■ 第20話 父よさらば

 

イノクの剣が、上胸に突き刺さったままのギルトン。

まっすぐに、イノクを見つめます。

ようやく目の焦点が合い、あとずさるイノク。

部下とともに、駆けつけてくるチャンフィ。

 

「ホ・イノク・・・」

剣を抜き去る。

何度も「ホ・イノク」と語りかけるギルトン。まるで、お前は、ホ・イノクだろう?と思い出させるかのように。えーんえーんえーん

「ホ・イノク 大丈夫だ」

「大丈夫じゃない。私が、あなたを・・・」

 

また、気絶、とっさにチャンフィが支える。

あまりの悲劇を目の当たりにして、ギルトンにかける言葉すらない。

 

気を失ったイノクを籠に乗せ、商団へと運ぶよう、部下に命令するチャンフィ。

 

チス「ギルトンは父親につくかもしれません。」

確かに、イノクの剣の前に、自らの身を投げ出して、父を救った姿を見れば、誰もがそう思うことでしょう。

 

イノクに切り付けられ、血だらけになった父親の手当をするギルトン。

父「なぜ、止めた。私を殺させればよかったのだ。あの娘を捕えるぞ」

本当は、覚悟を決めていたのかもしれません。

ギルトンにとって、あのイノクがどんな存在なのかも全てわかった上で。

父の前に、正座するギルトン。

ギルトン「だんな様がお守りするあの方のためですか?多くの血を流してきた王の姿をこの目でみました」

父「誰が何と言おうと、あの方は王なのであり、私はその臣下だ」

非難されることは百も承知なのね。

お前は、王子を玉座に据え、忠臣になるつもりかと聞かれ、

ギ「違います。私は王に仕えるつもりはありません。王が一番恐れる民となり、我々を守らせます。イノクが向けた刃を、息子として遮りました。代わりに、私が、彼女を血迷わせたあなたの世に切り込みます。」

父と子の会話を、陰で聞くチャンフィ。

ギルトンに手をのばし、その胸に触れ、血がついたのを知るアボジ。

父「行け」

去っていくギルトンに、なにか言いたげなアボジ。

 

眠っているイノク。

ベッドの脇に腰掛けるチャンフィ。

「こんな目に遭わせたくなかった。すまない。」

自分の判断が甘かったことを痛感し、イノクの頬のしずくを指でぬぐう。

「傷つかぬよう守ってやる。私のそばにいろ。」

 

イノクの巾着を見つめるギルトン。この間、これを受け取ったときには、あんなに幸せな二人だったのに。

 

ハラボジの墓に、チャンフィと一緒に参ったイノク。

イノク「・・・おじいさん」

若君「イノク、お前には実の祖父がいる」

イ「私のおじいさんはここにいる」

若「実の祖父が生きている。心の準備が出来たら会わせてやろう」

イ「若君、何が何だか、よくわからない。おじいさんは死んだのに、実の祖父は生きている。ホ・イノクだった人なのに、リュ・イノクだったなんて」

若「そうだ、お前はもう、ホ・イノクではなく、リュ・イノクだ」

イ「分かってる。だって、ギルトンを刺したもの。ホ・イノクは運がいいけど、リュ・イノクは本当に運が悪いのね。頑張って考えるわ。また、我を忘れて、復讐の鬼にならないよう、ゆっくり一生懸命考える」

若「戻ろう、顔色が悪いぞ」

イ「行きたくない。私のことは放っておいて」

若「あの者の元には戻れないだろう。」

イ「分かってる、それはよくわかってる」

 

根城、ギルトンの居室にて。

和尚「ホ老人の葬儀は無事終わった。イノクは一人でいたいと言っていた。あの純粋な子が負うには、重すぎる荷だ。受けいれる時間が必要だ。あの子に合わせてゆっくりと待とう」

和尚の言葉を黙ってきいているギルトン。

 

ギルトンアボジは、目があかなくなってしまったようです。

 

マチョン山を封鎖し、ギルトンたちを追いこむ作戦を、王がイニョンに命ずる。

ホン・ギルドンが捕まるまでは、誰も山を下りることはできなくなる。そうなると、村人は飢え死にしかない。

王「自分の守る民たちに、袋叩きにあえばいい」

助かりたければ、ふもとの村人は、ギルトンたちを襲うしかない。

 

マチョン山から、コム山に移れというチャンフィに、王に脅されるたびに各地を転々となどできない。あくまでも、根城を守るつもりのギルトン。

若君「お前が傍にいると、民が苦しむんだ」

ギルトン「俺がそばにいると苦しむ・・・・。だれかと同じだ。考えてみる」

 

