昔
手足の長い綺麗な女の子が居てね
彼女は男性をいい気分にさせるのがとても上手だった
昔
目が零れ落ちそうなくらい
愛嬌のある顔をした女の子が居てね
そのこと居ると男性達は癒されて
我儘も何もかも許してしまうようだった
昔
クールな顔立ちの美人が居てね
彼女の前だと男性は全て僕に成り下がってしまうようだった
その中でメイクもあか抜けなくて
中途半端にプライドの高いスタイルもたいして良くない
煌びやかさもない女の子が居てね
そしてそのメンバーからは
「本当に不器用な子」
と笑われた
その不器用な子は
綺麗な友人達の器用な立ち振る舞いに憧れ羨ましいと思い
必死にマネをしてみるけれど
どうも性に合わなくて
しまいには居心地が悪くて逃げてしまう
彼女は
自分の欲しい物を手に入れる為に
誰かに媚びる事も出来なければ
自分の事を好きになって貰う為に
相手に好意があるように演じる事が出来なければ
どんな高級レストランに連れて来られても
早くその場を立ち去りたくて時計の針をじっと見つめていた
ある日
高級ブランド店で
年下の男の子はこう言った
「男の人はもっと女の子にプレゼントをするべきなんだよ」
そう言ってショーケースの中の財布を買ってくれようとした
でもそんな財布欲しくもなかったし
欲しくもない財布にときめいたふりも出来ないその女の子は
「いらない」
と一言言い捨てて店を出た
ある年の誕生日
出張に旅立とうとした年上の彼に
知人が開催する宝石展会場に連れて行かれた
まだ開場前だった
「20分以内に決めて。飛行機間に合わないから」
そう彼は言った。
静まりかえったその場に
ショーケースの中にずらりと並ぶキラキラ輝くダイヤモンド達が
私の方向を一斉に見上げ
子馬鹿にしたような笑みで
「あんたみたいな小娘にはまだ早いのよ」
そう
言ってるようだった。
その子は欲しくも無いダイヤのリングを指さして
数分後には綺麗な小さな四角い箱を握りしめていた。
部屋の中でリングの箱を壁に投げた
悲しくなって涙が出た
こんなの全然幸せじゃない
そのリングは彼と次会う時まで
壁とクッションの隙間に落ちたままだった
そしてその夜
友人が作ってくれたけしてお世辞にも美味しいとは言えないけれど暖かい手料理と