■ 第10話 3つの秘策

 

父の死に、衝撃を受け、泣きじゃくるヤンソン。

その様子をただ、それぞれ、少し離れた場所から見守るしかないソンヨルと、イ・ユン。

 

チョ・センがヤンソンを通じて言い残した在処により、120年間、探しに探した貞顕世子の備忘録を、ようやく手にいれたソンヨル。

在りし日の世子の様子を思い出しながら、彼が相応の覚悟をもって、この備忘録を書いたことを知る。そこに 書かれた複数の名前が、秘策に関係していると考えるソンヨル。

 

ヒョンジョ自身も、自分の父親から、クィの存在を知らされたときには、必ず撲滅すると誓ったものだが、結局、この年齢になっても 手をこまねいている、自分たちに未来はあるのだろうか、と 唯一の味方である 左相に苦しい胸のうちを明かす。

左相は、どう考えても、もう一人の吸血鬼、あの男が鍵を握っている気がする、と王に訴える。

 

淫乱書生は、世孫に間違いありません。私にもう一度、機会を・・・という領議。

やめろ。

死んだ淫乱書生が備忘録を渡した相手が キム・ソンヨルであれば、一大事だ。

なぜ、あんな老いた本売りの言葉を信じるのですか?彼は偽の淫乱書生です。これは、世孫を守ろうとする王の策略です、領議が必死に説明をしているところ、冷ややかな表情をしたヘリョンがやってくる。

およびですか

お前はもう行ってよい。お前の娘と少し話がある。

 

「キム・ソンヨルを捕えられるのに、いい策はないのか?」

「限られた知識しかございませんので、なかなか思いつきませんが。」

下手(したで)に出ながら、反発してみせるヘリョン。こういうところが、クィのお気に入り。

「人間の女との色恋沙汰、俺には信じられんな。死んだ本売りの娘の監視を続けろ。その娘の周囲に、奴は必ずいる。」

「かしこまりました。」

 

備忘録に書かれていた6名の名前は、家門も名前もバラバラで、全く関係性がなく、秘策をつきとめることができないソンヨル。

しかし、サドン世子は、秘策を見つけ出したのだ。
120年前の戸籍を調べるよう、ホジンに命じる。

世孫は、学者たちや自分の側近でさえ、免官し、人が変わったように、クィに追従しているらしいという噂。

「邸下が信じた道をおすすみください。私は、変節を信じません。」と ユンに告げるノ・ハギョン。

 

父を失い、奴婢の身分に落とされたヤンソン。

傷だらけの体で働く姿を見たユンは胸を痛めるが、ヤンソンは、兄貴、あなたは許されない罪を犯した、私にすまないと思うのなら、国と民を救ってください、それが淫乱書生の使命です。二度と自分の前に現れないでほしいとユンに告げ、ユンもそれを了承する。

塩の壺を割ってしまい、拾い集める姿をみても、もう救うことができず、切なそうに立ちすくむユン。

 

それを陰からみていたヘリョン。

あの子のそばには、キム・ソンヨルだけじゃなく、世孫もいるのね。

いったい、どんな子なの。

特別な子です(笑)

 

兵判に賄賂を払い、ヤンソンを救うための書類を用意させるソンヨル。

うわさ好きな兵判は、領相殿は、いま、令嬢との仲がこじれていて、いろいろ大変なようだ。

地方の一役人だった男が、突然、領相になったのだから、いろいろな憶測をよんだ。一人娘を上納したとか、奥方の病はそのときからだとか、と情報をもらす。

 

邸に戻ってきたヘリョンに対し、父の領相が、クィとの話をたずねるが、ヘリョンは無視。

夢からさめろ。じきに、世孫は、私の手で廃位に追いやる。世孫嬪になどなれぬぞ。

どういうことですか

クィをねらった淫乱書生は、世孫だ。近いうちに、証拠をクィに見せる。それだけのことだ。

 

華陽閣にやってくるヘリョン。

ソンヨルにヤンソンの居場所を教える。身も心も衰弱しているようだと伝えると、ソンヨルの顔色が変わる。

随分、あの娘に関心があるようですね。

でも、意外な方と会われていました。世孫様です。高貴な方と奴婢がどういう仲なのかは存じませんが、ずいぶん話し込んでいらっしゃいました。

意味深な言い方をしてくれます。。。

 