「自分たちが生き延びるためには、ホン・ギルドンをここから追い出すしかない。捕まえて、官軍に引き渡すしか方法がない。」

コムと和尚が村人に囲まれ、和尚がつかまってしまった。

ギルトンが、直接交渉にいく。

マチョン山一帯は、王の命令により、封鎖され、ふもとの村人は、活貧党が全滅しない限り、ひどい目に遭わされることを憂い、活貧党に攻撃しようとする。

「仕方がない?だったら、捕まえてみろ。かかってこい」

やけになるギルトン。

あんなに、よくしてあげたのに~~~。

一切、手出しをせず、襲いかかる村人にされるがままになる。

和尚が割って入る。

根城に連れ帰る。

ギルトン「なぜ、邪魔をした?」

和尚「ふざけたことを言うな」

ギ「ムダだったんだ!!!」

親切にしてあげた村人に、痛い目にあわされて、怒るギルトン。

和尚「これまで育ててきた誇りはどこにいった?彼らの心を察しろ。立ちはだかる敵の大きさに恐れるあまり、身近なお前を襲ったんだ。」

ギ「なぜ、いつも俺だけが見くびられるんだ!」

わかる~~~!運命も何もかも呪いたいギルトンです。

和尚「・・・ということは、彼らに近い立場のお前が、共に戦うとするなら、勇気をもって、彼らも戦うはずだ」

それでも、ギルトンの興奮はおさえられません。

 

村人を脅かしても、なかなかギルトンは捕まらない。

業を煮やした王は、村を焼き尽くす命令を出す。

むちゃくちゃな王命だとわかったうえで、渋々、火をつけてまわるイニョンたち。

うけてたつ活貧党。

 

ギルトン「俺たちを封じ込めるなら、お返しをしてやろう」

全国から集まる王への献上品を、都に入る手前で、すべてストップさせる活貧党。

それらの品を、村人にわける。喜ぶ村人たち。なにしろ、献上品って、極上品だもんね。

その様子を離れたところから、じっと見ているイノク。スグンが気づくが、マルニョに「来るわけがない」と一蹴される。

 

怒り心頭の王。

王「山を燃やせ。拠点を焼き尽くすのだ。自ら、見物に行こう」

村ばかりか、山まで。被害の大きさは途方もないことになりますが、イニョンでは、そんな王の暴挙をとめられません。

 

山火事見物気分の王、マチョン山の中腹あたりに、陣をはる。

火をつけ始める。傍にいる側近たちも、恐ろしさに何も言えない。

そこへ、活貧党登場。

各自、手に、火玉を持っている。

 

山に火をつけるという王の言葉に、「誰も止めるものはいなかったのか?」と驚き、王をとめるため、病をおして、山を登る吏曹判書。

 

ギルトン「わざわざ来られたと聞き、伺いました。火は消しません。王に倣い、火をつけます。王が逃げられぬよう、道をふさぎます。我々を突破しない限り、全員が焼け死ぬことになる。火をつけてみろ。なんとしても、あなたを道連れにする。共倒れになりたくなければ、すぐに火を消せ。」

ギルトンの捨て身の防御に、打つ手のない王。

王「火を消せと伝えろ。撤収するぞ」

ギルトン「今度火をつけたら、もっと大きな火で抵抗する」

悔しそうな現王。

最後の視力で、王とギルトンが対峙しているのを見たギルトンアボジ。

 

村人に拍手喝采で迎えられるギルトンたち活貧党。

手のひらをかえしたような村人の様子に、苦笑するしかないギルトン。

その様子を、チャンフィが見ている。

若君「結局、あの者は民の心をつかんだ。」

イノクが、ただ、黙って、そのギルトンを見ている。

若君「お前が見つめるのは、あの者だけか。」

 

見間違いかもしれないが、数日前、ここでイノクを見かけたというスグンの言葉を聞き、イノクを捜しまわるギルトン。反対側の通りを歩くイノクに、気づかない。

そんなイノクをチャンフィが呼び止める。

イノク「コムジャ・・・」

若君「ここにいたのか?あの者を見に。あの者の元に戻るつもりか?」

力なく首を振るイノク。

 

必死で、探し回るギルトン。

ギルトン「どれだけ遠くにいるんだ、まぬけ」

近くで見てろって、そばにいろって、言ったのに・・・・。

 

商団に戻ってきたイノクとチャンフィ。

若君「落ち着いたか?」

イノク「まだダメ。本当に、大丈夫じゃないの。真剣に悩んだわ。もともとバカな私が、怒りにまかせ、復讐の鬼になるのをギルトンが止めた。人間に戻りたい。クッパ屋のおばさんたちみたいにはならないわ。

