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実戦を検討する囲碁ブログ

囲碁の序盤を主に研究しています。 東洋囲碁で8段で打っています。

置き碁の序盤研究をしてみる。
題材とするのは、ネット上で見つけたトッププロとアマの三子局である。


黒:S・Sさん 白:N・H九段

【 第1譜 】
左上でよく知られた定石が打たれ、白が15、17と足早に展開した局面。




【 第2譜 】

黒18の守りは本手で、妥当だと思う。
守らないで、逆に白Aと切られると煩わしいことになる。




【 参考図1 】


例えば黒が1と受けるとして、白2の切りがうっとうしい所。
以下白34までの分かれは趙治勲vs林海峰の碁で生じた形である。

この分かれは、私が外勢を重視する棋風ということもあるが、白良しだと思う。
特に置き碁ともなれば隅の18目の黒地などいかほどのものでもなく、外回りにびっしり石を持っていった白に軍配が上がると考える。

また白2や白18では、白29からのシチョウを狙い目に白Aから仕掛けてくる可能性もあり、いずれにしても置き碁の黒としては歓迎できない展開だといえる。



【 参考図2 】


それと第2譜の黒20のコスミは理のある手だったと思う。
例えば黒が本図のように打つと、黒は先手で治まることができるものの、白に12、14と展開される。
これらの白石は今後全局に影響を及ぼしてくることが予想されるため、黒としては好ましくない意味がある。



【 参考図3 】

また、白は2の地点にノビ込むとは限らず、例えば白1と変化することも考えられる。
他にも白に選択肢があり、数ある選択肢の中から最も良さそうな変化を選ばれることを考えると、紛れの生じる余地があるといえる。

その意味でも、実戦のコスミは簡明だった。


【置き碁】 黒の定石選択とその後の打ち方 その2  につづく)
「王メイエン九段の新手? その1」 の続き。



黒は1とハネ出す狙いがある。
黒9のサガリがポイントで、続いて白Aから符号順に黒Dまで、コウになる。

この狙いがあるので、
「黒も打てる」 と王九段は判断したのだろう。


ただ、気になる点が一つある。




先に黒1のツケを一つ決めてから黒3とする方が良い気がするのだ。
この黒1と白2の交換によって、白は4とツケ難くなった。





というのも今度は黒1とハネ出した後、黒7まで無条件の生きとなるからだ。

コウと無条件生きとでは大違いなので、白は前図の白4とは打てないはず。




黒△に対して、白1、3の出切りは打ち難い。
黒8までと地に辛い形で治まられては、白は不満だろう。




白1、3とするのも良い打ち方ではなく、黒10まで楽にサバかれる。




黒△を悪手にするために、白は1と抱えるかもしれない。
それには黒2というのはどうか。
白Aの受けなら黒は全体が軽くて、白から攻めが利きにくい。
黒打てる形のように思う。




白は1と攻めてくるかもしれないが、10まで黒も戦えるのではないだろうか。


(おわり)

「王メイエン九段の新手? その1」に戻る
王メイエン九段 vs 小林光一名誉三冠の碁を並べていたら、初めて見た手があり気になったので研究してみた。


黒:王メイエン九段   白:小林
光一名誉三冠
2014年 3月 20日 第4回フマキラー囲碁マスターズカップ 1回戦


黒が左下を手抜きし、右下をシマった局面。
白は2と追求したが、ここで黒3としたのが初めて見る手。



普通は黒1のコスミで、これが今まで常識とされてきたと思う。

この後、白は2、4といったところだろうか。
黒は5、7とすれば治まり形だが、こじんまりとしていて足が遅い。
反対に白は4や6など展開力があり、しかも先手なのでスピード感がある。

黒はこれを嫌ったのかもしれない。



黒のケイマに白1の受けは自然だが、黒は2と迫るかもしれない。
右下の大ゲイマ締まりがバックアップとしてあるので、戦えるのではないか、という考えである。

また黒2が頑張り過ぎているということであれば、黒Aに控えるのもありうる。

他にも、左下の黒二子は軽くみて、他の大場に回るというのもあるかもしれない。



黒がケイマしたこの形では、白1、3という打ち方はないはず。
黒4とした構えが立派だからだ。




実戦、小林
名誉三冠は白1とツケて渡った。
このツケで白は全ての石がつながるわけで、手厚い一手である。

碁盤全体の配石を見ても、この局面ではこの手が一番良さそうに思える。


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