ICHI★KEN 台本小説 【恋物語】
鯉の養殖場
暗転前より数ヶ月経過
鯉の養殖場に温泉を引く設備が完成
平次
「出来たぁ…!!
旦那やっと出来ましたね…!
弥五郎
「出来たなぁ…
これで弥吉も安心して冬が越せるな
平次、ありがとな
平次
「何言ってんですか旦那
礼なんて言いっこ無しですよ
毎日おかみさんの美味いメシが食える
こっちこそ旦那には
礼を言わなきゃならねぇ
俺を拾ってくれて感謝してますよ
弥五郎
「 俺だって礼が言いてぇ
お前がいなきゃ間に合わなかった
無理矢理連れた来たのに
俺についてきてくれてありがとうな
平次
「気持ち悪いからやめてくださいよ
それにしても腹減りましたねぇ…
弥五郎
「だな(笑)
お吉はまだ来ねぇのか?
早くメシ持って来いよ(笑)
平次
「ですね(笑)
腹減ったなぁ…
弥五郎
「全くだ(笑)
※お吉&青山、養殖場に到着
お吉
「お前さん、平次、お待たせ
仕事はどう?
弥五郎
「おせぇぞお吉
腹が減って死にそうだ
仕事はキッチリ済んだぞ
お吉
「それは良かった
ゴメンなさい遅れちゃって
お前さん、今日は青山様も一緒なの
青山
「弥五郎殿!お久しぶりです!
今日も頑張っておいでですな!
弥五郎
「青山様、久しぶりでございます
あれから会ってなかったんで
何してるか気になってた所です
青山
「すまんな弥五郎殿
こちらとて色んな大変なのだ
それにそこにいるのは
あの時のヤクザ者だな?
しっかりと弥五郎殿を助けているか?
平次
「あの時は御無礼を致しました
青山
「よいよい
見違えたものだ
カタギの姿が板についておる
しっかりと弥五郎殿を助けるのだぞ
平次
「へい
お吉
「まぁまぁ、お話はご飯を食べながらでも
弥五郎
「 おう、メシにするぞ
平次
「そうですね
メシだメシだ!
※全員で支度をしてご飯を食べる
弥五郎
「それにしても青山様
久しぶりですね
元気にしてましたか?
青山
「元気は元気だ
だが今は大変な事になっておってな…
弥五郎
「どう言うことです?
青山
「弥五郎殿はまだ知らなかったか…
実は寒冷で
食物が不足しておってな…
この陸前だけではない
羽前や磐城の民も食料を求め
沢山の民が広瀬川に集まっておるのだ
私達も御救小屋を
広瀬橋の近くに建て対策をしておるが
とても間に合わん…
このままでは飢えで何人が命を落とすかも
分からぬ…
弥五郎
「そんな事が…
俺が鯉の事で夢中になってる間に…
食いてぇ者が食えてねぇ
どうにかしなけりゃならねぇ…
青山
「弥五郎殿は心配する事は無い
弥五郎殿のすべき事は鯉を育てる事
そういった事は我々に任せておきなさい
弥五郎
「しかし…
お吉
「お前さんごめんなさい
お前さんにも
伝えなきゃならなかったんだけど
仕事の邪魔になると思って黙ってました
弥五郎
「お前があやまる事じゃねぇ
平次
「そうですよ、おかみさん
俺達がメシを食えてる間
そんなに苦しんでる人がいたなんて
お吉
「ありがとう平次
そうだ!
平次に手紙が届いてたの
妹さんからだよ
平次
「ホントですかい?
※平次、手紙を読んで顔が曇る
お吉
「どうしたんだい?
平次
「妹と兄貴が広瀬川に来てるかもしれねぇ…
弥五郎
「どういう事だ?
平次
「オイラの故郷も食い物が無くなって
兄貴が村の周りの奴らを連れて
兄貴と一緒に広瀬川に向かうって…
弥五郎
「何だと…
ならすぐにでも会いに行け
平次
「いや…おれのせいで店が潰れたのに
今更会いになんて行けませんよ…
弥五郎
「平次
俺は会いたいのか、会いたくないか
それだけ聞いてんだ
どうなんだ?
平次
「そりゃあ会いてぇけど…
いまさらどんな顔して会えばいいか…
お吉
「平次!
私達も一緒に行くから会いに行こ?
弥五郎
「平次、お前は妹や兄貴が大事じゃねえのか?
平次
「旦那…おかみさん…
弥五郎
「青山様
せっかく来てもらって悪いが
これから広瀬橋まで
コイツを連れていきます
青山
「そうだな
今からワシが案内するゆえ
着いてくるがよい
弥五郎
「平次、聞いたな
ついて来い
平次
「でも旦那…
弥五郎
「いいからついて来い
今からでも遅くねぇ…
会って兄貴や妹に詫びを入れろ
平次…
俺のあとからついてこいよ
青山
「平次
聞いたな?
私の後から
※チョン
着いてこい
第4幕へ
弥五郎の家
弥五郎
「お吉、平次
そろそろ行くぞ
お吉
「分かりました、平次行くよ!