ただ、リュ・イノクとして生きる前に、もう一度、ギルトンの姿を見たかったの。願いは叶ったわ。彼を見たから、もういい。リュ・イノクの祖父に会わせて」

達観したとまでは言えないけど、受け入れなければならない運命の前に、なすすべのないイノク。

若「リュ・イノクとしての人生は息苦しいだろう。望まぬのなら、このままがいいなら、それでもいい。今までのように、お前を守る」

イ「王を止めるギルトンを見て、確信したわ。やっぱり、彼と一緒に戦いたい。でも、もうホ・イノクとして、そばにはいられないから、遠くで力になるわ。若君と手を結ぶことで、ギルトンと一緒に戦う。」

若「あの者のため、決心したのか?」

イ「リュ・イノクに何の価値があるのかわからない。でも、役に立てるなら、世を変え、若君を王に立てることで、彼と志を共にするわ。」

泣きそうなチャンフィ。

 

いくら守ってやりたいと願っても、イノクの心の軸が、今も、そしてこれからもずっとずっと、ギルトンにあることを痛感させられたチャンフィ。

そして、イノクが思いのほか、事態を冷静に受けとめていることも、逆に、チャンフィにとっては残酷すぎるかも~~~。純粋な子ジカとして、みんなに守られていたイノクは、この事件をきっかけに、大人の階段を上がったようです。

 

王がつけた火を、ギルトンが仙術を使い、消したなどという噂がたっています。

「そのうち、ホン・ギルドンが王になるんじゃないか。」

無責任な民の声ですが、無意識な待望論ともいえます。

 

リュ大監(本当の祖父)と会うイノク。

一礼する。

リュ「イノク・・・」

イ「おじいさんですか?」

この表情は、心から、孫娘の生還を喜んでいるように見えます。

リュ「目がそっくりだ。死んだ息子とそっくりだ」

そんなことで信じちゃうものなの?

手を握るイノク。

ノ尚宮「王から守るため、こちらでお預かりします。」

リュ大監「ありがたい。王子のご恩は忘れません。」

イノクを抱き締める祖父。

 

イノク「まだ幼かったので何も覚えていなかったのですが、お役にたてるのでしょうか」

ノ尚宮「お嬢様の記憶ではなく、存在自体に意味があります。」

きっぱりと言い切るノ尚宮。

ノ尚宮「そのような着物では、人前に出られません。用意したものにお着替えください」

アガシ姿に変身するイノク。どこからどうみても、お嬢様です。

 

ギルトンが王子についているということが、現王を廃そうとする民意を後押ししていることは認めている儒生たち。

その儒生たちの前で、リュ・イノクとしての存在を明らかにしたイノク。

イノク「王と吏曹判書の罪を暴くため、お力をお貸しください。」

その手には、ギルトンからもらった色眼鏡を握りしめている。

 

先王と王妃の事故を再調査する上申書が、儒生から、王のもとにあがってくる。

 

若君、根城にやってきました。

ギ「儒生たちが、王に上申し、決起したそうだな。山のときには、何も言ってこなかったくせに。まったく、四寅剣の権威には恐れ入るよ。」

現実的な選択として、王子を押しているにすぎないギルトンにとって、四寅剣にこだわるチャンフィや両班の考えは、バカバカしくてしかたありませんが、王子を認めていないわけではありません。

ギ「密命がなくても、王子は王にふさわしい。自信をもて」

若「今後、お前の父は窮地に立たされる。命と引き換えに、呼び出されたらどうするつもりだ」

話の途中で、スグンが「お前に会いたいという人が訪ねてきた」と、夷曹判書を案内してきます。

ギルトンアボジが根城に・・・。

「目が見えない・・・」

戸惑いながらも、出ていくスグン

 

父「ギルトンはどこだ」

失明した父親の姿に、驚くギルトン。イノク襲撃以来の再会です。

ギルトン「ここにおります」

父「私が守った世では、お前は息子ではない。それが国のほうなのだ。それは変えられない。だからこそ、世の中が変わるまでは、自分の前に現れるな。これから、何が起ころうとも、お前は関係がないのだ。そして、世直しがすんだら、墓に来い。それを伝えにきた。」

ギルトンの隣に、王子がいることも気配で気づくギルトンアボジ。

父「ギルトン、お前の王を最後まで守ってやれ」

ギ「そうします。必ず・・・」

病の身体をおして、最後の別れを言いに来たのだ、と思うギルトンと王子。

 

