今回は、
直接、「バシャール」には関係していない内容です。
先週末に
「ノベルセラピスト養成講座」なるものに参加し、
ちょっとした「おはなし」「物語」を創作する機会があったので
つくった「おはなし」を、このブログに載せておきますね。
大げさに言うと、
人間が
「自分が自然の一部である」という認識を取り戻すに至る、
壮大な物語の、
それの、ほんの序章の「おはなし」です。
この物語をつくった翌日に、
アメリカの西海岸で、また山火事が発生したというニュースをみて、
シンクロに、ちょいとびっくりしました。
*****
『ひとつはすべてであり、すべてはひとつである』
ぼんやりとした朝陽の差し込む中、シマリスのトムは、目を覚ましました。
「もう、春になったのかな」
春にしては、まだ空気が肌寒いように感じられます。
例年なら、とっくの前に目覚めているはずの、お父さん、お母さん、おばあちゃんの姿が見当たりません。
起き上がって確認すると、驚いたことに、お父さん、お母さん、おばあちゃんは、まだ眠っていました。まだ冬眠から目覚めていないのです。
「一体、どういうことなんだろう?」
トムは困惑します。
人一倍、いえ、リス一倍、眠りから目覚めることが困難なトムは、例年、春の季節がやって来てから、しばらくしてから目覚めていたので、家族からは「いつも寝ぼうするトム」と、からかわれていたぐらいなのです。
冬眠から目覚めることだけでなく、朝もいつも眠くて眠くて寝床から起き上がれず、学校に行けないこともしばしばで、担任の先生からは「不登校のトム」とみなされていました。(人間の年齢に換算すると)今年14歳になるトムは、学校にまともに行くこともできない自分はどこか劣っているんだと、どうしても思えてしまい、自分に自信を持つことができずにいたのです。
「なんだろう、この臭いは?」
ふと、トムは、焦げ臭い匂いが、どこかから漂ってくることに気がつきます。
そして、外へ出てみてびっくりします。
トムの家族の巣穴のある大木の、すぐそばの木の枝が、パチパチと燃えているのです。
「空気が乾燥していて自然発火が起きたんだ」とトムは認識します。
ここ数年間でずいぶんと、トムたちの住む「テラ・セントラーリス(地球の中心)」という名前の森も(森の環境も)変わってきていました。
森の外の世界に住む人間たちが、地球の環境にダメージを与えるような行動をたくさんたくさんとっているため、その影響が、トムたちの森にも及んできているのです。
以前はまったく起きることのなかった、乾燥した空気のせいで生じる自然発火による山火事もそのひとつでした。
自然発火が起きると、生じた炎は、乾燥した木々の間にまたたく間に広がって、広大な森があっという間に煤と灰に変わってしまうという話を、トムは、おばあさんから何度も何度も聞かされていました。
「大変だ、僕たちの森が燃えてしまう! 僕たちの森が無くなってしまう!」
トムは、できるだけのことをしようと、燃え移りそうな木々の枝を取り除いていったり、小川から水を汲んできて、燃え広がる炎にかけたりしますが、まったく「焼石に水」でした。
「僕ひとりの手におえるような状況じゃない……」
どうしたらいいんだろうと、一生懸命考えるトムの脳裏に、同時に、二つの言葉が浮かんできました。
ひとつはおばあさんの言葉です。
「人間たちは、科学技術によって自然を破壊しもするが、同時に、自らの技術によって自然を守ることもできる、そのための強力な術を持ってもいる。『よい人間』に出会えるなら、リスたちは人間たちと協働して、地球の自然を豊かにすることができると私は思っている。」
おばあさんは、時間のあるときに、そんな話をトムにしてくれたものです。
もうひとつ浮かんできた言葉は、お父さんの言葉です。
「私たちリス族は、人間たちと距離を置いて生きなければならない。人間は、自分の欲を満たすことしか考えていない。人間たちは、自然を生かすことは考えていない。自分たちの欲を満たすために利用するだけ利用し、自然にダメージを与えるだけの存在だ。人間に近寄ってはならない。近寄ると、被害に遭うだけだ。」
お父さんは、若い頃に、心無い人間たちに捕まり、いたずら半分にいたぶられ、九死に一生を得たという体験をしたことがあるのです。
トムはしばらく考え、「このまま考えているだけでは、火がどんどん広がるだけだ」と思い、「行動すること」を選択します。
自分が動かなければ、物事がよい方向に変わっていくはずもありません。
「人間に助けを求めよう」
トムは、そう決心します。
森の外の世界へ出るのは、トムにとって初めてのことです。
トムは、半分焼け焦げたまつぼっくりをひとつ、胸ポケットに入れると、一心不乱に走り出します。
こんなに長い道のりを一人で走るのは初めてだと思う道程を、トムは、ずっとずっと走り続けました。
ずっとずっと走り続けました。
そして、森の外へ出てしばらくすると、一軒の山小屋が目に入ってきます。
小屋の中では、一人の青年が机に向かって、なにか書き物をしていました。
トムにとって、初めてみる人間に、初めて話しかけるのはとてもとても勇気の要ることでした。
でも、ここで自分が行動しなければ家族がみな火に飲まれてしまう、森が滅んでしまうと思うと、躊躇ってはいられません。
トムは小屋の窓を、力強く叩きます。
青年は、窓を開けます。そして、そこにいるリスの様子がただならぬことを、すぐに見て取ります。
トムは、焼け焦げたまつぼっくりを見せながら、状況を説明し始めます。
青年は、まつぼっくりを手に取ります。
