何も考えてないわけじゃない
僕だっていろんなことを考えてる

言わないだけでいつも頭の中は
ぐるぐるぐるぐる
沢山の言葉がめぐってる

言ってもいいことと
言ってはいけないこと

本音を隠していい子ぶる



「ありがとう、助かったよ」

笑顔でお礼をしている時

心の中で薄汚い言葉を相手に浴びせてる
なんてことはザラにある

そうやってつくった仮の自分

そのイメージは強烈で
今更、本当の自分なんて
曝けだせるわけがない

親しくなればなるほど
罪悪感で黒く染められる心

仮の自分を好きだと言われるたび
本当の自分が血を流す

仲間はずれにされるのが怖くて
ひとりぼっちになるのが怖くて
偽ってきたのに…

結局、ひとり


青いりんごは青いまま。




カーテンのない窓から
無遠慮に差し込む太陽の光で
目を覚ます

机に置かれたライターをとり
煙草に火をつけ息をする

ベランダで小鳥が
ピーチクパーチク会話をしている

机と毛布だけの殺風景な部屋

ボサボサの髪をかきあげ
誰からも連絡のこないスマホをみつめ
煙草を灰皿におしつける

机に貼られた無数のプリクラ

幸せそうな顔でうつる自分と
いまはもういない人達

天井を見上げてそのまま床に倒れこむ

光をさえぎるように手を伸ばし
誰かが掴んでくれるのを待っている

私しかいないのに


何もない部屋


何もない私



誰にも掴まれることなく落ちた手は
でこぼこした皮膚に触れる

これ以上は治せないと医者は言った

この姿で残りの人生を
過ごさなければならないのだ

それでも生き残った君は幸せなんだと
助かった君は幸運なんだと世間は言う


こんな姿で生きていかなきゃいけないのなら
助かりたくなんてなかった

何もかもなくしてしまった

こんなことなら私もみんなといきたかった


何もない



ただただいつになったら死ねるのか
そればかり考えて…



はやく消えたい



 



部屋の片隅で震えてる

吐く息は白く
月が無機質な部屋を照らす

影が嗤う


うるさくて耳を塞ぐ
聴こえるのは胸の鼓動と呼吸

吸って吐いてを繰り返す


ふと目線をあげると
遠くにあるはずの壁が迫ってくる


飾ってあるあの子の写真と一緒に



目を見開く

焼き付くあの子の笑顔


床が歪んで割れたすき間から
助けを求める様にのびた手

真っ白な腕に無数の傷跡



歯がカチカチと音をたてる


目を閉じる


耳を塞いでいるのに耳元で
「                     」


女の声がした