4分割してます。

『花遊記』第20話(1)は、こちらから。

『花遊記』第20話(2)は、こちらから。 

20話(3)

とっぽっきを食べにくる2人。


「さぁ」
お餅をフォークにさして、悟空に渡すソンミ。


「俺が、こんなものを好きだったって?」
「好きだったわよ。だから、私がここで毎日買って、あなたに届けたの」
「辛そうだ」
「だから、好きだったんじゃない」
「もし、これを食べて好きじゃなかったら、この世から、トッポッキをなくしてやるからな!トッポッキが断絶したら、お前のせいだぞ、邪鬼」
「わかったわ、本当にやりそうだわ。冗談だったのよ。食べないで」
無理やり、ソンミから奪うと口に入れる悟空。
「(小声で)ああ、トッポッキが断絶したらどうしよう(((((゜゜;)」
幽霊になっても心配するよね、ソウルフードの絶滅危機(笑)
「すごく辛いでしょ。怒った?」
「悪くない」
「よかった。あなた、トッポッキが好きじゃなかったの。」
「嫌は嫌だが、お前と喋りながらこうして食べるのは気分がいい


やだ、泣きそう  ← 私が。

「まさか、申し訳なくなるようなことを俺はしたのか?だが、俺はそんな男じゃないぞ」

二人の関係性の核心に迫りそうになると、話を反らすソンミ。
「トッポッキが無事で良かった。あなたが好きなマイルドな味のを持ってくるわ」

ソンミの後ろ姿を目で追う悟空。

食材をとりながら、
「そうよね、今日が終わるまで、好きなことをしましょう」
呟くソンミ。

「どうも、彼女に申し訳なく感じてる。それで、痛いのか?」


心臓を押さえる悟空。


~雑貨店~
孫くん、一人でお店番。
「あ、魔王様、いらっしゃい」
「ああ、ハルモニは今日もいないのか?」
「うん」
「彼女のような働き者がなぜ、きんこじについて、ちゃんと説明しなかったんだ?」
「いるかいないか、来る前に、僕に連絡すればいいじゃん。僕の電話番号、教えましょうか?僕とおしゃべりする?」
「この調子では、話してるうちに敬意も落としそうだな。・・・お、キノコ粥だな」
「おなかすいちゃって、でも、出前のやつは美味しくないんだ。ヨイドのキノコ粥が最高なんだよね」
「ヨイドの、シントン婆さんの粥屋か?」
「知ってるの?」
「常連だ。あそこの松の実入りキノコ粥はうまい」
「あれ、高いんだよ。でも、確かに、松の実入りは、僕も最高にうまいと思う」
「松の実粥なら、デバン洞に行くといい。」
「それなら今度は、松の実キノコ粥をもってきてよ」
「まったく、生意気な奴だが、味覚は悪くないな。よし、カカオトークに入れてやる。ハルモニが戻ってきたら、すぐ知らせろ」
渡された携帯の待ち受けを見て、固まる魔王。

99連発ばばばば~~~んの時のです。


「この間、星の大群が降ってきたときのだよ。スッゴい寒い日だったんだけど、ハルモニが電話してきて、外に出て星に挨拶しろって言うんだ。しなかったら殺すって脅された」
「流星群に敬意を払えと言ったのか?」
「証拠を送れって言われたから、写真撮ったんだ。死ぬほど寒かったよ。でも、よくとれてるでしょ。」

この星が降ったあの日は、私のよく知る女性の運命が星になった日だった

改めて、孫くんを見つめる魔王。

「番号教えて」
自分がやった方が早いと思ったのか、携帯を受けとると、魔王の携帯に目を向ける。
「あ、桜の花びらだ。魔王様も見たの?」
携帯に貼られた桜の花びらを示す孫くん。


「僕も今日、見たよ。一晩中、ゲームセンターにいて、朝まで残ってたんだ。そうしたら、花びらがバーっと降ってきた。花なんかどこにも咲いてないのに、不思議でしょ?」

じっと、まごくんを見つめる

「名前は・・なんだ?」
「ホンヘアだよ、ホン・へ・ア、それで登録して」

もうもう、言葉にならない魔王。

 ※紅孩児(こうがいじ)は、『西遊記』に登場する神仙牛魔王羅刹女の実子。



~肖像画の部屋~
鉄扇公主(チャ・ウン)に語りかける魔王。

あの子の名前は、ホン・ヘアって言うのか?

