数時間…遊んだだけの俺にされた最低な事など忘れてしまいたいから、何の反応もしないの?


嫌すぎて記憶から消した可能性もあるよね


どんな風に昨日の事を思われていようと悪いのは俺だから仕方ないんだ


顔も見たくもないかも知れないのに、にのを心配しているからとは言え…俺の目の前にいてくれるカズ


それは、何故なのかって事をしっかりと考えなきゃ……








「ニノちゃんは本当の持ち主に気遣われたりした経験…一度もなかったと言ってた。でも…自分は優秀なSAKURAIのアンドロイドなんだから仕方ない事だと思っていたらしいの」
「ちゃんと…人間の様な感情だってあるのに、にのの本当の持ち主は、酷い奴すぎるよ」

昨日の食後に俺は購入者じゃないって事を知ったからカズは、にのに以前の生活の様子を聞いたんだ。

「そんな風に考える…まぁくんの全ての言動をニノちゃんは、どう感じるか。まぁくんは分からない?」
「…え?」
「そうやって…まぁくんはアンドロイドにも人間みたいな感情があるって、ちゃんと、考えられる上に幼い子と同じ様に接してた。ちょっと、自分から離れるだけで…変な奴に気を付けろと言う。怪我をしない様に滑り台の階段は…ゆっくり上がってと注意する。気を遣われたりした経験のない優秀なアンドロイドが人間の幼い子と同じ様に接されたら…どんな事を考えると思う?」
「……え…?………それは……」
「ニノちゃんに必要のないチャイルドシートがないと騒いでた話をオレにした理由、分かる?」
「…………ぇっと…それは………アンドロイドの事を全く、知らない俺が面白くて?」
「馬鹿なの?」

聞かれた事に対して…何も言えない俺は最後の質問だけ、理由を分かったと思ったのにカズは呆れた顔をするから沈んでいく心。
あの時、楽しそうに燥いでたから…何も知らない俺がにのは面白くってカズに喋ったんじゃなかったの?

「ニノちゃんは非常時モードも搭載された優秀なアンドロイドなのに、まぁくんに守ろうとされた事が嬉しいからだよ!」
「……………え?」
「風間ぽんから聞いたけど…まぁくんは嵐幼稚園の先生なんだってね。ニノちゃんの事も勤務先の子達と同じ様に接してたんじゃないの?予測できる全ての危険から遠ざけて…小さなニノちゃんを守るのは当然だと思ってるんじゃない?」
「………………それって…いけない事?」

優秀なアンドロイドだからって幼い子と違う様に接するなんて無理だよ。

「いけなくないけど…そんな風に守られたら嬉しくなる気持ちは分かるよね?アンドロイドには人間みたいな感情もあるんだから、気を遣ってもらった経験もないニノちゃんに嬉しい事が続くと、その先には好きって思いが生まれるんだよ」
「そりゃ…少しは……そんな気持ちにもなるだろうけど…」

いけなくないなら…どうしてカズはそんなに俺を責める感じの言い方するんだろう。
俺の接し方が…にのにとっては嬉しい事だったのなら自分的に満足だけど。

「少しはって何?そんな風に思ってるの??持ち主以外を好きになる事はタブーだと理解してる賢いアンドロイドをまぁくんは大好きにさせたんだよ。少しな訳ないでしょ?購入者じゃないんだからまぁくんの側に、ずっとはいられないって分かってるのに誰よりも大好きなのとニノちゃんは言ってたんだよ!!」
「…え?」
「ニノちゃんにとって、まぁくんの接し方が優しすぎるから、そんな思いを生ませたんだよ。まぁくんの所為でニノちゃんは誰よりも大好きになっちゃったんだからね!それなのに…少しはって何なの?賢いアンドロイドがタブーを破る程に好きにさせといて酷いんだよ!こんな最悪な時に…ニノちゃんから目を離すなんてっ!!」
「……ごめん…」

じわりと涙が溜まった茶色い瞳で見上げるカズの心の中には、にのの俺への思いが溢れているんだと痛いくらいに感じる。
どんな事をしたって、俺はにのを捜し出さないと。
こわい思いをさせてごめんと…俺がにのを抱き締めてあげないと。
何としても。