーん、そうだったっけ?」


と言い、理恵はいたずらっぽく笑った。



「そういうところ変わらないですよねー理恵さん」


「それは誉め言葉と受け取っていいのかな?アツシハシモトくん」



そう言い、理恵は肩に掛けていたバッグを下ろそうとする。
すかさず、敦史は席を奥につめて、自分のソファの方へ理恵を促そうとした。
だが、何の迷いもなく理恵は結樹のソファへ座ると、それにつられて、強制されたかのように結樹が席を奥につめることになった。

とりあえず、目の前で不満そうな顔をしている敦史のことは置いておいて、結樹は理恵へと話しかける。


「それで、どうでした?理恵さん」



そう言われると、理恵は一つ溜め息をついて、


「うん…やっぱり駄目だったよ」



と、答えた。


「そうですか…なんか僕達にできることがあればいいですけれど」



そう結樹が言うと、


「ん?何の話?」



と敦史が遮る。


「あれ、結樹くん、言ってなかったの?」



そう理恵が言うと、


「えっと、一応、先日理恵さんに聞かされた話しは敦史に言いましたけど」



と、結樹は答えた。


「じゃあ話が早いわね。橋本くん、美紀ね、結樹くんに言われたとおり、これだけ大きな病院で調べても全く症状の原因が分からないのよ」



敦史は頷く。


「だからね、とりあえず、加入していた入院保険の申請をするために、病院に診断書をもらおうとしてるんだけどさ、担当医も検査入院としか書いてくれないのよ。そりゃ、原因が分からないから、病名が書けないって言うのも分かるんだけどね…」



「検査入院だと、保険金は下りないんですか?」


そう敦史が言うと、



「うん、今美紀が加入してる保険だと駄目みたい。まあ、とにかく、保険だけじゃなくて、美紀の体のためにも、早く病名が分かればいいんだけど…」


「そうですか…」



そう言い、敦史は飲食メニューを理恵へと渡す。


「ありがと。橋本くんにも心配かけてごめんね」


「いや、そんなの気にしないで下さいよ。俺たちとしても、昔のよしみながら、何もしてやれてないんですから。それより、美紀さんの具合はどうですか?」



そう敦史が聞くと、


「うん、まあ相変わらず空元気は出してるけどね…」


結樹と敦史は同時に頷く。


「私には辛そうな表情も見せないし、どこが痛いとかも全く言わないのよ。だから、いつもそっと担当医の先生に聞いてるの。一応、先生に聞かれたことだけには答えてるみたいだからね」



「そうですか…」


と結樹は言う。



「まあ、だから今日は美紀を少しでも元気付けてやろうと思って二人に来てもらったのよ」


そう理恵は言った。

それから10分ぐらいだろうか、三人で軽い会話が続いた。
高校の頃、美紀を合わせた四人で花火大会に行った時のこと、結樹と敦史が何度も美紀の高校へと遊びに行っていた時の話、高校を卒業し、結樹が東京に行ってからの環境の変化について。
短時間では話しきれないことなのに、それがお互いの空白の時間を埋めさせてくれるかのような気がして、足早な会話が続いた。

