10年の歳月が流れた。

 

父の会社は風前の灯火だった。ある日警察署に事情聴取で呼び出され、出頭するとそのまま逮捕された。

 

会長兼社長だった父が逮捕されたことで、父の会社は事実上倒産した。父も会社も社会的信用は灰塵に帰した。

 

幸い父は起訴猶予で釈放された。本宅は差し押さえられていたので、帰ることができず、妾とその子の家に帰っていった。

妾宅も会社の借り入れの担保に入っていたので、近いうちに差し押さえられて、いずれ競売にかけられ、落札されたら、家を出なければならない。

 

自分が自宅を明け渡して、住まいを探したのと同様、父も妾とその子のために次の家を探さなければならないようになった。

大きな家からマンションの小さな一室らしく、家財道具も処分するものも少なくなく、哀れな末路を辿っていくように思われた。

 

父は妾の親が持っていた土地も抵当に入れ、次の土地を買っていたりしていたので、妾は妾が持つ不動産すべてを銀行に取り上げらることになる。

 

妾は金の切れ目が縁の切れ目とばかりに手のひら返しで父を部屋に入れないようにし出した。でも、父は妾の産んだ我が子が可愛いので、どうしても戻りたい。儲け話を妾に巧みに聞かせて、その気にさせて部屋住まいを続ける。

 

その頃、自分は妹夫婦と相談し、自分宅と妹夫婦宅のちょうど中間点にあたる町のマンションに母一人で住まわせることにした。当時母は車の運転もでき、元気だったので、心配はなかった。父と母の両方の年金があったから経済的にも安心だった。

 

散々甘い汁を吸った妾だが、事ここに至っては貧乏くじを引いてしまったことになる。詐欺にあったと言わんばかりのようだったが、それは自分の身内家族親戚も同じだった。

 

妾は父と話し合いをし、その男の子の為に養育費と生活費を要求し、父はマンションの部屋ではもう生活しない。男の子には月に一度会わせる。そんな条件を父は飲んだ。

 

父が母の住むマンションに戻ってきた。母は父と話し合い、意外にも父を許し、父のすべてを受け入れた。

 

父はすっかり社会的信用を失っていたが、妾とその子のため、自分のため、これまでの才覚で稼ぎ口、儲け口をすでに探しあてているようだった。蛇の道は蛇。逞しいかぎりだったが、もう詐欺師まがいなことはしないようにと強く思った。

 

以降の話は次のブログに譲る。