住まいを探す。どこに住むか、どんな生活シーンを楽しみたいか……。未来の暮らしに夢をふくらませ、住まいをイメージすると自然とその景色が思い浮 かぶもの。理想の景色が手に入れば満足度はさらにアップ。ちょっと条件に不満でも、景色がよければ気にならないことも。住まい探しは、景色探しといえるか もしれない。
“富士山ビュー”の探し方
マンション購入をアレコレ検討していると、とつぜん妻が決断した。
「やっぱり富士山が見えなきゃイヤよね。絶対に！」
銭湯の壁絵の話ではない。部屋からの眺望のことのようだ。でも、別にタワーマンションの高層階を目指しているわけでもなく、それ以前にそんな予算はないわけで……。「高さ」を買わずに、はたして“富士山ビュー”は手に入るものなのだろうか……。
まずは立地でせめてみよう。“富士山ビュー”は、古来、日本人が追い求めた理想の心象風景だ。妻の決断もあながち突発的なものではないのかもしれない。関東平野の端に位置する東京、かつての江戸には、富士山ビュースポットがいくつかあったようだ。
都内十数カ所にある「富士見坂」もそのひとつ。23区内にはアップダウンのはげしい場所がいくつかあり、その高台からのぞむ富士は町の財産ともいえるもの
だったろう。けれどもその多くは、建築物などにより、今では富士山をのぞめない。もっとも、それ以前に坂道には住めない。
地名に「富士見」とあるのも、富士山ビュースポットだった可能性は高い。Yahoo!地図情報で「東京都 富士見
」と検索する。番地などの違いを含めるとその数104件。埼玉県、神奈川県、千葉県にもある。
とはいうものの、選択肢が多すぎるのも問題だ。すべてに行って、見て、確かめるわけにはいかないし。ところが“富士山ビュー”は、やはり国民的関心事なの
か。ビンゴなウェブサイトを発見した。その名もズバリ「関東の富士見百景」だ。国土交通省が一般公募で集めた富士山ビュースポットのデータベースだ。しか
も「百景」といっておきながら、128景と情報量も豊富。写真入りの眺望解説や地図付き詳細情報など、“富士山ビュー”にかける意気込みを感じる熱い内容
だ。
関東の富士見百景（外部サイト）
新宿の夜景の探し方
“富士山ビュー”獲得に糸口を見出し、鼻息の荒くなった私に妻が言った。
「都内から富士山が見られるのは年間90日程度なんですって。だったら毎日見られる夜景の方がいいかなあ。私の希望は新宿の高層ビルの夜景ね」
ね、と言われてもね。さて、夜景が見える場所の探し方はどうすればいいのだろう？ 「見える」ということは「見られる」のと同じこと。つまり新宿の高層ビルから見下ろせる範囲で探せばいいのではないか。
そうと決まれば行く場所はひとつ。東京都庁展望室（外部サイト）
だ。なんてったって無料だ。地上202mからの眺望は、東京を一望できる。開室は9時30分～23時（※）。街の位置確認がしやすいよう、昼間に出かけてみることにした。
空気が澄んだ晴天のため、はるかに遠くまで見渡せる好条件。またもや選択肢が多すぎる。都庁西側にどこまでも広がる住宅街を途方に暮れて眺めていると、遠くに白いものが見えた。
富士山だった。
冬の季節、空気が澄んでいると見えることが多いらしい。富士山が「都庁舎31階からの映像」という都庁のウェブサイトからリアルタイムの映像で見ることができる。
昼間は富士山をのぞみ、夜は新宿の夜景が眼下に広がる。一石二鳥だが、もちろん都庁の展望室には住めない。しばらくはここから見渡せる西側の街を歩いてみ
よう。もしかしたら、“富士山ビュー”も手に入る物件に出合うかもしれない。そう考えると、妻の要望に振り回される住まい探しが、ちょっと楽しくなる気が
した。
※南北2棟で開室時間、休室日が異なるので要確認（お問い合わせ 展望室専用案内電話：03-5320-7890）。
都庁舎31階からの映像（外部サイト）
天候やメンテナンスの都合で画像が表示されないこともあります。
