「お大事になさいませ」
とある地方にある薬局でいつもの薬をもらって帰る患者。
その薬を出しているのが新人薬剤師の市こと私だ。
薬局薬剤師をやって半年も経つと仕事にも慣れてきて、ある一つの疑問が思い浮かぶ。
自分のやっていることは処方箋通りに調剤をして投薬するロボット作業ではないか と。
急性期の医療以外は基本的にはDO処方。
基本的に変わることのない薬を用意して出す。
なんとも小学生でもできそうなことじゃないか。
こんなロボット作業をするために6年間も大学で勉強して来たのか。
「お疲れさまでした」
そんな疑問を抱きながら、今日は定時上がり。早く帰っても一人・・・
そんなときの足はだいたい馴染みの雀荘に向かう。
あるビルの7階、薬局には存在しないエレベーターに乗って到着するとカランカランと鈴が鳴る。
「市さん、いらっしゃい!」
来局に気がついたAが出迎える。
「いま南入しているので少々お待ちください・・・なんか浮かない顔してますね」
さすが鋭い。Aとは学生時代からの付き合いだ。同年代で仲もいい。
見抜かれてしまったので少し相談に乗ってもらうか。
「なるほど・・・。市さん、この状況でこの牌姿、どうします?」
そういって紙に書いて私に提示してきた。
東3局 12巡目 ドラ7p
111456m246p5678sツモ3p
上家の親からのリーチがあり、現物は5、6m
現在29000点持ち トップ目
私の選択はオリで5、6m打ちだ。
「この牌姿、市さんのこの前の状況なんですよ。」
役やドラもなければ赤もない、まさにゴミ手。苦労してテンパイしたのだからここはリスクを背負ってリーチと叫びたい気持ちは誰にでもあるところであろう。それで勝ったら御の字だし。
しかし私はこのリスクを回避した。親の待ちがカンチャン、ペンチャンだとしてもノベタンでは枚数的にさほ優位ではないし、収益期待値が悪い。
「では7巡目で同じ牌姿、リーチが入っていなければどうします?」
先制リーチが打てる状況か。ならばリーチだ。
「そうですよね。でも薬剤師に必要なのはそういう選択ですよね」
なるほど。牌姿が処方箋、場況が患者か。同じ処方内容でも場況に合わせて良し悪しを判断しなければならない。日々の業務に追われてて初心を忘れていたのかもな・・・
「僕らは卓上でも、現実でも打ち手ですよ・・・あ、ラストありがとうございまーす!」
そういってAはゲーム終了した卓に行った。
「市さーん!お待たせしました~!」
さて、卓上ではどんな処方箋と患者が来るか楽しみだな。
