『人生で本当にたいせつなこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』

を執筆中には、取材を通して忘れがたい素敵な出逢いに数多く恵まれました。

 

その中のお一人、宝生流シテ方 無形文化財でいらっしゃる能楽師・金井雄資氏

との出逢いも至極幸せなものでした。

 

 

もともと、金井氏と第7話に登場してくださった千賀氏は学生時代からの

40年来のお付き合い。

学習院大学の入学式でたまたま隣同士に座ったのがご縁の始まりだそうで

同じ演劇部で過ごした学生時代、一番時間を共にした仲とのこと。

 

千賀さんががんを発症して、自分という存在が消滅してしまうことへの

恐怖を抱き、立ちすくんでしまったとき、金井さんは、食事をしながら

お店の爪楊枝を並べて、千賀さんにこんなことをおっしゃったそうです。

 

「有限なものをつなげることで無限になる。有限だからこそ、無縁につなげて

ゆくことができるのでないか?」と。

 

それは、金井さんが父上から能楽という技芸を継ぎ、息子さんを能楽師に

すべく心から心に、身体から身体に技芸を伝えているその様子をずっと

見てきた千賀さんには、まっすぐ、深く、届く言葉でした。

 

「能舞台の上では『命』が、父上の、彼の、息子の中で脈々と生き続け、

私はその『命』の姿を見てきていたのです。そして、自分の子供達の顔を

見ているとそこに不思議なほど亡くなった父母の面影を感じるようになりました。

自分という存在が消えても、確実に受け継がれていくものがある、

そう思うようになったのです」

 

そう、千賀さんが私に話してくださいました。

 

 

また、このお話の件で金井氏に直接お目にかかったとき、能楽という伝統芸術は

この国の生きとし生けるもの、あらゆる命の生命讃歌であることも教えていただ

きました。

詳細はここではとても伝えらきれないのですが、ひとつ、こんなお話をご紹介

させてください。

 

「能の主人公のほとんどはいわゆる幽霊というものなのですが、

中には、動物や昆虫が主役のものもあるのです。世界広しといえども、動物や昆虫が

主役の演劇というものはありません。ディズニーの世界はちょっと別ですがね。

日本人の感性というのは実に豊かなんです。

例えば、蝶が主役の演目があるのですが、その蝶のセリフがなかなか粋でね。

『私は、どんなに願っても梅の花に出逢うことができない・・・』と言うんです・・・」

 

本当はもっと格調高いお言葉でお話をいただいたのですが、

私の頭の中では、こんな平易な言葉に変換されて記憶に残っています。

 

このようなお話を伺ってから、私はお能の世界に強い関心を持つようになりました。

あの世とこの世をつなぐ橋掛り。お能が生まれた頃はもっともっと死の世界は

身近なものだったのではないかと思います。

 

 

金井雄資様のHP「金井雄資の部屋」でも

『人生でほんとうに大切なこと』をご紹介いただいております。

ありがとうございます。

http://shiun-kai.flips.jp/

http://shiun-kai.flips.jp/?page=menu2

 

 

 

【ご案内  出版記念講演会 in 東京 】

清水先生と直接お話をしていただける貴重な機会でもあります。
ぜひ、お越しくださいませ。

<日時>

12月10日(日)15時〜16時30分

 

<場所>

駒込教会 (定員100名)

住所:東京都豊島区駒込2丁目3−8

(JR駒込駅 北口or地下鉄南北線駒込駅4番出口より徒歩3分)

 

<参加費>

2500円(サイン本付) or 1000円 (本を既にお持ちの方)

 

<出演>

清水 研 (国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科 科長)

千賀 泰幸 (第7話登場 おやじ代表・2015年に肺がん罹患)

稲垣 麻由美 (著者・文筆家)

 

<参加申込>

https://ssl.form-mailer.jp/fms/86359f3e540829

TEL 050-3577-9428 (一凛堂・池田) 

Mail e-kamijo@ichirindou.com

 

お待ちしております。