$一凛堂・稲垣麻由美のブログ今年、一番の愛読書といえば、この『暮らしの手帖日記』(松浦弥太郎著 暮しの手帖社)でした。

仕事柄、売れ筋の本にはなるべく目を通します。
もちろん、全部読むことも、買うことも不可能なので、できるだけ書店に足を運んでは、気になるものは購入し、叶わないものは目次だけでもチェックします。

世に求められ、受けいられているものは何か、それを知らずして企画のお手伝いなどできないからです。

でも、売れ筋の本をどれほど読んでも、残念ながら心満たされることは、ビジネス書の場合、ほとんどありません。

もちろん、気がつくこと、学ぶべき事ばかりでなのですが、読むほどにノドが乾く、と言いますか
「もっと、頑張らねば、
 もっと、効率をあげなければ、
 もっと、上を目指さなくては」
との気持ちになります。
刺激材はどんどん強いものを欲するようになるばかり。

そんな日々の中で出逢った、この1冊。

この付箋の数が全てを語っているかもしれません。
いつもなら、重要なところは、赤線やら蛍光ペンを引いて、自分のものにしようとするのが私ですが、この本に綴られた言葉の数々が美しく、
心の持ちようを糺されることばかりで、畏敬の念から、
私はこの本に線をひくこともできずにいます。


たとえば、

「旅する理由は大好きな人に会いに行くというのがいつもの理由だ。
大好きな人に会いに行くのは、僕にとって一番しあわせな旅の仕方である。
観光もなし、用事もなし、ただ、会いたい人に会いにいくだけという旅は
至福の他ない。
忙しさや、あれがしたい、これがしたいはなく、
何もかもが、ささやかで良いと思う気持ち。
良いものとは、必ずささやかである。
僕は旅をし、人とお茶をともにし、ささやかを愛し、心の安らぎを取り戻す」


「近藤文夫さんがおっしゃるように、料理とはおいしいだけではなく、
そこに感動もなくてはいけないというお言葉に深くうなずきます。
感動というのは、新しさであり、驚きであり、心に届く思いやりであり、
私たちの暮らしを豊かにしてくれるものです」

「生かしあいたい人を、毎日思っていて、心の水面に
静かに浮かんできた言葉が生かし合う、です。
人は誰かと人間的な深いつながりを持てたときこそ、しあわせを味わうのです。
それは友達や家族、恋人や同僚と、深いきずなを感じたときに得る宝物です」


他にも、ご紹介したい1節は次々と出て参りますが
ここでは、控えます。
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表より裏。
前よりも後ろ。

見えないところほど大事にし、
「今日も、ていねいに」が、この本に限らず
松浦氏の世界の軸となっています。


私は、この松浦氏の視点に惹かれてやみません。
こんな視点をもって、私も歩みたい、
いつか、こんな文章を綴りたいと、
読み返すほどに思い、
大切なところに立ちかえらせてくれる1冊です。

良いお年をお迎えください。