拷問の傷が癒えないなか、過酷な労働を強いられるヤンソン。

生きなきゃ、お父さんの代わりに、お母さんとタミを守らなきゃ。しかし、意識をなくし、倒れてしまう。

 

ヘリョンの母は、精神が不安定になっているらしく、ヘリョンを見てもヘリョンと気づかない。

 

備忘録の中に、糊付けしたページを見つけたソンヨル。

母系 王才の意志 守護鬼 これこそが 長年求めていた秘策。

※王才=王にふさわしい才能

そして、ソンヨルは、クィを倒すには、自分と 王になるべきユンと、もう一つ「母系」の力が必要だと気づく。

 

奴婢となったヤンソンを、私婢にする手続きをとるよう、ソンヨルに命じられたホジン。

死にかけている娘に大金を支払うなんて、と役人に呆れられる。

ホジンが、ヤンソンを抱え込んでくる。

自分の血を満たした湯の中で、瀕死のヤンソンの傷を治療するソンヨル。


母を訪ねるユン。

ヘリョンが、淫乱書生と信奉者の位牌を前に追悼の礼を行っているのを見て、きつい口調だで 何をしているのか、と問いただすユン。

「逆賊の供養を?それが、どれほど危険な行為かわかっているのですか?」

「非業の死を遂げたものと 遺族の無事を願うことは罪なのでしょうか?」

私がお願いしたのです。手伝ったために、とばっちりを喰ったわね、ごめんなさいね、と ヘリョンに声をかける母。

 

改めて、母と話すユン。

「あの者たちは、サドン世子様の遺志を継ぐ者とききました。」

「母上は、父上の遺志をご存じなのですか?」

「あなたは知っているのですか?」

「知っています、その遺志を受け継ぎ・・・」

「お待ちなさい。まさか、あなたが淫乱書生なのですか?違うと言いなさい。言ってはなりません。」

母にだけは、長年夜も眠れず、辛いという胸の内を打ち明けるユン。

それを、表で、立ち聞きしているヘリョン。

父 領相のいうとおり、世孫が淫乱書生だったことを知る。側近が、このまま この寺に通うのは、世孫嬪選びの際、意図的に近づいたと疑われると注進する。

 

意識を取り戻すヤンソン。

行かないでください。もうしばらく、私のそばにいて。学士様、あなたが好きです。愛しています。

私もだ、と心の中でつぶやき、口づけをする。

私にできることはここまでだ。お前と結ばれる未来は来ない。

なぜ?

それは、いつの日か、お前も知ることになるだろう。

朦朧とする意識のなかで、傍にいて、と繰り返すヤンソン。

 

耽羅(済州)への船便を用意するよう、ホジンに命じるヤンソン。

「無学な私にも、旦那様がヤンソンを好いていることはわかります。120年もの間、辛い日々を送られたのです。そろそろ幸せになってもいいのでは」と進言するが、クィを殺すという志を遂げたら、人間界から去る自分にその資格はないというソンヨル。

 

チョ・センの供養に寺にきたコップン(センの夫人)が、僧との会話から、いままで、夫が他の女に産ませた子供だと思っていたヤンソンが、血のつながりがなく、仕えていた世子の側近だったソ・ジョンド大監の娘だったことに気づく。


妹と再会するヤンソン。

ごめん、お父さんを守れなかった

何言ってるの。お姉ちゃんのせいじゃない。これからでも、耽羅(済州)にいって、お母さんと一緒に暮らそう。

 

起き上れるようになったヤンソン。

「学士様にお会いしたいのです。」

ヤンソンには会わない覚悟のソンヨルを思い、ホジンが、口実をつくり、ひきはなす。

 

スヒャンを呼び止める夫人(ヤンソン養母)

「ひとつだけお聞きしたいことがあります。わたしの主人が長年 供養してきたソ・ジョンドという方は 偉い方なのですか?」

「サドン世子様の側近をされていた方で、10年前、大逆罪を問われて殺されました。」

「父親が大逆罪人なら、子供もその罪を問われるわよね。」

なぜ、夫が血のつながらない子供を、自分の子供として引き取ったのか、理解する夫人。 

 

