目の前には、静謐な湖面が広がっています。少しの揺らぎもない、永遠を切り取ったような。
そこへ、取るに足らない小石を放ちます。すると、湖面はひとときにしてどよめく。それまでの沈黙を破るようにして。
波紋。それは四方に等しく拡がる習いらしい。波紋のつくる円周の美しさ、これをしのぐものをついぞ知りません。
黙して眺めればよいものを、ほどなく、私は次の一手を放り込むのです。同じような小石をまたぞろ。
すると、先の波紋に、後の波紋がぶつかって。これが悲劇の始まりでしょうか。
複雑な形は、私を虜のようにします。こちらの波は、どちらにたどり着くのか。そちらの波は、いずこにくだけるのか。
人とのつながりに行き詰まった時、私は必ず、湖面に向かって小石を投じます。静謐な湖面に。清らかな透きとおりに。