もし、お前が彼を探したり、彼の存在が知られるようなことになったら、彼は天界のターゲットになるだろう。

彼らは、あの子をどんなことをしてでも排除しようとするだろう。


ス・ボリの言葉を思いだし、溜息をつく魔王。

~PKの撮影現場~

「お疲れ様」「お疲れ様」

「無事に撮影終わりましたか?」

「もちろん、うまくいったよ」

 

「衣裳部屋に、なんだか腐ったような変なにおいがするのよ」

「誰かが何か食べて、食べっぱなしにしたんじゃない?」

「ひどい臭いなの」

「私が言ったときは、大丈夫だったけど。いいわ、片づけましょう」

 

それを聞いていた八戒。

 

衣裳部屋にやってきたスタッフ。

 

「わぁ、本当に変なにおいだわ」

「だから言ったでしょう。」

「ああ、臭い」

一人が、部屋の隅にいる誰かに気づく。

「誰ですか?」


その時、PK(八戒)がさっそうと表れる。

「ちょっとまってね。」

コートを受け取り、それをアサニョに頭から被せ、隠す。

「この子、俺のともだちなんだ。しばらくぶりに会いにきたんだ。ちょっとだけ、2人で話をしてもいいかな?」

と人払いをする八戒。

 

2人きりになると、アサニョに話しかける。

「お前のためじゃないぞ。スタッフは、みんなプジャのことをよく知ってるからだ。プジャを変な人間だと思われたくない」

 

コートを取り、顔を見せるアサニョ。

アサニョの状態のひどさに、言葉を失う八戒。

「エナジービーズを盗みにきたの。いくつか持ってきてくれない?」

痛ましくて見ていられない八戒。

「・・・待ってろ」

「あなた、バカなの?」

「おまえのためじゃない」

「それなら、彼女のために、私を燃やしてくれない?三蔵が死んでから、こんな風に腐り続けているの。もう変なものを捕まえたり、食べたりしたくない。燃やして、私を始末して」

もう、限界だと気づいている八戒、目を伏せるしかない。

 

~広場~
「ここならいいわね。さ、お願いします。」

まっすぐ見られず、目を反らす八戒。

「どうか、辛く思わないで。プジャは、悪鬼になる前に完全に消えていたわ。この身体を去るのは私よ」

「わかってる。お前のために辛く思ってるわけじゃない」

 

手のひらから、炎を出す八戒。

再び、目を反らしてしまう


「プジャがあなたに残した最後の言葉を伝えましょうか?“あなたが好きでした”」
自分で、八戒の手をとり、火をつけるアサニョ。

 

急に我に返り、突き飛ばしてしまう八戒。

座った状態で、火に包まれるアサニョが、じっと八戒を見上げ、見つめたまま、消えていく。


いつまでも、泣き続け、そこに立ち尽くす八戒。

 

~ルシファー会長室~

ス・ボリ師とマ秘書。
「もう去るまでに時間がないぞ。悟空の緊箍児を彼女が取り除けるのか、わからなくなってきた」

「チン・ソンミさんにとって、緊箍児を取り除いても、のぞかなくても、もう真実を聞くことが出来ないんですよね。彼女は知りたいでしょう」

「彼女ならできるさ」

魔王が入ってくる。

「孫悟空の記憶の断片が合わされば、チン・ソンミは、孫悟空から真実を聞けるだろう」

「どうやって?」

「言ってなかったが、お前も私に言ってないことがたくさんあるだろう?なぜ、私だけがお前に言わなきゃならないんだ?」

「もう、お前に隠していることなど何もないぞ。なんでも聞いてみろ!」

「それなら、ひとつだけ訊ねよう。チャ・ウンは花のように転生したのか?」

ぐっと答えにつまり、ちらりと天を仰ぐス・ボリ。

急に、変な舞をはじめたかと思ったら、腕で、〇をつくって見せる。

「ストレッチが必要だな・・・」

微笑む魔王。

「わかりました」

「では、それなら、チン・ソンミが真実を聞くことができると言ったわけを話してもらおうか」

「過去に、孫悟空は、既に自分自身で緊箍児を外していたんだ」

驚くス・ボリ師。

「もし、あいつの記憶の断片が合わされば、あいつが言いたかったことをチン・ソンミに伝えることが出来るだろう」

 

 

~公園~

ああ、もうすっかり日も暮れちゃったよ。

「すきだったでしょ、食べて」

綿菓子を渡すソンミ。

「俺のことが死ぬほど好きだったから、追いかけたと言ったよな。トッポッキ、綿菓子、俺が好きだったのはこんなものばっかりか?」

「私たちが一緒に行ったところは、もっと一杯あるわ」

「どこ?」

「図書館にも行ったし、博物館にも行ったわ。それから、本屋さんにも」

「一緒に勉強でもしたのか?」

「いえ、悪鬼を退治しに」

平然と答えるソンミ。
呆れる悟空。
「クラブにもいったし、スーパーマーケットにも行ったわ。あ、私たち、ラブホテルにも行ったわ」

「俺たちが踊りに行ったり、食品を買ったり、ラブラブしたとは思えないが・・」

「うん、悪鬼を捕まえたの」

「つまり、死ぬほど好きだったから追いかけたのに、結局、デートすることもなく、一緒に幽霊を捕まえただけか?」
「そうよ。もし、あなたが悪鬼の記憶を中心に持ってきたら、思い出すことができるかもしれないわ」
「もういいよ。ここが、綿菓子を食べたりして、俺が好きだった場所か?」