まあ、理恵が結婚した話をすると、暫くの間、敦史はうなだれていたが。
理恵のことを好いていた敦史としては、半ばショックだったんだろう。

理恵は少し旦那へと電話をかけてくるということで、この店を出て行く。

とりあえず、美紀は今、検査が終わったばかりらしいので、30分後に美紀の病室で再度待ち合わせすることにした。

結樹は理恵の話を聞いているうちに美紀の病状が確信になり、だからといって何もしてやれることが浮かばない自分に少しだけ腹が立った。

きっと、敦史も同じ気持ちになっているのだろう。

理恵が出ていってからは、二人の間に少しだけ沈黙の時間が流れていた。

暫くたつと、結樹はふと先程途中になっていた咲月の話を思い出す。
こんな時にとは思ったが、一度気になり出すと、聞かずにはいられなくなっていた。


結樹は敦史から再度話を聞き出そうとし、とりあえず、



「敦史、コーヒーお代わりするか?」


と、話しかけてみる。
しかし、それに対して、



「いや、もういいわ。というか、そろそろこの店出るか?」


と言ってきた。

あまり話したくないことなのか、記憶が曖昧で話すこともないのか分からなかったが、そのまま二人で会計を済まし、この店から出ることになった。

すると、敦史からとっさの一言、



「さっき病院の見取り図を見たんだけどさ、屋上に喫煙所のマークあったよな?行くか?」


敦史は喫煙家ではない。



「ああ、そうだな」


と、結樹は少しだけ笑顔になって答える。



まさに旧友ならではの心遣いであった。

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みるめの車中アメブロ小説








時のしずく






*******************************************************






『あの…』




『何?』



『あ、あのさ…咲月(さつき)ちゃんは…行かないのかなあって思って…』




『どこに?』



『あの…運動場だけど…』




『行かない』




『………。』





『でもさ、ほら、クラスのみんなが学級会で決めたことだし…。しかも今日は僕達5年生と1年生が一緒にドッジボールをするこ…』




『そう…』



『そう…って…みんなで決めたんだから、一緒にやろうよ』



『…だから何?私が放課後の行事に参加しないのは今に始まったことじゃないでしょ?そして、私は年下の面倒を見るつもりもないの』




『そ、そっか…そうなんだ…』




『………。』




『あのさ、さっきから何か用?結樹くん』




『え…?あ、いや…ただ、僕はクラス委員として、咲月ちゃんに放課後の行事に参加してほしいと思っただけでさ…』




『そっか、ご苦労様。でもね、私はクラスメイトやクラス委員の君から何を言われようとも、必要のないことに時間を割くつもりはないの』




『…え?…あ…ごめん…。    それと…あの…[時間を割く]ってどういう意味だったっけ…?』



『はぁ……。なんか結樹くんと話してると疲れる。結局この時も無駄な時間を割いてるってことになるわけだよね…』




『………。』




『……あ…あのさ!』



『何?』



『あの…森脇先生…  担任の森脇先生が言ったとしても…?』




『………。』




『何が…言いたいの?』




『ごめん、ごめんね…。こんなこと聞いて悪いとは思ってるよ…。でも…なんか心配で…。それで、あのさ…咲月ちゃん、今日の学級テスト…その…何点だった…?』




『……それを聞いてどうするの?』




『…どうもしないよ!……ただ、まあ…たまたま見えちゃって…咲月ちゃんの答案用紙…』



『………。』



『そっか……』




『………。』



『でも、咲月ちゃん、今もすごく頭いいって知ってるよ!昔、僕にいろいろ勉強を教えてくれたこともあったしさ…そりゃ、同学年なのに少し落ち着いてるなあって思ってはいたけど、今よりも少しは明るく笑っていて、ほんとは僕は5年生になって、また咲月ちゃんと同じクラスになれて嬉しかったんだ…。ただ…そんな咲月ちゃんが…あの…0点とか…信じられなくて…』