トムがびっくりしたことに、青年は、トムの伝えたいことを即座に理解してくれたのです。
「山火事が起きているんだね。
火事の起きている現場へいますぐ連れて行ってくれ!」
青年は手早く必要な物をまとめると、小屋の外へ走り出てきました。
トムが一目散に走り出し、青年がそのあとに続きます。
火事の現場に着いたあとの、青年の行動は迅速でした。
青年ひとりだけでは消火には不十分であることをすぐさま見て取ると、青年は大勢の仲間に連絡を取り、驚いたことに、30分も経たないうちに何十人もの大人たちが現場にやって来て、大がかりな消火活動を始めたのです。
集まった人々はみな、消火活動にも慣れている様子でした。
次第におさまっていく炎の上に水を放出しながら、青年はトムに語りかけます。
「君が、僕のところに来てくれて本当によかった。
僕たちは、自然の森を、木々たちを、破壊から守るための活動をしている青年団のメンバーなんだ。森の様子を見守り、必要な場所の手当てをするために、交代であの小屋に滞在している。」
そう言って、青年は、煤と灰で真っ黒になったトムの背中を、やさしく撫でてくれました。
「君が、早めのタイミングで、まだ火が小さいうちに、知らせてくれたおかげで、完全に火を消し止めることができそうだ。本当にありがとう。
ごらん、もう大丈夫だよ。」
最後の炎が消えるのを見届けた瞬間、トムは、それまでの緊張と疲れが一気におそってきて、もう立っていられなくなりました。
青年は、トムが持参した、焼け焦げたまつぼっくりをトムの胸のポケットに入れて、返してくれました。
そしてトムは、青年の手に包まれながら、眠りに落ちていったのです。
*****
目を覚ますと、トムは、自分の部屋の、ふかふかの葉っぱのベッドの上に横たわっていました。
天井を見つめたまま、鮮明に脳裡に残っている火事の一件を思い起こします。
「目が覚めたんだね、トム」
お父さんの呼びかける声が聞こえてきます。
「今回は、ちゃんと春の到来と同時に目が覚めたんだね」
顔を向けると、お父さんもお母さんもおばあさんも、もうすっかり目覚めて、リビングのソファーでくつろいでいました。
トムが「山火事はもう大丈夫なんだよね?」と大きな声で言うと、お父さんもお母さんも、「なんのことを言っているの?」という表情を浮かべます。
山火事の一件をトムが説明すると、「夢を見ていたんだね」とお母さんが優しく言います。
「でも、すごい夢だね。すばらしい夢だね、お前がそんな英雄みたいな活躍をするなんて。」
トムは外に飛び出して、家のまわりを点検してみます。
すると、山火事があった形跡はまったく見つけられないのです。
木々も草々も燃えたあとはまったくなく、青々と茂っています。
「本当に夢だったのかな……」
そうつぶやいて、胸に手を当てたトムは、胸のポケットに何か入っていることに気づきます。
半分焼け焦げたまつぼっくりでした。
「やっぱり!」と思うと同時に、
後ろから、声が語りかけてきます。
「今回、お前は、大きな大きな体験をしたんだね」
振り向くと、そこにおばあさんが立っていました。
「おばあちゃん、これを見て。僕は本当に……」
「わかってるよ、お前は本当に人間を呼んできて、山火事を消したのさ。
それが夢の中の出来事なのか、実際に起こった出来事なのか、そんなことは大した問題じゃない。お前がその体験を本当に本当にリアルに感じていて、その体験のリアルさがお前を大きく大きく成長させた、ってことのほうが、ずっとずっと大事なんだよ。
お前はもう『いつも寝坊するトム』じゃない。
たった一人で、この森全体を山火事から救った『この森の英雄のトム』さ。
そして、『動物界と人間界を再び統一に導くトム』でもある。」
おばあちゃんはそう言って、にっこりとトムに微笑みかけました。
「火事に遭遇して、自分の思ったことと自分の取った一連の行動を、もう一度、思い起こしてごらん。
どんな心持ちがするかね?」
そう言われて、自分がどんな思いでどんな行動を取ったかを思い出してみると、トムは、急に「自分はなんでもできる」という感覚と、全身にみなぎるパワーを感じ始めました。
急に自分のからだが大きくなったように感じ、しっかりと揺らぎなく地面に立っていると感じられるようになりました。
「そうだ、そういうことさ。」
やさしく微笑むおばあさんに、トムも顔いっぱいの笑顔で応えました。
いつも眠くて眠くてしょうがなかったトムは、この春以降、朝寝坊をすることはなくなりました。以前とは異なり、背筋がぴんと伸び、声に張りが出、自分自身に対して自然な自信を持っていることが、トムの言動から感じられると、周囲のリスたちは思うようになりました。
担任の先生からは、「いつも輝いているトム」とみなされるようになったのです。
そして、
ちょうどこの日から一年後に、今度は、例の青年が(青年の名前は「タロウ」と言います)トムのところにやって来て、人間たちがリスたちの助けを借りることになります。
人間たちは自然を破壊することを止め、自らが自然の一部であること、自らが自然そのものであることを理解するようになるのです。が、そのお話はまた次の機会に、ということにしましょう。
(おしまい)
I would like to thank Bashar Communications for making the delivery of Darryl/Bashar's messages possible.
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