結城 (やゝ驚いて)あ、そこにをられたんですか。
大坪老人 をりましたとも……お話は余さず伺つたやうです。よいことを聴かせて下さいました。伜も、志岐君に負けんやうに、男らしく、なにかやらかすでせう。
結城 もつとも、わたくしが直接かういふことをお耳に入れてよかつたか、どうか、ついどうもうつかりしましたが……お二人のお立場、お察しいたします。こゝにはお寺さんもお見えのやうだが、人生はやはり有為転変と云ひますかな。
飯田 (時計をみながら)しかし、忙しいことだけは変りがありませんな。わたし、これから、もう一つ、町長代理で人を迎へに出にやなりませんので、甚だなんですが、お先へ……。(退場)
結城 では、わたしも失礼しよう。汽車の時間まで、それぢや。……
角崎 はあ、御案内いたしませう。別に見るもんもありませんが……。
結城 お城の址といふのだけ、ちよつと見せてくれたまへ。ぢや、みなさん……。お母さんもどうかお体をお大事に……。
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結城少佐、仏壇の前に額づき、静かに起ち上つて、退場。
