大都市圏の一部では急速な悪化もみられる不動産市況。住宅価格の値下がりエリアも目立つようになってきました。地価はこれからどのように変わっていくのでしょうか。


■ 今年の路線価、基準地価はどうなる?


これから買う人にとっては値下がりも期待したいところだが・・・。
バブル崩壊から長く続いた地価下落傾向にようやく終止符が打たれ (地方圏を除く) 、公示地価、基準地価、路線価の平均が上昇に転じたのはつい最近のこと。3大都市圏の住宅地平均でみると、公示地価が2007年、基準地価が2006年のことですから、まだ上昇が始まったばかり (だった) ともいえますね。

3月に発表された今年 (2008年) の公示地価では、 「全国平均で2年連続の上昇」 となっていましたが、それでは、これから発表される路線価 (8月) 、基準地価 (9月) ではいったいどのような傾向を示すのでしょうか。

まず、路線価は既に発表された公示地価と同じ1月1日時点の価格で、その算定にも公示地価が大きく影響しますから、今年は (鈍化がみられるものの) 上昇傾向のままになることでしょう。

今回の地価変調はアメリカのサブプライムローン問題が契機だったとはいえ、数年前から続いた大都市部における地価急騰の反動として、 (仮にサブプライムローン問題がなくても) 遅かれ早かれ起きたことのようにも感じられます。

日本の地価が 「下落局面へ転換した」 とみるよりは、あくまでも調整局面とみるほうがよいように感じられます。それが少し長期化する可能性も否定できませんが・・・。


■ 地価の個別化、差別化が明確になる


それよりも、これからは近接エリアでありながら条件のよい土地の価格は上がり、条件の悪い土地の価格は下がるという、地価の 「個別化」 あるいは 「差別化」 が明確に進むだろうと考えられます。

実はこれ、数年前の大都市圏における地価の下げ止まりや上昇への転換局面のときにも書いたことなのですが、その後はちょっと拍子抜けするほど急ピッチで 「全地点が上昇」 などという結果になっていたものです。

「今度こそ」 などというつもりはありませんが、今回の 「調整局面」 を過ぎた後、またすぐに不動産投資が過熱することは考えにくい状況。日本への不動産投資を外資などが再開するときも、これまで以上に慎重かつ冷静に対象物件を選別してくるでしょうし、中堅マンションデベロッパーなどが (値上がりすることを前提として) 少し条件の劣る土地を高値で仕入れることも少なくなるでしょう。

深刻なのは地方圏かもしれませんね。下落幅が緩やかになってきたとはいえ、いまだに地価が下げ止まっていない地域が多いなかで、再び上から重しを乗せられた状態です。これからの人口問題や地域経済問題なども含めて有効な対策を打ち出せないところは、延々と下がり続けることにもなりかねません。


■ 歴史は繰り返す?


戦後から高度成長期を経てバブル崩壊まで、日本の地価は一貫して右肩上がりだったと認識している人が多いだろうと思います。

ところが公示地価の変遷をみると、昭和50年 (1975年) には東京圏のマイナス11.5%を筆頭に、3大都市圏、地方圏とも地価が下がり、全国平均では8.9%のマイナス (いずれも住宅地の数値) となっているのです。

昭和50年の公示地価ですから、その前年 (昭和49年) の動向を反映したものですが、ちょうどその頃は第一次オイルショック (昭和48年??49年:1973年??74年) により、消費者物価が高騰。地価もその前の2年間ほど急上昇が続いたようです。

原油価格の高騰と、消費者物価や地価の急な値上がり、そしてそれに続く地価の調整あるいは下落局面。何だか現在の状況と重なり合う部分が多いのではないでしょうか。

ちなみに公示地価でみるかぎり、翌昭和51年には再び地価が上昇に転じています。