いつか、この駅に降りてみたい。
そんな風に、気になっている『駅』ってありませんか?
私にはありました。
東海道線『根府川駅』。
熱海に向かう電車に乗っては、いつも人影がまったくない根府川駅が気になって仕方がありませんでした。しかも、きっとこのホームからは海が最高のロケーションで見えるはず。
降り立ったら、どんな匂いがするんだろう。
降り立ったら、何が見えるんだろう。
降り立ったら、駅の周りを歩いてみよう・・・
ある日の夕方、東京からの帰宅途中、電車に揺られながら、ふと思いました。
「行ってみよう、根府川」
いつもなら、東京駅から東海道線に乗り、戸塚で横須賀線に乗り換えて家に帰るのですが、
大船を過ぎても乗り換えず、そのまま揺られ続けました。
東海道線も、茅ヶ崎、平塚を過ぎるころから少しずつ空気感が変わっていきます。
大磯を通過するころには、完全に時計の針の進み具合が変わっていきます。
不思議ですが、本当です。
ふと、行ってみよう、
そんな風に思い、実行してしまうときは、大抵、ものすごく嫌なことがあったときか、
何かを成し遂げて、よしっ! と自分にOKを出したときです。
今回は、前者でした。
でも、行った先が根府川ですから、かわいいものです。
東京駅から根府川駅までは東海道線で94分。
ちなみに、根府川は真鶴の1つ東京寄りです。
真鶴は知っていても・・・ですよね。
降り立った根府川駅は、初冬だというのに草の匂いがしました。
オレンジ色に染まる海と、ピンクからやわらかな青に変わりゆく空が
ホームから広く広く見え、
そして、潮の香りに包まれました。
駅では数人の人が降りたったものの、ホームでぼっ~としていたら、
すぐに一人ぼっちになりました。
改札は無人。
ちょっと駅を出て歩いていましたが、静かな住宅地が広がっていて
コンビニをみつけることもできませんでした。
のぼり、くだり、のホームをつなぐ陸橋からの眺めが見事でした。
この写真はそこから撮ったものです。
何本か、電車を見送りました。
たくさんの人がその電車に乗っていることが、こんな静かな駅にいると
とても不思議な気がしました。
刻一刻と変化する宙を眺めていたら、
1時間近くも、その「根府川駅」に
一人でいました。
変な人ですよね。
でも、すごくいい時間でした。
自分をからっぽにする。
そんな時間が、だれにも、ときどき必要です。