「絶対に嫌っ!この子捨ててくるなんて絶対に嫌だっ!!」
リコが顔中くしゃくしゃにして怒鳴ってる。
「この子にはお家があるかもしれないでしょう?
待ってる家族がいるかもしれないでしょう?
元いたところに帰してあげなくちゃ、かわいそうじゃない。
それに家の中に閉じ込めるより、お外にいる方が、
ネコちゃんだっていいのよ。」
リコはボクをギュゥと抱きしめながら、
顔を真っ赤にして、無言のまま全身を震わせる。
リコは昔からそうだった。
悔しい時、悲しい時、怒ってる時、苦しい時。
いつもちっちゃな身体をギュッとちぢこめててこでも動かない。
嬉しい時、楽しい時、幸福いっぱいな時。
全身から喜びをみなぎらせて他人まで巻き込んでいく。
頑固で、自由で、危なっかしい。
強そうに見えて、繊細で、臆病で、寂しがりや。
ボクは知ってるんだよ、リコ。
心からの笑顔も、傷つくまいととりつくろう笑顔も。
「お、おいてくる、んて、か、かわいそぉ・・・。うおっ、おっ・・。」
台所で夕飯の支度をするママの背中に向かって、
直立不動のリコが泣きながら訴える。
ピンポン、ピンポーン。
「あ、お父さんだっ!」
テレビを見ながらそば耳たててたコータが玄関へ走る。
「お父さん、おかえり~。あのね、今日ね、リコがネコ拾ってきたんだよ。
それでね、今お母さんが返してきなさいって言ってね、
リコが泣いてるんだよ。」
廊下の先の玄関口から、鼻息も荒くまくしたてるコータの声が響く。
「え、ネコ?そーかぁ。どれどれ。」

