手紙(35)

1864219日、ルクソールにて


 一日中、雨が降り(ヘロドトスはそれはここでは驚異だと言っています)、ケープの南東風のようにひどい、南からのハリケーンが吹き荒れました。私たちは吹き積もる砂に埋もれてしまうのではないかと思いました。今日は天国のような天気に戻っています。
 ここにタウンハウスのような家を持っている(アバブデー部族の)シェイク・アラブが、砂漠の天幕に私を招待してくれたので、ムスタファ・アガと一緒に訪問しようかと思います。彼のタウンハウスの庭にはローマ時代の井戸があって、怨霊が住んでいます。そんな迷信を信じることを恥と感じているムスタファは、その伝説を私に教えてくれませんが、自分で調べみます。
 本当に長い間、皆と離れているといつも感じるようになりましたが、暖かさに長く恵まれていることは、私にとり良い機会だと考えています。それを示すように、この冬は一度も風邪を引きませんでしたし、快適な気候が戻ってきました。私のエジプト人の友人は皆、夏は良いことがあると考えており、彼らは夏を健康な季節と感じています。
 シェイク・ユースフの口述で、ガラスのバスケットを持った床屋の兄弟の昔話を、アラビア語で筆記しています。私たちがみな「アリフ・ライラ・ワ・ライラ」、「千夜一夜物語」を知っていると聞くと、アラブはとても喜びます。辞書がなく、先生が英語を全く知らないということは、大変なことです。いったいどうして勉強したらよいのでしょうか。
 ここには郵便はかなり早く届きます。三週間以内にあなたの手紙を受け取りますが、新聞は届きません。配達は徒歩で、重い物は運べません。昨年の私の船の水夫が、私に会いに来ました。彼は、昨年の航海の方が楽しかった、と言っています。
 ここではヘビをしばしば殺します。庭でジャッカルが捕まりましたが、怖くて外に放たれました。ここでは、ペットという考えを少しでも持っている者は、一人もいません。
 陽が入らない涼しい控えの間の気温は華氏67度です。太陽は素晴らしく輝いています。

ルクソールのテント生活。この画像は、http://timea.rice.edu/index.html  のコレクションに所属している。

アラジン3世のバイトルヒクマ(知恵の館)-ルクソールのテント生活