本当に、目が見えないのかと尋ねるイニョンに、父は、満足げに語ります。

父「この目は、最後に、直視すべき現実を見た。もう十分だ。もう思い残すことなく死ねる」

 

王「私が見えぬのか?」

久しぶりに出廷した夷曹判書の様子に、ショックを隠せない現王。

ギルトンアボジ、宮中にて、王や高官たちの前で、

先王の密命を隠すため、リュ兵曹判書を殺害し、王妃を殺し、火をつけた罪はすべて、この自分にある。と告白する。

 

二人きりになった王と夷曹判書。

夷曹判書「これが王様にささげる最後の忠誠です。すべての罪をあの世にもっていきます。今の彼らに、王は勝てません。」

王「私を一人にし、見捨てたそなたを決して許さぬ」

一人、玉座で泣きじゃくる王。

もうこの方法しかないのだという夷曹判書の気持ちを汲み、とうとう決意する。

王「王室を侮辱したホン判事に、服毒を命ずる。」

~回想~

聖君になるよう、務めていたころの、はつらつとした若々しい王と、吏曹判書。こんな時代もあったのに~~。

 

処刑される罪人を見るために、人々が集まる前で、一気に毒を飲み干す吏曹判書。

同じころ、夷判のことを想い、号泣している王。

 

血を吐きながら、

「あの子は今、私をみているのだろう」

根城まで出向いてきた、アボジとした最後の約束通り、名乗りをあげることもせず、涙を堪えて、じっと見守るギルトン。

最後の最後まで、ギルトンのことを気にかけていたアボジでした。

「父上・・・」

絶命したアボジから目をそらした先に、王子の姿がある。この悲劇を、おそらく同じ痛みをもって知る王子。

 

その王子の視線の先には、まっすぐに、ギルトンを見つめているイノクの姿。

おなじように、涙をながしながら、ただ、黙って見つめあうギルトンとイノク。

究極のトライアングルです。

 

布倉庫で向かい合うイノクとギルトン。

イノク「あなたに、謝れない。泣くなとも言えない。私は、リュ・イノクなの。これからは、そばにいられない。でも、遠くで見守っている だって、あなたを見ていたいから・・・」

まにゃげ~~~♪

自分が刺した左胸の傷口に手を添えるイノク。

その手に握り締めるギルトン。

イノク「そばで慰められないけど、いつも無事を祈ってる。どうか、元気でいてね。」

すっと、手を放すイノク。

行きかけるイノクを、後ろから抱きしめるギルトン。

ふたりとも、涙を流すだけ。

目を閉じるイノク。

再び、目を開けたときには、ギルトンは去っている

「モンチョンイ・・・」つぶやくイノク。一緒に歩めなくなったお互いに向けての言葉だよね。

 

権力者は、母や自分の命をねらった敵だというチャンフィに対し、一番の敵である王を退けるためには、支配層の力が必要だと説得するノ尚宮。

ノ尚宮「この国では、民の力だけでは王になれません。民がホン・ギルドンを王に臨めば、王座を明け渡せますか?支配層と手をむすぶべきです。」

 

どうすべきか、悩みのつきないチャンフィが、部屋に戻ると、イノクが眠っています。

また、小指で、前髪をあげるしぐさだ~~~って、全然、色っぽくも、楽しくもないシーンなんですけど。

イ「(寝言で)ギルトン・・・」

若「あの者のせいで、こんなに傷ついても、それでも、お前はあの者を求めるのか?イノク、どうか、一度だけでも私を見てくれ」

口づけるチャンフィ。

 

♪ あきらめられないこの気持ち(縁)

  そんな資格すらない僕だから

 

イノクの巾着を、火鉢に入れるギルトン。

 

★第21話に続く★

辛い展開が続きます。

イノクは、リュ・イノクとして、祖父とも再会し、服装も両班の娘のように、変わりました。望むとか、望まないとか、そんな次元ではないことは、十分、わかっています。

 

視力を失ったギルトンアボジは、すでに、覚悟を決めてます。イノクの手で殺されていればよかったというのも、あながち、偽りではないように思えます。

最後の姿をギルトンが見ているであろうことを、服毒の瞬間まで信じて疑いません。

ギルドン、イノク、チャンフィ、以前とは、それぞれ立場が違ってきたうえで、その瞬間を見届けました。

 

会わずにはいられないけれど、少しずつ、別れを意識しているギルトンとイノク。

 

そんな資格すらないぼくだから。。

チャンフィの登場シーンによく使われるOST「縁」ですが、この歌詞は、この回のギルトンのためにあるような歌だと思いました。。。

 

更に、大どんでん返しが。。。