王子は大阪城と呼ばれる城で優しい母上、姉上に囲まれとてもしあわせに暮らしておりました。
ところがある日王子は 私はこのように何不自由ない每日を過ごしているが 町に住む民の暮らしというものはどのようなものか知りたい、と言い出し母上、姉上が止めるのも聞かず 城をでると言い出しました。
母上、姉上はたいそう心配し、何度も引き止めましたが 王子の決心が固く またいずれは王となってこの国を治めるためには下々の暮らしを知ることも必要かもしれないと思い直し 泣く泣く王子を旅にだすことにしました。
王子の旅の支度が整い ついにその日がやって来ました。
「母上、姉上お元気で」王子はさっそうと大阪城をあとにしました。
日が暮れる頃 王子は今日の宿を求めて一軒の家の前で「すみませんが、私は旅の者でございます。今晩 こちらで泊めていただきたいのですが」と身分を隠して頼みました。
「旅のお方でございますか、それはお困りなことでしょう。さあどうぞお入りください」と中から母と娘がでてきました。
二人は小太りでしたが 娘はなかなか可愛い顔をしており、王子は物珍しさもあって平民の娘のことがすぐに気に入りました。
中に入って王子は初めて見る庶民の暮らしに驚きを隠せませんでした。これは召使の部屋?なんと小さな部屋なのだろう。これが民の家なのか。こんなところで民は暮らしているのだろうか。
夕飯に呼ばれて行ってみると小さなテーブルにお椀が1つだけ置かれていました。量もわずかで王子はすぐに食べ終え次の皿が出てくるのを待ちましたが それだけで夕飯は終わってしまいました。
王子は城をでたことを少し後悔しました。お腹がすいたままベッドで寝るのか。ベッド、ベッドベッドはどれだ?これだろうか。こんなに小さくて・・痛い!!・・民のベッドはこんなに固いのか。
それにしてもあの母娘はあのような食事でなぜ小太りになるのだろう。不思議に思いながら王子は眠りにつきました。
次の朝 風の音で目を覚ますと外は嵐になっていました。困ったなあ、これでは今日は出かけることができない。王子は小さな家の中で風の音を聞きながら大阪城での暮らしを思い出し 少し涙を流しました。
次の日もその次の日も嵐はおさまらず、その次の日は嵐のために傷んだ家を修理するのを手伝い、次の日は畑仕事を一緒にし、次の日は娘に宿題を教え、そしてその次の日には町まで買い物に行くのに付き添い、と每日 庶民の暮らしぶりが王子にとっては目新しく新鮮であっという間に一年、二年と過ぎてしまいました。
王子、いえ元王子は今ではすっかり庶民の暮らしになじんで、娘と結婚して貧しいながらもしあわせに暮らしいます。元王子もあの食事が口に合ったのか小太りになってしまい、もう昔からこの村に住んでいたかのようです。
しあわせ(だったはず)の王子は「みにくいアヒルの子」ではなく「美しかった白鳥の子」と呼ばれるようになりました。
コロちゃん、庶民の暮らしはどうですか。
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