はじめに 

衝撃のデビュー作!戦場のリアリティと女性たちの絆を描く傑作

逢坂冬馬さんのデビュー作にして、2022年本屋大賞を受賞した話題作『同志少女よ、敵を撃て』を読了しました。

第二次世界大戦下の独ソ戦を舞台に、復讐を誓った一人の少女が、女性だけの狙撃小隊に入隊し、過酷な戦場を生き抜く物語です。単なる戦争小説という枠を超え、人間の内面、そして戦争という極限状態が生み出す「真の敵」とは何かを深く問いかける、圧倒的な読書体験でした


あらすじ 

物語の主人公は、ソ連の農村で暮らす16歳の少女、セラフィマ

猟師だった母から受け継いだ射撃の才能を持ち、穏やかな日常を送っていましたが、突如村を襲ったドイツ軍によって、母と村人全員を惨殺されてしまいます。

母を撃ったドイツ人狙撃兵と、母の遺体を焼き払った赤軍の女性兵士イリーナに復讐を誓ったセラフィマは、「戦いか、死か」という選択を迫られ、イリーナと共に女性狙撃兵の養成学校へ入隊します。

そこで出会ったのは、同じく家族や日常を戦争に奪われた少女たち。彼女たちは厳しい訓練を経て、独ソ戦の激戦地・スターリングラードの前線へと送られ、死と隣り合わせの壮絶な日々を送ることになります。


おすすめのポイント


単なる戦争小説ではない、深すぎるテーマ

この作品が多くの読者の心を掴んだ理由は、その精密な戦場描写と、そこから浮かび上がる深いテーマにあります。


1. 苛烈な戦場と狙撃のリアリティ

独ソ戦の凄惨な描写は、目を背けたくなるほどリアルです。特に、狙撃兵としての訓練や、敵との緊張感あふれる攻防戦の描写は圧巻。天候、風向き、心理戦、一瞬の判断が生死を分ける極限状態が、臨場感たっぷりに描かれています。


2. “同志少女”たちのシスターフッド(女性の連帯)

復讐心だけを胸に戦場に飛び込んだセラフィマが、心優しい年長のヤーナや、ライバルであり親友となるシャルロッタといった仲間たちと出会い、絆を深めていく過程に胸を打たれます。戦場という異常な環境の中で、互いを支え合い、人間性を守ろうとする彼女たちの関係性は、この物語の大きな魅力の一つです。


3. セラフィマが見る『真の敵』

当初、セラフィマの敵は「母を殺したドイツ人狙撃兵」でした。しかし、戦場で様々な理不尽や人間の暗部、そしてソ連内部の矛盾に直面する中で、「誰を撃つべきか」「何のために戦うのか」という問いは複雑化していきます。

物語を通して描かれるのは、**「戦争というシステムそのものが、いかに人間を怪物に変えてしまうか」**という真実です。読み進めるうちに、読者自身もセラフィマと一緒に「真の敵」の正体を探る旅に出ることになります。この問いへの結末は、ぜひご自身の目で確かめてほしいと思います。

💡 こんな人におすすめ!

 

単なる娯楽小説ではない、骨太なテーマの作品を読みたい人

戦争のリアリティ、特に女性兵士の視点に興味がある人

息もつかせぬ展開で、一気に読破できる長編を探している人

シスターフッドや登場人物の成長物語が好きな人


まとめ 

『同志少女よ、敵を撃て』は、重厚な戦争文学でありながら、青春小説、そしてミステリー的な要素も兼ね備えた、類まれな傑作です。

読む前は分厚いページにたじろぐかもしれませんが、ページをめくる手が止まらないほどの没入感があります。戦争の理不尽さを知り、それでも生きようとする少女たちの強い意志に、きっと心を揺さぶられるはずです。

ぜひ、手に取って、あなた自身の「真の敵」を見つけてみてください。