『そっか…』




『…あ…なんか…ごめん…』



『別にいいよ』



『……うん…』



『見る?』




『え?』




『私の答案用紙…』



『え…でも…』



『はい、これ…。結樹くんが言った通り、0点だよ』




『………。』




『…え?…でも…』



『………。』




『言っておくけど、この程度の問題、間違ってるところなんて、どこもないんだからね』




『…え…でもさ、こんなことって…。…何も採点されてないじゃん…』




『そうよ』



『しかも…なんで、咲月ちゃんの名前に×が付けてあるの…?』



『………。』




『それは… 結樹くんの考え方、まだ子供だし…きっと言っても分かってもらえないと思うよ』




『…え?咲月ちゃんは、どうしてか知ってるんだ…!?』




『………。』



『知ってるよ…そんなの』




『な…なんで!?』



『………。』



『……ぷっ…。』




『何…?』




『あはは…結樹くんてさ、もしかして、私のこと好きなの?』



『……な!…何言ってんだよ!』



『分かりやすいなー』




『あ、あのさ!今はそんな話してないよね!』




『あはは…まあ、いいよ』




『………。』





『…あのね、私はお人形さんなの』




『……!?』




『…に…人形…?』




『そう、私は森脇先生のお人形さんなんだ』



『………。』




『…あ、あの…ど…どういう意味か分からないんだけど…』




『うーん…結樹くんにも分かるように説明するとね、先生は私のことが好きで、私は先生のことが好きってことよ』




『…え!?な…何言ってるの!?だって、先生はもう大人だし…それに、結婚もしてるんだよ…!』




『そうよ』




『そ…そうよって…』



『………。』




『いつからなの…?』




『うーん、この前、体育祭があったでしょ?その後からかな…』


『…せ…先生に…告白されたんだ…?』




『私から』




『…え!?』



『私からキスしたの。先生のこと好きだったから…』




『…そ…そんな…咲月ちゃん…』




『おかしい?』




『…いや…おかしいとかそういうんじゃなくて…その…』




『………。』




『テストの名前に×を付けたのは、きっと先生のおしおきよ』




『…お…おしおき…?』




『そうよ。先月末ぐらいだったかな…先生のお家に遊びに行ったの。その時、先生の奥さんが可愛がってた猫、私が外へ逃がしちゃったのよ』




『……うん…』




『先生の奥さんは私に同情するようにしてくれていたけど、先生には私がわざと猫を逃がしたこと、分かったんでしょうね』




『……だから…おしおき?』



『そうよ』




『…そんな……なんか、いきなりそんなこと聞いても信じられないというか…』




『まあ、普通はそうでしょうね』



『………。』




『……咲月ちゃん、森脇先生みたいな人が好きなんだ…?』



『そうね…好きよ。少し優柔不断なところもあるけど…そういうところも含めて好きかな』



『そ…そっか…』




『…もしかして…今も森脇先生のこと待ってたりするの…?』




『………。』



『うーん…今日は違うわ』




『…そうなんだ…誰か他に待ってる人がいるの?』




『………。』



『ツーフェイス…』




『……え?』




『あしたからの住人…』



『…あ…あした…から?』




『…そう。だから、ごめんね。結樹くん、今はこの音楽室にはいてほしくないの』



『……そっか…なんか、いろんなこと聞かされて、わけが分からなくなってきたよ…』




『それはしょうがないわね。元々、誰かに理解してほしいなんて思っていることじゃないし。というか、結樹くんの方から聞いてきたのよ』




『…あ…うん。そうだけど…咲月ちゃん…何で僕にこんな話してくれたの…?』



『さあ…なんでだろ…  少しだけ結樹くんと森脇先生が似てるって思ったからかな?』



『僕と先生が…?』




『少し感じただけよ』



『………。』




『そろそろ、運動場に戻った方がいいんじゃない?』


『…え…あ!……うん…』




『………。』




『……あ…あのさ!最後にもう一つだけ…聞いていいかな?』




『何?』




『その……』




『…あしたからって……何…?』




『………。』








『それは……』









(………。)




洞窟の天井から水滴が一滴落ちる。


すると、その泉からは何も聞こえてこなくなっていた。

この洞窟の中に入ったのが30分ぐらい前。
中はひんやりとしていて、湿度計を置いたら、60%以上の値を示すに違いない。

暗闇の中に外からの奇妙な明かりだけが洞窟内を照らしていた。

入り口が極端に広かったので、少し期待して入ってみたが、奥行きもさながら、広さもぎりぎり手足を伸ばして休憩できる程度。
壁もすべて岩壁でできているが、岩を溶接したかのような作りになっており、崩れ落ちそうな気配は全くしなかった。

洞窟の前には、[氏曰く、時のしずく]と書かれた白い看板。
その先も螺旋状の道が険しく続いているようで、吹き上げる風は未だに衰えを知らないようだったが、この洞窟の中に入った瞬間、外界の音を遮断するように、不思議と風の音は聞こえなくなっていた。




(しかし、今の会話は何だったのか…)



洞窟の奥に不自然にできていた泉。
大きさも直径1mあるかないか。
手を入れてみると、深さもかろうじて手首までつかる程度で、泉と言うよりは、水たまりと言った方が見合いそうだ。



(水たまりじゃないか…なんて言うと、またあの白看板にツッコミを入れられるだろうな)




あの後、白い看板は、ここにたどり着くまでに、3回ほど絶妙なタイミングで出現していた。
時には背後に。
時には突然体を寄りかけていた岩壁から…。


さながら、障害物競走のようにしてここまでたどり着いたのだが。




(しかし、あのタイミングでこられると、既に熟練されたお笑い芸人だな)



結樹は今はもう何も聞こえてこないその泉を見つめる。
非常に透き通っており、うっすらと青がかったその水は、体の水分補給にも使用できそうだった。



(疲れは出るけど、空腹感や体の水分が抜ける感覚はないんだよな…)




結樹はその場へゆっくりと腰を下ろすと、堅い岩壁へともたれかかる。

そして、体のこりを取るように、少しだけ伸びをすると、手足を伸ばして休憩することにした。
音が遮断されているので、眠りにつくのには良い環境だと思ったが、今の状態が、睡眠中だということを思い出して、少し苦笑いをする。



(それにしても、さっきの会話、確かに咲月という子は「結樹」と呼んでいたな)




一番不思議なのは、結樹の記憶の中に今の会話に当てはまる情景、はたまた、咲月という子の名前さえ全く思い当たるふしがないこと。


小学生にしては、内容的にかなり過激ともいえる会話になっていたのだったが、結樹が一番気にかかったのは、咲月という子が最後に言った言葉。




(あしたから……か…)



結樹は頭をかきむしると、とりあえず、考えることは後にして、体の力を抜き、休息へと入ることにした。

自分の吐息だけしか聞こえないこの洞窟で、だんだんと眠りの中の眠りについていく…。





【そしてこちらは現実世界】


[ 只今の時刻 AM 11:32 ]



