夏の終わり、長野にある諏訪神社春宮にお参りにいったときのことです。
(私はなぜか、本宮より春宮に惹かれます)
その日は雨が降っており、夕刻の境内には、他に誰もいませんでした。
周りの樹々の緑の深さやその場の厳かな雰囲気に圧倒されていたとき、
突然、太鼓の音がし、驚きました。
神様にお食事(神饌)をお供えする儀式が始ったのです。
目の前で、神官の方が祈り、お供えを。儀式が粛々と進んでいきました。
その時間、30分以上はあったと思います。

普段、私はビジネス書やPR、イメージコンサルティングの世界に
身を置いているので、人よりいかに前に出ていただくか、
いかに見せるか、をお手伝いするのが仕事になっています。
ですので、こういった儀式が、誰に見せるわけでもなく
(いえ、神様に向かってではあるのですが)、
ただただ粛々と毎朝、毎夕、連綿と行われていることになんだか
改めて深く感動したのです。
「尊さ」とは、こういうところに宿るのものなのでしょうか。

そして、もう一つ。諏訪大社全体の色彩感覚のバランスに、
改めて日本の美意識を強く感じたのでした。
この写真の神官がお召しになっている装束(格衣)の色は、
日本の色名でいうと「木賊色(とくさいろ)」です。
シダ植物の木賊の茎のような、少し黒味をおびた深い緑色のことを言います。
そしてこの御簾の色は、黄色みがかった赤茶色、というのでしょうか。
日本の色名でいうと「樺色」か「赤朽葉」になると思います。
「赤茶色」という言葉では伝えきれないものに、日本人はちゃんと名前を冠しているのです。
それはなんと豊かなことなのでしょう。
山が祭神である諏訪大社に、どんな配色をするか。
この絶妙な色合わせに学ぶことがあまりに大きいと感じました。

ちなみに、下記の本は私が時間があれば開く大切な1冊です。
「日本の色辞典」吉岡幸雄著 紫紅社

京都にて200年以上続く染色工房「染司よしおか」5代目当主である
吉岡幸雄氏が綴った色の歴史書でもあり、日本の伝統色を再現した
色標本でもあります。
染色をされる方なら誰しもご存知の1冊かと思います。

「紅絹色」「韓紅」「二藍」「柳色」「鶸色」「千歳緑」「波自色」
「阿仙茶」「利休鼠」「刈安色」「海松色」「朱華」・・・・

なんて美しく豊かな言葉。表現。
残念ながら、私自身は染めの手法や原材料などには詳しくないのですが、
子供の頃から着物を着る機会が多かったので、いつも和の色の世界に
興味がありました。
自分が着ている着物の色が、子どもながらにも、クレヨンや色鉛筆の中に
ある色の名前では伝えられないことに、もどかしさを感じていました。

・・・そんな諏訪神社から戻ってから、なんと3日後に、
蒲田にある老舗呉服店「丸や」
http://www.kimono-maruya.com/の谷加奈子さんからご連絡をいただき、
「着物と稲垣さんのイメージコンサルのカラー診断と合わせて
なにか話ができませんか」とセミナーのご依頼いただきました。

それから、あれこれ考えて させていただくことになったのが下記の講座、
『自信が持てる和の装い ービジネスにも繋がる日本の色選びー』です。
http://ichirindou.com/?p=1204
https://www.facebook.com/events/700008410068335/
10月19日開催 東京蒲田で開催です。
折角なので、オリンピックへ向けて何か発信できることはないか、
も考えたいと思っています。

ちなみに、下記の写真は、谷さんがお召しになっているお着物の一例です。
谷加奈子さんがFacebookに日々アップされている中から拝借しました。


なんとも粋ですよね。
着物、帯、帯締めの色合わせ、素材合わせで、趣が大きく変わるのも着物の
楽しみ。
このお着物について、いえ、ご自分のお召しになるお着物について、素材は
もちろんのこと、色についても深く話せると嬉しくなりませんか。

色のみならず、日本の美意識については、これから益々、注目されていくに違いないと思っています。
よろしければ、ぜひ、ご参加ください。
https://www.facebook.com/events/700008410068335/