徳川家広のブログ

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ユーロ危機の震源地とも言うべきギリシャで、新内閣がなかなか出来上がらない。6月には総選挙になりそうだということである。選挙をすれば、結果は(フランスの大統領選の結果に勇気づけられて)、今以上に緊縮に強く反対する議員の大量当選と、彼らの選好を反映した政府の樹立というものであろう。そんな結果になれば、ギリシャのユーロ離脱が取りざたされ、ユーロ崩壊の噂が世界を駆け巡り、ユーロの価値は下落することは間違いない。
しかし! よく考えてほしい!
もともとEU諸国がユーロという共通通貨を採用したのは、EU各国ともEU内の貿易が多かったにもかかわらず、為替に対する投機が激しくて、通貨運営が難しかったからである。共同通貨構想が最初に出てきた時に比べて、現在は世界的な投機資金の総額は、間違いなく激増している。ユーロから離脱したからといって、通貨運営が楽になるわけではないのだ。
このような、純粋に経済的な問題の他に、ユーロが崩壊すれば、EUも長くは続かないという現実がある。ユーロが崩壊すれば加盟各国には必然的に経済的なコストが発生するが、そのコストの責任ということでは、どの元ユーロ国の政府も、他の元ユーロ諸国を非難するだろうからだ。そんなひどい隣人たちと政治東郷など出来るはずもなく、国民の喝采を浴びつつ、どの政府もEU離脱を宣言する。そんな悪夢のような絵が、現在のEU各国首脳の頭の中に浮かび上がっているはずだ。
ということで、ユーロ圏の主要国(ギリシャ以外)は、ユーロ防衛を必死で考えているものと思われる。最も合理的な道筋は、ユーロの大量供給ということになる。ユーロ圏各国の銀行の不良債権を、ECBが吸収するのである。結果は大々的なユーロ安ということになるが、輸出が伸び、観光客が増えるのだから、誰も文句はないであろう。
しかもユーロ安がインフレをもたらす危険性は、実は低い。アメリカの景気はユーロ問題とは関係なく脆弱で、中国の景気もここへ来て急減速している。原油価格は下がり始めており、中国産の粗悪品の価格も下がるであろう。オーストラリア・ドルがどんどん下げてきて、アメリカ・ドルを久しぶりに下回ったのも、一次産品安を市場が予感してのことだろう。
けっきょく、ユーロ圏諸国にとって、ユーロ防衛の決意が固ければ固いほど、ユーロ崩壊の噂は有り難いのである。現に、ユーロ危機が報じられ、ユーロが安くなるごとに、ドイツの株価は上がってきたではないか。
通貨安が輸出ラッシュを呼ぶという、日本企業にとって夢のようなシナリオが、ユーロ圏では実現しているのである。ユーロは下がるだけ下がって、安定するであろう。安定するまでは、ユーロ危機は終わらないのだが、それでほくそ笑むユーロ圏の住人も少なくないということを、忘れるべきでないであろう。