平次
「分かりましたよ…
あぁ…眠てぇなぁ…
弥五郎
「平次、見違えたぞ
似合ってるな
平次
「頭がスースーしますけどね
弥五郎
「さっぱりしたじゃねぇか
それじゃあ早速仕事場に案内するから
ついて来い
お吉、ちゃんと弁当作ったか?
お吉
「分かってますよ
ちゃんとお前さんの好きな物
沢山作りましたからね
平次、お弁当持っていってね
平次
「いや…食いすぎでしょ…
弥五郎
「何言ってんだ
大変な仕事になる
腹が減っては戦は出来ねぇぞ
平次
「戦させるつもりかよ…
おかみさんから聞いたけど
鯉を育ててんだよな?
そんなに大変なのかい?
弥五郎
「詳しい話はアイツらの所に行ってからだ
行くぞ
幕が閉まる
※弥五郎の家から鯉の養殖場まで
綺麗な川や美しい森を通ります
舞台が出来るまで
道中で景色を写しながら芝居をします
平次
「まだ着かないのか…
弥五郎
「今まで旅してたクセに何言ってんだ
まだまだあるぜ
お吉、ついてこれるか?
お吉
「もう慣れました
平次
「何でこんな遠くに…
川なら近くにもあるじゃねぇか
弥五郎
「平次…俺が育ててる鯉は
大名や旗本の方々も買ってくれてる
ありがたい事に高値で取引されるんだ
人目につく所で育ててりゃ
盗まれる事だってある
だから人目につかない所で育てなきゃ
ならねぇんだ
平次
「そんなもんなんですかね?
お吉
「まぁいいじゃない
見て綺麗でしょ?
疲れも吹き飛ぶわ
平次
「綺麗なのは分かるけど
それで疲れが取れるもんなんですかい?
弥五郎
「ウダウダうるせぇな…
ほら、もう着くぜ
※鯉の養殖場に到着
平次
「うわぁ…すげぇ…
弥五郎
「そうだろう?
水も綺麗、景色もいい
自慢の場所だ
平次
「あー!疲れた!
で?何をすればいいんで?
弥五郎
「この池に温泉を引くんだ
平次
「はぁ?温泉?
弥五郎
「実は珍しい鯉が産まれたんだ
見てみるか?
平次
「珍しい?
弥五郎
「まぁ見てみろ
お吉、呼んでやれ
お吉
「はい、さぁおいで
※お吉が池に向かって手を叩く
三色の錦鯉の稚魚が泳いで来る
平次
「えぇ!
何だコレ!!
白と赤と黒の鯉!?
弥五郎
「珍しいだろ?
でもな、コイツは他の鯉と比べて
元気が無いんだ
だから今年の冬が越せるか心配でな
この池の上で温泉を見つけたから
そいつをここに引いて
水を温かくしてやろうと思ったんだ
けど俺だけじゃ間に合わねぇから
お前に手伝って欲しいと思ったんだ
平次
「へぇ~…
すげぇな…こんな鯉初めて見た…
でも、その温泉ってどこにあるんで?
弥五郎
「あそこだ
平次
「!!!!!
嘘だろ!!!
あんな所からここまでかよ!!
弥五郎
「だからお前をつれて来たんだ
平次
「メチャクチャだな…
弥五郎
「 無理矢理連れてきて何だがな
お前の力がいる
手伝ってくれ
平次
「分かったよ
その代わり!美味いメシ食わせてくれよ?
弥五郎
「メシは食わせる、な?お吉
お吉
「お前さんの好きな物作ってるだけですよ
弥五郎
「じゃあ俺は下見してくる
平次メシ食ってねぇだろ?
ちゃんとメシ食って来い
体がもたねぇからな
行ってくる
弥五郎上手入り
平次
「ホントに鯉が好きなんだな…
お吉
「そうなの(笑)
あの人はいつも鯉の事ばっかりなのよ
平次、ご飯食べる?
平次
「頂きます!
昨日も思ったけどおかみさんの飯は
美味いなぁ、こんないい女房もって
旦那は幸せだな
お吉
「本当にそうなのかな…?
平次
「え?
お吉
「実はね…
私達は夫婦になって10年経つの…
でもね、まだ子供が出来ないんだ…
だからあの人と私は子供の代わりに
鯉を育てる…
だからなんだと思うんだ
あの人が必死にあの子を育ててるの
平次
「あの子?
お吉
「さっきの鯉
口には出さないけどあの人はあの子を
私達の子供みたいに見てるんだと思う
だからあの子は誰にも譲らないって…
平次
「そっか…
あの鯉の名前は何て言うんです?
お吉
「まだ決めてないんだ
特別な子だから…
ずっと考えてるけど
平次
「よしっ!じゃあ弥吉なんてどうです?
弥五郎の弥とお吉の吉で弥吉!
お吉
「偶然だね
私達の間に子供が出来たら
弥五郎の弥と私のお吉で弥吉
そう考えてたんだ
平次
「じゃあ決まりだ!
アイツの名前は弥吉だ!
お吉
「うん、きっとあの人もそれがいいって
言うと思うわ
ねぇ?平次
聞いてもいい?
平次
「何です?
お吉
「何で平次は旅をしてたの?