「実はね、ここはその・・・」

「わかったよ、もういい。たぶん、ここにも、悪鬼を捕まえに来たんだろう?」

 

《孫悟空・・・》

悪鬼に髪を切られようとしているソンミが、悟空を呼んだ瞬間、悪鬼を消滅される悟空。

《孫悟空・・・》

天井からぶら下がった悪鬼から守った悟空。

体重計の悪鬼から守ったとき、嘴鬼から守ったとき、ラブホの悪鬼、花嫁の悪鬼、

「守ってください」

書籍売りの悪鬼、アキコの亡霊、

悪鬼退治の記憶の断片が脳裏に浮かびまくり、その拍子に痛みを感じる悟空。


「大丈夫?」

「こんなに、はっきりと俺の心にたくさんのものが浮かびあがったのは、はじめてだ。お前は本当に、俺の周りで策略しながらいい仕事をしたようだな」

「あなたが私を守ってくれていたの」

「俺が? お前を?」

「私が怖かったり、辛かったり、危険なときはいつでも、あなたの名前を呼べば、私たちが交わした契約のためにいつでも駆けつけてくれたの。もう、私が緊箍児の主人だって信じてくれた?外してほしい?」
「悪鬼を捕まえてほしくて一緒にいるように頼んでいたお前をどうやって信じるんだ?」

溜息をつくソンミ。

「ここで外すのが一番いいのに。もう時間がないわ。この場所のことを思い出すのが、あなたのためにいいのかな」

「なぜだ?もし、俺がすべてを思い出したら、恥ずかしくて、厄介で、恥知らずな想いででもあるのか?」

「うん、あるわ。だって、あなたは私のために、空に星をあげてくれたこともあるのよ」

 

緊箍児を見つめる悟空。

 

《そこにいさせて良かったよ》

《何?》

《いいから、そのまま、星を見てろ》

《うん》

星の天窓でのプラネタリウム。

 

《そうよ、愛し合わないと》
ラブホの悪鬼退治

 

《おまえはまた、結婚できるぞ。何度、俺の新婦になっても問題ない。俺はいつでも受け入れてやる》

花嫁悪鬼を退治したとき

 

《ようやく来たな。会いたかった》

ジョナサンに対抗して、キスしたとき

トッポッキを食べた帰り道、携帯を見ながら手をつないであるいたこと

 

《あのときみたいに、また、あなたを傷つけるかと思うと、とても怖い》

《俺をちゃんと捕まえておけ。そうすれば、大丈夫だ》


作動キス

《お前を愛し続けたい。これは、俺自身の意志だ。》

 

《もし、俺が怖かったり、辛かったり、危険だったとき、俺は、チン・ソンミの名前を呼ぶ》

指輪を渡したとき


自分がソンミにしたことがどんどん、あぶれるように、蘇ってくる。
うろたえる悟空。

 

その様子を見て、察するソンミ。
「どうかしたの?なにか思い出した?」

「お前、俺に言ってないことがあるだろう、違うか?お前だけが俺を好きで、追いかけまわしていたっていうのは本当か?」
答えられないソンミ。

天を見上げた悟空、指パッチンで、こんぺいとうが落ちてくる。

 

「お前のために、空にこんなにたくさん星をあげたのは、お前を愛していた俺だったんだな」

目にうっすらと涙がにじむソンミ。

「どうした?」

「緊箍児のせいで、そう思っているだけ。現実じゃないの。それが、私がこれを外しにきた理由よ。これさえなくなれば、あなたの痛みも消えるでしょう」

「よし、わかった。外してみろ。」

立ち上がり、ゆっくりと緊箍児に手をかけるが、途中で停まってしまい、外せない。


「はずせなかったな。」

「なぜ、外せなかったの?私が嵌めたのよ。みんなも、私だけが外せるって言ったわ」

「お前は間違っていた。それが正しいと確かめたのか?俺にとってのこの痛みは・・・これが作り出した感情のせいだというのは確かか?俺の感情がこれとともに消滅するというのも確かなのか?」
「わからないの。寂しいことに、どっちもわからない。だって、いままで一度だって、緊箍児なしのあなたの本当の気持ちを聞いたことがなかったんだもの。正直、あなたの痛みが、緊箍児のための本当のものなか、偽物の痛みなのか、もよくわからないの。」

「お前は、そんなことすらわからずに、これを外すために、無償で引き受けたのか?」

「だって、信じてたもの。それが消えたら、あなたの感情もなくなるって信じてた」

「わかったよ、とにかく、お前は、これを外せなかったんだから、失敗したんだ」


泣きそうなソンミ。

胸元のペンダントに触れる。

「今日も、もうすぐ終わりだ。元気でな」

消える悟空。

 

残されたソンミ

「なぜ、緊箍児は外れなかったの?」

絶望的に空をみあげる。

 

★第20話(4)に続く★