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夏になると、日本各地で盆踊りが行われます。

その中でも、ひときわ印象に残る盆踊りがあります。

秋田県羽後町に伝わる
西馬音内(にしもない)の盆踊」です。

 

編み笠を深くかぶり、顔をほとんど見せずに踊る女性たち。

そして、黒い頭巾で顔をすっぽり覆った踊り手。

華やかな衣装と、どこか幻想的な雰囲気。

初めて写真を見ると、

「どうして顔を隠しているのだろう?」

と思うかもしれません。

実は、そこには西馬音内盆踊りが大切にしてきた、盆踊りならではの世界観がありました。

また、西馬音内盆踊りは、「日本三大盆踊り」の一つとして紹介されることが多い、非常に特徴的な盆踊りです。

 

国の重要無形民俗文化財、そしてユネスコ無形文化遺産

西馬音内盆踊りは、秋田県羽後町西馬音内に伝わる伝統芸能です。

1981年(昭和56年)には、国の重要無形民俗文化財に指定されました。

さらに2022年には、「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産の代表一覧表にも記載されています。

文化庁は、西馬音内の盆踊について、特に「洗練された流麗優雅な踊り」であることを特徴として挙げています。

単に大勢で輪になって踊る盆踊りではなく、踊りそのものに独特の美しさがあるのです。

なぜ顔を隠して踊るの?

西馬音内盆踊りを写真で見たとき、まず目に入るのが「顔」です。

……と言っても、顔はほとんど見えません。

女性の踊り手は、華やかな「端縫(はぬい)」の衣装や浴衣に白足袋を合わせ、編み笠をかぶります。

また、「彦三(ひこさ)頭巾」と呼ばれる黒い頭巾をすっぽりとかぶる姿もあります。

この彦三頭巾については、亡者をかたどったという言い伝えが残されています。

盆には先祖の霊や精霊が帰ってくる――。

そんな盆踊りの原点を思わせる、供養踊りの面影が現在にも伝えられているのです。

だからこそ、顔を隠した踊り手が夜の通りを舞う姿には、どこか現世とは違うような、不思議な雰囲気があります。

「顔を見せない」という特徴は、西馬音内盆踊りの大きな魅力の一つなのです。

華やかな「端縫」の衣装

もう一つ、目を引くのが女性の衣装です。

「端縫(はぬい)」と呼ばれる衣装は、さまざまな古い布や端切れなどを縫い合わせて仕立てられたもの。

一枚の着物の中に、異なる模様や色の布が組み合わされていて、とても華やかです。

踊り手が動くたびに、その布の組み合わせが見え隠れします。

編み笠や頭巾で顔を隠す一方、衣装はとても華やか。

この対照も、西馬音内盆踊りならではの美しさだと思います。

踊りを支える音楽

西馬音内盆踊りは、踊りだけではありません。

その踊りを支えているのが、独特の囃子と唄です。

使われる楽器には、

・笛
・大太鼓
・小太鼓
・三味線
・鼓
・鉦

などがあります。

これらの楽器が特設の屋台の上で演奏され、そこに「地口」と「甚句」の唄が加わります。

つまり、

笛や太鼓、三味線などの囃子
+ 唄
+ 踊り

が一体になって、西馬音内盆踊りの世界を作っているのです。

宵は「音頭」、夜が更けると「甚句」

西馬音内盆踊りには、特に知っておきたい二つの踊りがあります。

それが、

**「音頭」「甚句(じんく)」**です。

宵のうちは「音頭」から踊り始め、夜が更けてくるにつれて「甚句」の踊りへ移っていくのが習わしです。

そして、この「甚句」の踊りは、

「がんげ踊」
「亡者踊」

とも呼ばれています。

ここが西馬音内盆踊りの面白いところ。

時間が進むにつれて、踊りの雰囲気まで変化していくのです。

最初はにぎやかな「音頭」。

そして夜が深くなると「甚句」。

顔を隠した踊り手たちが夜の通りを舞う姿は、昼間の盆踊りとはまったく違う、幻想的な空間を作り出します。

 

音はにぎやか、踊りは優雅

西馬音内盆踊りについて、文化庁が特に評価しているのが踊りの美しさです。

囃子は快活でにぎやか。

ところが、踊りの振りはとても優雅です。

大きく飛び跳ねたり、激しく動いたりするというより、手や腕の動きを生かしながら、流れるように身体を動かしていきます。

文化庁も「流麗優雅な踊り」と表現しています。

写真を見ると、顔が隠れているため表情は分かりません。

だからこそ、手の動き、身体の傾き、衣装の揺れなどから踊りの美しさが伝わってきます。

夜の西馬音内で見るからこそ

西馬音内盆踊りは、明るい昼間に見るのと、夜の通りで見るのとでは印象がかなり違うのではないでしょうか。

暗くなった通り。

その中に浮かび上がる華やかな衣装。

編み笠の影。

そして、黒い彦三頭巾で顔を隠した踊り手。

そこに笛や太鼓、三味線などの音が重なります。

踊り手の顔が見えないからこそ、一人ひとりの表情ではなく、踊りそのものに目が向くのかもしれません。

2026年の西馬音内盆踊り

2026年の西馬音内盆踊りは、

8月16日(日)~18日(火)

に開催されます。

会場は秋田県羽後町の西馬音内本町通り

開催時間は、

8月16日・17日
19:30~22:30

8月18日
19:30~23:00

の予定です。

今年も、夜の西馬音内の町に盆踊りの音が響きます。

「顔が見えない」のに、なぜこんなに惹かれるのだろう

西馬音内盆踊りを調べていて、最初に感じた「顔を隠している」という不思議さが、だんだん分かってきました。

編み笠や彦三頭巾は、単なる衣装ではありません。

盆に精霊とともに踊るという、古くからの盆踊りの世界観を今に伝えるものでもあります。

そして、

華やかな端縫の衣装。
顔を覆う編み笠や黒い頭巾。
にぎやかな囃子。
流れるように優雅な踊り。

そのすべてが重なって、西馬音内盆踊り独特の幻想的な雰囲気を生み出しています。

今年の8月16日から18日。

秋田県羽後町では、また夜の町に盆踊りの輪ができます。

写真だけでも印象的ですが、機会があれば、一度その音と踊りを実際に見てみたい。

そんな気持ちにさせてくれる盆踊りです。

 

 

写真を見ると女性の踊り手が多いように感じますが、西馬音内盆踊りは女性だけの踊りではなく、男性や子どもたちも参加します。ただ、女性専用の衣装である華やかな「端縫」や、編み笠、彦三頭巾に身を包んだ踊り手の姿が特に印象的なため、写真では女性の踊り手が目立って見えるのかもしれません。


西馬音内盆踊り

開催日:2026年8月16日(日)~18日(火)
時間:19:30~22:30(18日は23:00まで)
会場:秋田県羽後町 西馬音内本町通り

※開催内容・時間などは変更になる場合があります。訪問前には羽後町の公式情報をご確認ください。

文化庁「文化遺産オンライン」では、西馬音内の盆踊について、衣装や踊り、囃子、音頭・甚句などが詳しく紹介されています。
羽後町公式サイトでも2026年の開催日程が案内されています。