家族はいないの?
平次
「聞きたいですか?
お吉
「うん
平次
「俺は元々は兄貴と妹と3人で
染物屋をしてたんです
けど俺が博打にハマっちまって…
その借金が元で店が潰れちまったんですよ
それで兄貴から家を追い出されて
あても無く旅をしてるうちに
ヤクザになったったんでさ…
お吉
「そっか…
大変だったんだね
でも平次はこれからウチの人の下で働いて
カタギになるんでしょ?
だからお兄さんと妹に手紙を書いたら?
絶対に心配してるから、ね?
平次
「心配か…
してますかね?
こんな馬鹿な弟ですよ?
お吉
「してるに決まってるよ
弟なんだよ?お兄さんなんだよ?
だから、ちゃんと手紙を書きなさい
追い出されても、それでも絶対に
平次の事を忘れたりはしないから
平次
「手紙か、破り捨てられなきゃいいけど…
お吉
「そしたら何回も書けばいいの
悪いと思ってるんでしょ?
平次
「まぁ…
お吉
「だったらちゃんと手紙を書くんだよ?
平次、何があっても必ず
あなたの気持ちは伝わるから
平次
「分かりました
弥五郎
「おい!
まだ食ってんのか!
早く来い!
平次
「はいはい、人使いが荒いなぁ
ごちそうさまでした、行ってきます
お吉
「平次、頑張ってね
平次
「それじゃ、行ってきます!
昼飯楽しみにしてます!
お吉
「行ってらっしゃい
※暗転→恋慕鯉灯篭 第3幕その2へ
弥五郎の家
中央 木戸 (上手側 家)(下手側 庭&遠景)
※弥五郎&平次 下手出
平次
「離せよ!!
弥五郎
「離さねぇよ
お吉、帰ったぞ
※お吉 上手出
お吉
「お前さん、おかえりなさい
あれ?そちらの方は?
弥五郎
「ああ、町で拾ってな
行くあても無いみてぇだし
人手が足りねぇから連れてきた
平次
「はぁ?
ふざけんなよ!何で俺が!!
弥五郎
「このまま番屋に突き出しても
構わねぇ
元気が有り余ってんなら
俺の仕事を手伝え
平次
「嫌だね!誰がお前なんかの所に!
弥五郎
「よし、分かった
お吉、お役人様呼んでこい
コイツは青山様に無礼をした上に
人様に怪我させた
下手すりゃ人足寄せ場
いや、島流しだな
平次
「おい!汚ぇぞ!!この野郎!
弥五郎
「二つに一つだ…どっちにする?
平次
「………分かったよ………
弥五郎
「決まりだ
お前はこれからウチの若い者だ
まだ名前聞いてなかったな?
平次
「平次だよ…
弥五郎
「平次か、いい名前だな
俺はこの土地で鯉問屋をやってる
弥五郎って男だ
こっちは女房のお吉
よろしくな
コレから忙しくなる
だがヤクザ者の身なりじゃいけねぇな
お吉、平次を風呂でも入れてから
身なり整えてやれ
俺はこれからアイツらの所に行ってくる
お吉
「分かりました
※弥五郎 行きかける
平次
「おい、待てよ!
見ればカミさん1人だ
俺が何かやらかして
逃げるとは思わねぇのか?
弥五郎
「ん?思わねぇな
ほっときゃいいのに
メシを粗末にした野郎を見逃せねぇ
やる事はメチャクチャだが
筋は通ってる
そんな奴が下手な事しねぇだろ?
俺を失望させんなよ…
お吉、平次の事頼んだぞ
※弥五郎 下手入り
平次
「何なんだよ…
お吉
「ねぇ、平次って言うんだろ?
災難だったね
あの人は強引だから…
逃げないのかい?
今ならあの人もいないし
お役人様にも黙っててあげるよ?
平次
「あんな事言われて逃げれるかよ…
俺も言ったからにはやってやるよ
鯉問屋ねぇ…
何をさせられるんだろうな?
お吉
「ふふふっ
あの人が無理矢理連れてきたのが
分かったわ
逃げればいいのに馬鹿が付くほど
素直なんだね
仕事の事なんだけど
冬になる前に済まさなきゃ
いけない事があるらしいの
だから私からもお願いするから
あの人を手伝ってあげてくれないかなぁ?
平次
「分かったよ…
手伝うよ…
なぁ?おかみさん
メシ作るの得意かい?
お吉
「苦手じゃないわね
ねぇ平次、何が食べたい?
平次
「美味いものがいい
お吉
「あの人と同じ事言うんだね(笑)
それが1番困るの!
いいわ
それじゃあ美味しいもの作ってあげるから
これから買い物手伝っておくれよ?
平次
「えぇ!風呂は?
お吉
「後からっ!
平次
「はいはい、分かりましたよ
でもアイツらの所って誰なんです?
他にも誰かいるんですかい?
お吉
「ん?知りたい?
平次
「まぁ、そりゃあ
お吉
「ふふふっ…教えてあげる
鯉!
※チョン
平次
「はぁ!?
お吉
「さぁ、行こっ♪
※二の木
第3幕へ