布団にくるまった結樹を見付けた妹、和葉(かずは)。


思い切り距離をとり、結樹めがけてボディプレスを仕掛けようと助走中。



皆様おひさしぶりです。

そして、いつの間にか年が明けてますねー

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。


小説は結構書き終えてますが、今日のところは少し自分の友達について語ろうかな。。。と。




確定していることから言いますと、友達少ないです(笑)



一番多かったのが、高校1年の頃かなー・・

あの頃は、授業が終わって、サッカー部の部室まで歩く間に、毎回5人は声かけれる友達が通りすがるような状態でしたね。『知り合い多すぎ』と突っ込まれることもあったぐらいです。

だから、友達作るのが下手とかそういうんじゃないんだと思います。



実は、その中でも入学当初から一番仲のいい友達がいたんですが、高校二年の時に少しずつ彼と距離ができていくようになったんです。


その時、気付いたんでしょうね。

浅く広く=誰にでもいい顔をする


誰にでもいい顔をっていうのは、少々オーバーな表現で、自分に危害を与える人以外は、みんなにいい気分になってもらいたいっていう意識です。


多くの人に慕われるのは気分悪くなかったんですが、それよりも彼が廊下ですれ違った時に声をかけられなかったのが一番苦しかったですね。


そして、何より、一番大切なものや人を手に入れるには、何かを捨ててでも手に入れる覚悟も必要なんだと感じました。


それからは、彼とできるだけ話すようにしたり、何か報告する時にはまっさきに彼に報告したり、自分の時間をできるだけ彼と共有するようにしました。
それによって、多数の友達は離れて行きましたけど、全く気にならなかったですね。


でも、彼は人の行動とか心情とかにすごく敏感で、今でも一緒にいると何か見透かされてるような気分にもなります(笑)


そうです。
今でも彼と一緒にいますね。


高校三年からはクラスも一緒になったこともあって、ずっと2人(2、3人付いてくることもありましたが)でいろんな行動をしていました。
ゲーセンとかゲーセンとか、あとゲーセンが主でしたね(笑)

元々、彼は血液型がO型なので、協調性は少し持ち合わせており、いろんな人に好かれるようにはなっていったんですが、それでも、未だにどこかへ行きたい時、何かを知らせたい時、一番に自分へ報告してくれます。

もちろん、自分も同じくですけど。

高校卒業からは自分が山梨の大学、彼は東京の専門学校に行ったのですが、それでも、よくバイクで山梨まで遊びに来てくれたし、自分も東京の地理が少し詳しくなるほど、遊びに行きました。

まあ、自分としては、よくこんな田舎に遊びにくるなー・・・って、心の中でずっと思っていましたが。


元々、彼は恋愛とかについては語らないのですが、お互いに4年間の学生生活を終えてた時ぐらいに、少しずつそんな話をしてくれるようになりました。

例えば、ふられた彼女と再会する時に、気持ちが落ち着かないからちょっと喫茶店に付き合ってくれとか、彼としては本当に珍しい恋愛相談なんかにものりましたね。

彼は、その後、ニューヨーク、ロサンゼルスに留学したんですが、『遊びに来ない?』と言われて、1日仕事休むことになりましたけど、初めての海外旅行にも行きました。

もちろん、自分の住んでいるところを自慢するでもなく、その時は気付かなかったのですが、僕のテンポに合わせていろいろ街を紹介してくれてましたね。

そして、今はお互いに仕事が忙しいですが、彼の仕事の関係の祝賀パティーに参戦しないか?とか、仕事関係のゴルフコンペにいきなり参戦してみないか?とか、とりあえず、自分を最初に誘ってくれているようです。

時には本気で怒ってくれるし、自分の悪い所を的確に伝えてくれるのも嬉しいですね。

そして、一番教えられたことは、一番大切なものを手に入れるにはどうしたらいいかってこと。
それによって、不幸せになるなんでことはないってことです。

今は友達少ないですが、全く不満に思ったこともないし、周りを羨んだりすることもないです。
一生彼とはいい友達でいますね。



そして、自分には今、友達ではなく恋人として大切な人がいます。

少し距離がありますが、出会ってまだ間もないですけど、いろんなところに遊びに行ったり、彼女のいろんなことを知って、彼女との時間をすごく大切にしています。

ちなみに、ピグの中のエジプトで出会いました(笑)

ほんとですよー

今では彼女のPCで自分のピグを動かしてるなんてこともあります(笑)

万が一、いろんなものを失ったとしても、彼女と一緒になる覚悟がありますし、彼女を傷つけたり、バカにする人は親でも許しませんしね。


皆さんも、今いる友達、恋人を大切にしていきましょう。