外債という名のアヘン(2)

 ムハンマド・アリのビジネスモデルを破壊した自由貿易という名の自由放任政策と、砲艦外交を盾とする領事裁判制度の下で、経済の最重要部門、金融と国際取引を外国資本に牛耳られていたエジプトでは、イスマイルのビジネスモデルは、直ちに機能不全に陥った。

 外国資本はこのビジネスモデルの逆手をとって、機能させなかったのである。

 銀行と商社は一八六四年の初めころ、決済口座を開設し短期資金を融資する準備として、まず長期資金の調達によって短期の流通債券を償還するようイスマイルを説得した

 外国資本にとっては、エジプトの債務が増えれば増えるほど、利益も増大したからである。

 高利の貸し付けだけでももうかる。さらに開発会社の欧州での代理人として物資を調達すれば、五%ほどの手数料も入る。一粒で二度おいしい、とはまさにこのことだ。

 エジプトが資金を調達しなければ、物資の発注もできない。そこで外銀は返済能力、与信管理、プロジェクトの経済性を度外視して外債の募集を引き受けた。

 また欧州の金融市場でエジプトの短期流通債券が供給過剰に陥り、それ以上の発行が困難になったとき、長期の外債募集に応じて短期債務の一部を償却させた。

 すると短期債券の発行がまた可能になる。外銀も商社も、エジプトが債務状態から脱出すること自体を不可能にしていたのである。

アラジン3世のバイトルヒクマ(知恵の館)-英軍砲撃