「ね?ほら、いつも一緒に来てたアイツ、今遠いところ。冗談抜きで、ほら、へっ。遠いとこ。
俺らもいつか行くとこ。これよ、これ。」
そう言って自身の首に手を回しながら
「自殺。」と言った。
「弱いんすよ。だから俺、アイツが死んでもなんとも思わない。あー、死んじまったのかー、って。辛いって、人生なんてそんなもんでしょ?!
辛いのが人生なんすよ。」
「あー、いや〜、もう、あれだよね〜、オレがいけないんすよ。この仕事に引っ張ってきたから。オレのせいなんすよ、ひっ、ちょっ、ちょっとタバコに」
ろれつの回らない、相当呑んでるであろう様子で店に入ってきた彼は半ば一方的にそう話をすると何度もタバコをふかしに外に出た。
この店に来るときは決まって2人で来ていた彼は今は1人だ。
その日は週末にも関わらず雨降りの天気もあり、店は割と静かだった。
だから余計、目の前にいるお客の彼の心に寄り添おうとする気持ちでいっぱいになった。
「俺なんかもあれっすよ。1人で、なんとなーく生きてるんすよ。何があったって笑ってりゃいいんすよ。あり?!オレ、〇〇まで帰りたいんすけど」
焦点の定まらない彼をタクシーに乗せ、見送った。
一夜明けて、酔いがさめたら彼はまた、仕事に行くんだろうな。彼は彼の1日をそうやって過ごして行くんだろうな。
大丈夫大丈夫。
よっしゃ。しまっていこう。