今年のバレンタインデーが終わって数日経ち、親友の侑斗はバイトに入る前に受付の椋井さんにあのチョコは、どこの店で買ったのかと、聞いている。

僕はまだ食べてないのに、侑斗すぐ全部食べて凄く気に入ったらしく本気なところ、自分でも買いに行きたいと思ったと言っていた。

椋井さんは、もうすぐ辞めるからと挨拶も兼ねて、ここのアミューズメントプラザで働くほぼ全員にバレンタインチョコを配って、僕にもちゃんとくれた。

量販店で普通に売ってるチョコの義理チョコでも、貰えた時最高に嬉しかった。

今は部屋に飾ってて、いつ食べるかは、まだわからない。



 ここでのバレンタインデーを振り返れば、ボウリング場のピンの裏で働いているため滅多に会うこともないはずのおじいちゃん技師にも椋井さんは律儀に義理チョコを渡していた。

僕は夕方からのシフト入りでバレンタインのイベントも終日あって、忙しい日だった。

そしたら夕方から、ゲーセン受付の萌絵さんの連れてきた長女で保育園児の女の子と一緒に三人で投げていた椋井さんのところに裏から出て来て、彼は投球のコツを伝授し、自己最高スコアを出した椋井さんは喜んでいた。

おじいちゃん技師もチョコのお返しをしたかったんだろうけど、なんだか一緒に楽しそうに見てあげてるところを後ろから見てて、というかチラチラ見すぎて僕は仕事が適当になっていた。

こんな日に限って、機械の調子はいいらしくて暇だったのも羨ましいことだった。


 でも、そんなことはもうどうでもいい。

バレンタインデーというのは、基本女性から男性への愛の告白に使われる日となってて、義理チョコをもらってこちらから告白するのはどうかと思ったけど僕は、またやらかした。

 

 椋井さんは休憩に入って、皆に配り出し、シフトに入る前のスタッフルームにいる僕のところにも渡しに来てくれた。

その時の椋井さんの顔を見てたら可愛いすぎて、僕は満面の笑みになってしまい…

つい口に出てしまった。


「僕と付き合って下さい…好きです椋井さん」

ボウリング場の場内は営業中ずっと結構な音量で音楽が流れている。

スタッフルームの隣接した事務所には、そこそこ近くに人はいたけど、声は聞こえてないと思う。

椋井さんは僕の告白の言葉に少し目を見開き、じっと僕の目を見て、やはり答えに困っていたけれど、何も返事出来ないという様子であちらに行ってしまった。

頭の中にすぐ後悔の大波が押し寄せたのに、何故だか気持ちは爽快で。

ずっと言いたいことをとりあえず口に出来て、すっきりしたというか。

 

 兎に角、ついに僕の気持ちは伝えることが出来た。

夕方で帰るかと思ったら、萌絵さんとボウリングを約束してた椋井さんは、派手な色だけど暖かそうな服に着替えてきて更に可愛いかった。



 侑斗が受付で椋井さんにもらったチョコが美味しいとか言ってる無邪気さが羨ましい。

この間もビジュアル重視の男性アイドルグループのメンバーの写真集を買った侑斗は、表紙を見せつけていた椋井さんに、貸してとか言われ、からかわれているのが面白い。

主任と一緒に謎の賭けをしてみたり、ここで彼女が溶け込んでいる様子をもっと見ていられると思っていた。

何か焦りもあったけれど、告白してしまった出来事は素直な気持ちを表しただけのこと。

はっきり断られたら、ちゃんとあきらめるのは決めていたけれど、彼女は本気にしなかったんだと思う。半分くらい…


 僕達の学年は秋の修学旅行が悪天候や色々あって延期になり、春休み前に行くことになっている。もう、その用意を考える。

期末テストの後すぐに行くし、慌ただしくなるから、気持ちを切り替えないと。

高校生最後の年、三年生になる前に気持ち僕の周りが今まで体験したことない騒めきで落ち着かない。