-あっ!環くん!!おはよう!

「…うーっす」


教室に彼が入ってくると、女子たちの目の色が変わる。

あたしは机に頬杖をついて、その様子を他人事のように見ていた。

すると1人のクラスメートが手にノートを抱えて彼の元に駆け寄った。


-環くん、昨日の分のノート、よかったら写して!

「…んー?…あー、いや、大丈夫。」

-え?でも、昨日、お休みしたし、あの先生の授業のノートないとヤバいでしょ?気にしなくていいから。

「…んー、大丈夫だから。あんがとね。」

-そっか…わかった。でも必要ならいつでも言ってね!


残念そうに自分の席に戻ってくクラスメートを見て、あたしはため息をついた。

たまには借りてあげればいいのに…って。

そんなことを思ってると、彼は自分の席に後ろ向きに座った。


「…貸して。」

『…また?』

「いーじゃん。」


後ろの席のあたしに向かって、そう言って手を差し出す。


『…はぁ……』


あたしはまたため息をついて、机の中から昨日の授業のノートを取り出した。

そしてノートを差し出すと、彼はニッと笑って、受け取った。


「サンキュー」

『…うん。』


あー、女子の視線が怖い。

ホント、環はそういうとこ気付いてないし、気にしてもいないんだろうけど…

あたしにとっては、正直、地獄。

クラス中の女子を全敵にしてしまってるワケだから。


第一、ノートなんて、誰の借りても同じなんだし、あたしのじゃなくてもいいのに。

なんでわざわざあたしのを借りるんだか。

ホント、もやもやするんだよね。


そして、今もまた、ひそひそとあたしへの嫌味が聞こえてくる。

ほんと、女子ってめんどくさい。

何か言い返したとしても、さらに上乗せで返ってくるだけで、いいことはないし。

だから、テキトーに距離とってやり過ごすのが正解だと思ってる。

あたしがそんなこと考えてる時だった。


「そーゆうのがないからなんだよね。」

『…え?』

「めんどくせーじゃん、そーゆうの。」


環は突然、誰に言うでもなく、大きめな独り言を言った。

それと同時にこそこそ話してた女子たちがハッとした顔をして、散り散りになって自席に戻ってく。


『…環、言い過ぎだよ?』


あたしは彼の背中を手に持ってたシャーペンで突っついた。

すると彼は、後ろを見ることなくあたしにだけ聞こえるように答えた。


「だってホントのことじゃん。」

『だからって、みんな、環のこと思って言ってくれるんだし…』

「じゃあ、俺の気持ちはどーでもいいってこと?」

『いや、そういうことじゃなくてさ…』

「俺、自分の好きなヤツが色々言われてんの聞くの、すげーヤなんだけど。」

『…えっ?』


彼がサラッと言った言葉に、あたしは固まった。

す、、好きなヤツ!?


ちょっ、待って!
よく、考えてみて、あたし!

あ、うん、そうだ!
友達として、、、そう!友達としてだよ!

ね?
そうだよね?


あたしが心の中で自問自答してると、彼があたしにノートを返してきた。


「あんがとね。」

『あ、え、、あぁ、うん。』


ノートを受け取って、あたしはパラパラとノートを指で弾いた。

すると、最後のページになにか書いてあるのが見えた。


あれ?あたし、なんか書いてたっけ?

あたしは最後のページを開いた。


『…えっ?』


そこに書かれた文字を見て、あたしは驚いて固まる。

-好きなヤツって、あんたのことだから


ちょ、、、ちょっ、まっ、、、

な、なに?これ?


パニックになるあたしに、彼はまた後ろを見ずにあたしだけに聞こえるように言った。


「それ、友達としてじゃねーから。」

『…えっ?た、、環?』

「マジだし。」


あたしが顔をあげると、視界に入ってきた環の耳が、、、真っ赤だった。


『あ、、あの、、、、』

「だから、俺、あんたのこと、好きだから。」


彼はそう言うと、机に顔を臥せた。

そして、また小さく呟いた。


「あー、わりぃ…今、顔見せれねぇから、あとでもう一回ちゃんと言わせて。」

『えっ、あ、、、う、うん。』


その日一日、あたしは動揺を隠すのに必死で、授業の中身なんて覚えていなかった。



そして、その日の放課後…

あたしたちが付き合うことになったのは、二人だけの秘密。