西都原の御陵墓前の桜は、コロナや雨のせいで出店もなく人もいない。
西都原のこんな風景は初めてのこと。
いつもは子供たちの笑い声や焼肉のにおいやシートでお弁当を広げる家族連れで溢れていたのに。
今年92歳になる母が、雨にけぶる御陵墓前の桜を眺めながら
「この場所で伊藤藩の6ケ町村で大運動会が開催されてたんだよ。」とか
「高鍋の学校に通っていた友達が機銃掃射をうけて亡くなったんだよ。」とか
「小学校の遠足でお弁当を食べようとしたら大きな地震がきて怖かった。」とか
毎年家族でお花見に来るのに、そんな話は初めて聞いた。
いつもと違う西都原の桜の下で、記憶は80年以上前にもどったよう。
時の流れが雨の中、静かに超えてただよっていく。

