↓前回の分。アメ限です。
翌朝。
「おはよう、いい天気だね!」
最初に顔を合わせたのは、ユーリ。
「ぼーっとしてないで、行くぞ」
次に会ったのが、護衛に来たアラン。
「今日の予定ですが……」
執務室に行くとすぐに、ジルが来て。
(どうしよう、みんなと目を合わせられない……)
なんとか会話をやり過ごし、一人になって、私は深くため息をついた。
朝になり、冷静になってみると、昨夜部屋を訪れたのは誰だったのか、そして、本当に室内の様子を悟られなかったのか……気になって仕方がなかった。
何か用事があったのだろうから、今日改めて何か知らされるだろう。そうすれば、誰が何の用で来たのかわかるだろう。
そう思っていたのだけれど、誰も、夜にわざわざ部屋を訪れて話すような用件を言っては来なかった。
(レオにも聞こえてたから、ノック自体は聞き間違いとかではないし……)
あの時間、さらに自室という場所を考えれば、ジルだった可能性が一番高いように思う。
そう思いながら、私に背を向ける位置で、手紙や書類の仕分けをしているジルの背中を、ぼんやりと眺めてしまう。
すると、それを察知したように、くるりとジルが振り向いて、言い逃れもできないほどしっかりと視線が交わった。
「何か?」
「いえ、何でもありません!」
慌てて手元に目を落とすと、手に持った羊皮紙と顔の間に、ジルの懐中時計がすっと差し出された。
「そろそろお時間では?」
「あっ……!」
時計が示す時刻を見て、思わず立ち上がる。視察に出発する時間が近づいていた。
「後は帰ってから目を通しますから、置いておいてください」
ジルにそうお願いしながら、机の上を整理していると、執務室のドアが軽くノックされて、ユーリが入って来た。
「プリンセス、出かける時間だよ」
「うん、今行くね」
そうして私はバタバタと視察へ出かけた。
視察を終え、城に戻ってからも慌ただしく時間は過ぎ、夕方に庭で一息ついていると、
「お疲れ様」
背後からの声に振り向くと、レオが軽く手を挙げてこちらに歩いて来た。
「レオも休憩?」
「うん。今日は一日、よく働いたよ」
自然と隣り合って庭を歩きながら、朝からずっと気になっていた事を思い出した。
(そうだ……レオは、あの時ノックしたのが誰だったのか、わかったのかな?)
誰かが用事があったからこそ、夜遅くに部屋に来たのだろうと思うのに、今日になっても、誰もそれらしき用件を言って来ない。
もしかしたら、その人が用事のあったのは、私ではなくレオで、あちこちとレオを探す中のひとつが、私の部屋だったのかもしれない。
それなら、レオはもう昨夜の用件を聞いていて、あの時ノックしたのが誰なのかも知っている……そんな可能性は、大いにある気がする。
(聞いてみたいけど、……何て切り出したらいいのか……)
あの時のノックは、肌も溶け合うような甘い記憶と結びついていて、話題に出すどころか、思い出すだけで頬が熱くなる。
「……考え事?」
レオの声に、はっと我に返る。しばらく黙り込んでしまっていたと気付いて、私は慌てて首を振った。
「ううん、何でもないの」
レオはじっと私を見た。眼鏡を掛けていないせいか、私の顔を覗き込むような近さで。
「何を考えてたか、当ててみようかな」
夕焼けの空に似た瞳が、すっと細められる。
「ジルだったよ。朝、ものすごーく遠回しに嫌味を言われたから、ああジルだったんだなって確信した」
「……っ」
それは確かに、私が聞きたかった話だったけれど。
私が何を考えて、どうして言葉にできなかったのか、レオには全部見透かされていたという証でもあった。
(レオの顔も、ちゃんと見られないよ……)
恥ずかしさに目を伏せると、レオの胸元に視線が止まった。
見覚えのある、少しだけ他と色の違う糸で留められたボタン。
「……レオ、これって、昨日の?」
「あ、バレた?ちゃんと洗濯はしてあるよ」
「うん、それはわかるけど……他にも服、あるよね?」
「あるよ。心配しないで」
私の言葉が的外れだったのか、レオは相当可笑しそうに笑った。
「だって、忙しそうだから、服を買う暇も無いのかと思って」
「……心外だなー。仕方ないから、正直に言うけど、笑われるかも」
レオはそう言うと、指先で、ひとつだけ糸の色が違うボタンに触れた。
「好きな人がここにいる気がして、ちょっと胸があったかくなるから、また着たくなったんだ」
「え……」
あまりに予想もしなかった言葉に、目を見開いて顔を上げる。
けれど、目が合った瞬間、私はぱっと背を向けてしまった。
「何か……レオ、それは反則だよ」
赤くなった顔を伏せると、レオの腕が後ろからふわりと体を包むのが見えた。
「反則でもいいから、ここにいて」
軽く笑うような口調は、レオの声だからこそ本心に聞こえる。
軽い言葉で返すような余裕は、私には無くて、ただレオの腕にそっと手を重ねた。
おわり。
やっと完結させました。ほぼ1年かけて。
今回はヤバそうな箇所が無いので全体公開ですが、(5)と(6)は久しぶりにアメ限にしてみました。が。
相変わらず、わたしのアメ限記事は削除されないなと改めて思う。目をつけられるのも嫌だけど、削除されたことがないのも寂しい。ヌルいってことだよなぁ……。
まあそれはいいや。
次は王宮5周年のお祝いに何を書こうか考え中です!
王宮人気投票2017、結局、レオの「頭を撫でられたい彼」部門に全票注ぎ込んで、髪型をゲットしました。
悩んだ……けど、結局スイーツデートだと、名店データが完璧そうなジルと、レシピ解説が完璧そうなアランの方が有利な気がして。
叱られたい部門もねー、レオに叱られたい気持ちは山々なんですけど、レオの場合、叱る時は相手にものすごく気を遣いそう。後のフォローのことまで考えたり。だから、わたしの「叱られたい♡」って気持ちを優先して、レオにそんな気を遣わせるのは悪い気がして……。
んー、でもやっぱり、特典ストーリーに割り振られてる通り、レオはスイーツデート部門で投票した方が良かったのかな?
頭撫ででゼノ様1位、スイーツデートでルイ1位、叱られたいでアラン1位……みたいに、みんな公約やります!って結果になる予定なのかなー。だったらレオはスイーツデート2位に来る予定?
まー、ゴチャゴチャ考えちゃうけど、普通に頭撫でられたいからいいや。