迷宮。 | Part time Female Yuki(Yukiのひとりごと)

Part time Female Yuki(Yukiのひとりごと)

これまで女性に憧れて、女性になりたいと願っていました。それは性別違和からくるものなのか?漠然とした疑念と女性化への思いを抱えながら、気づけば40代。結婚もし、子供も出来た今、それでも抑えられなかったこの思い…

2014年から脱毛を始め、年末には女性ホルモンを飲み始めました。そうやって中途半端ながらもトランスしていき、2016年の夏からはメイクして外に出かけるようになりました。RLE(Real Life Experience)と呼べるかどうかは分かりませんが、少ないながらも経験を積み重ねてきました。


時々昔の記事を読み返してみることがあります。ブログを書き始めた頃、私は記事の中で「私の性自認はほぼ男性」と書いていました。今振り返ってみると、やっぱりそれは違うように思います。

 

幼い頃はいとこのお姉ちゃんたちと遊び、小学校の頃になると、

 

男子女子

 

に分けられるとモヤモヤしていました。女子のグループがキャーキャーと楽しそうにしているのも羨ましかったですし、可愛い服を見ると「いいなぁ」と思っていました。中学校では、女生徒たちのセーラー服が羨ましかった。

 

でも、そういう気持ちは、

 

「秘めるべきもの」

「知られてはいけないもの」

 

として、覆い隠してきました。大人になるまでは、赤とかピンクの服は極力着ないようにしていたし、とにかく「可愛いもの」から目を背けて生きてきました。二次性徴後の身体の変化による諦めもあったと思います。

 

テレビで見たニューハーフの方達は皆、男性が恋愛対象だと思っていたし、そういう人が「女性」になるんだと思っていました。私は恋愛対象が女性なので、それならば男性なんだろうという認識でした。

 

「それじゃぁ自分は何なんだろう」

 

当時はGIDはおろか、SOGIの概念なんてありませんでしたし、知る術もありませんでした。同性愛という概念もよく知らなかったように思います。海外では性転換手術というものがあるらしい、とは聞いていましたが、インターネットも無い時代に、未成年の私がアクセスできる情報源はテレビくらい。今で言うトランスジェンダーは、

 

「女装」「オカマ」

 

そんなネガティブな言葉で笑われ、卑下される存在でした。残念ながら、令和の時代になった今でもそれは社会に根付いています。

 

それ故に私はトランスへの想いを抑えつけて、男性として生き、そう振舞ってきました。それは言わば「仮面」を被った自分。

 

性自認って?

 

女性だったの?女性になりたかったの?

 

そんなことを考えていると、どんどん「自分」が分からなくなってきます。

 

「性自認」という名の迷宮。


トランスに踏み切るということは、その「仮面」を外して、素の自分を表に出していく作業でもありました。けれども、そこに居るのは女性としての自分…とは言えず、何者かも分からない、存在すら疑ってしまうようなもの。

 

私には女性としての知識も経験も無いから。

 

漠然とした不安を感じつつ、身体は変化していきました。そして2016年7月。「彼女」には「ゆき」という名前が与えられ、その名前と共に外出するようになりました。そしてその経験が、変化を加速させていきました。

 

けれど、そこでふと立ち止まって考えてしまうのです。

 

自分はただ、女性を演じているだけなんじゃないのか。

 

吉野有紀という名の下に、「もう一つの仮面」を作り上げているだけなのではないのか。

 

そんな風に考えてしまうと、ますます自分が分からなくなってきます。

 

「我思う。されど我は在らず」

 

迷宮から抜け出せる日は来るのでしょうか。