僕はいつも8時16分発の電車に乗る。最寄り駅までは自転車で5分。無人駅なのに駐輪場でちゃっかりお金をとってるところが嫌だ。1時間弱かけて大学へ行き、授業後は大学近くの居酒屋のキッチンでバイト。時給は高くないけど、まかないもついてるしなんとなく続けてる感じだ。これが僕の1日。特に代りばえしない日々が更新されていく。
今日もそんなありきたりな1日だろう。朝の電車の見慣れた顔たち。いつも僕は、口を開けて寝てるおじさんの前に立つ。僕の最寄り駅から4つ先の駅で乗り換えるから途中から座れるのだ。でも今日はおじさんがいない。変わりにいつものあの席には、ふわりとしたロングスカートを履いた女性が単行本を読んで座っている。この雰囲気には見覚えがある。僕はだまって彼女の正面に立った。そのまま1駅が過ぎようとしていたとき、ふと彼女が顔を上げた。
「・・・池永くん?」
「うん。久しぶり。」
「え。気づいてたの?言ってよー!びっくりしたぁ。」
顔は以前より少し大人びていたが目を細めて笑う表情は変わらず、語尾を伸ばして話す、少し癖のある口調は変わっていなかった。
「いつもこの電車?」
「うん。杵島さんも?」
「うん。今までもう1本はやいので行ってたけど、これでも間に合うのわかって最近変えたの。そいえばさ、中学の同窓会の連絡きた?中3の。あれ行く?」
「あぁ。そういえば、まだ返事かえしてないや。うん。行こうかな。」
「わたしもまだ返事してない。じゃあまた会えるね。」
「よかったらまとめて返事しとこうか?ちょうど今日山下に会うし。」
「ほんと?ありがとう。」
「うん。言っとく。」
その後も他愛ない話を少し、ふいに沈黙がうまれ、また彼女は本を読みだした。彼女は僕が降りる駅の2つ手前で降りていった。これが僕の初恋の人との3年ちょっとぶりの再会だ。