セム族は凶暴な侵入者ではあったが、文明の破壊者ではなかった。最初のセム族の王朝を創設したのは、羊飼いの息子、宮廷酌夫から身を起こしたアッカドのサルゴン王だった。前十八世紀、バビロンのハンムラビ王は、世界最古の立法者の一人となった。「目には目を、歯には歯を」、ハンムラビ法典は、復讐法ではなく制限法だった。砂漠を突き抜け、肥沃な三日月地帯を縦断、約束の地に定住したアブラムの子孫ダビデとソロモンは、イスラエル王国を建設した。

 彼らは文明人のシュメール人から、家を建てて定住すること、灌漑用水路を掘って農業に従事すること、とりわけ文字を書くことを学んだ。フェニキア人はアルファベットを考案、文字の使用を簡素化した。イスラエル人はヘブライ語聖書を編纂、おそらく世界初の一神教徒となった。ユダヤ教の一派として出発したキリスト教の始祖は、一神教を世界宗教の一つとする礎となった。