月曜日のチッコリーニのリサイタルについて,遅ればせながら感想を。
2010年の来日のときにも思ったが,とても年齢を感じさせないピアノである。何より音が美しく,どの声部もくっきりと聞こえ,和音が濁ることがない。このように書いてしまうとなんでもないことのように思われるかもしれないが,これだけでも大したものである。それを,86歳の老人がやすやすとこなしてしまうことに驚きを感じる。
奏でられる音楽は堂々たるものである。クレメンティは,穏やかなこれといって特徴のない作曲家と認識していたが,おっとどっこい,大変堂々たるソナタを書いていたのだ。ベートーベンは31番のソナタ。途中おやっと思った箇所があり,最後も和音が濁りがちのまま,妙に中途半端に終わってしまった。
後半はリスト。すばらしい演奏。自信に満ちたキラキラした音でしかも造形的にも確かなリストの世界が構築される。これはもうお見事としか言いようがない。アンコールは,リスト,エルガー,グラナドス。エルガーの「愛のあいさつ」で聞かせた慈愛,グラナドスで聞かせたスペインの風土,いずれも一瞬にしてその世界を築きあげる。脱帽である。