オモニ・・・

ヤンソンを平手打ちする母。

「なぜ、私がお前の母なの?血もつながっていないのに、そう呼ぶ理由はなに?お前が死ねばよかったのに。」

さすがに、スヒャンもホジンも、その言葉に驚きを隠せない。

オンマ、やめて、と泣いて懇願する妹のタム。

「私が・・・もうしわけありませんでした。」

「もう二度と、私たちのまえに姿を現さないで。この子は、私の子でも、主人の子でもない。あなたの父親の名前は、ソ・ジョンドという両班よ。逆賊の娘といれば、また、私たちは何かを失うことになるわ。」

 

気配を感じるユン。

ソンヨルが目の前に姿を見せる。

「お前は人間ではないのだな。」

「そうです。吸血鬼です。120年前、クィを倒す決意をされた貞顕世子のお側に仕えていたキム・ソンヨルと申します。長きにわたり、クィを倒す秘策を捜しつづけてきました。」

「見つかったというのか。」

「これです。母系 王の意志、守護鬼 この三つが秘策です。世孫殿下の力が必要です。」

王に呼ばれた世孫。備忘録を渡せず、戻るソンヨル。

 

どうした。

大事件です。血相かえたホジンが ソンヨルを呼びにくる。

 

オモニ、私はいきません。ですから、出発してください。

いやよ、一緒にいこう、と説得する妹のタム。

どうか 健やかに暮らしてください。いつの日か、お母さんの心が落ち着かれたら、会いに行きます。

タンと母をよろしくお願いします、と スヒャンに頭を下げるヤンソン。

ヤンソンが去ってしまうと、辛そうに目をとじる母。

 

新しい皇宮が、クィをとらえる本拠地となる。王が無理をしてでも、この計画を進めてきた意図を知るユン。

「備忘録がなくても、クィを倒せると?」

「志の問題だ。もう 備忘録のことは忘れよ。狩りの道具の準備ができれば、あとは 狩人の出番だ」

 

騒動を知り、屋敷に戻ったソンヨルは、ヤンソンの行方を探す。

 

~地下皇宮~

「世孫は、王になれますか?」

クィに尋ねるヘリョン。

「私の父は、世孫が淫乱書生だと言っています。」

「万が一、そうであれば、玉座は渡さぬ。俺を殺そうとしたものを王にはできぬからな。そんなに不安か。どうした?もう、世孫の心配か?」

「私は、別に世孫が王になれなくても構いません。誰であろうと、私が次の王の王妃になれればいいのです。辛い日々の中で、決意したのです。母と私を捨てた父よりも、もっと力を持つ、」と。

 

一方、クィはヘリョンに200年前に死んだ恋人の話を明かす。

お前をみていると、ある女人を思い出す。

お前と同様、賢くて、野望を抱いていた。

恋人だったのですか

愛していた。はじめて 人間に恋をした。

その後、その方は?

私が 彼女を殺した。仕方がなかったのだ。許可なく、俺の子を産んだのだ。吸血鬼と人間との間に生まれた子供は、吸血鬼を殺す力をもっているそうだ。

お子様はどうなりましたか。

とうに死んだだろう。200年も昔の話だ。

クィは、人間を愛する心を知っていたのね。

 

楽しかった家族の一日を思い出すヤンソン。

ヤンソンを追いかけるソンヨル。生きる気力を失い、岩壁にたつヤンソンの手を取り、引き寄せる。

 

 

 

★第11話に続く★

ようやく、秘策が見つかりました。ドラマも半分過ぎたしね。

サドン世子は、秘策は人だと言い残していましたが、もう少し具体的に、母系・守護鬼・王の意志、という3つのキーワードが手に入ったことになります。

 

なにが驚いたって、クィが人間の女性と恋に落ちたことがあるっていう事実!
秘策のうちの「母系」の源が、その子供ってことでしょう。いつの日か、クィを殺すために、秘密裏に血を絶やさないよう、つとめてきたってことですね。そこに、クィに屈服せざるを得なかった人間の弱さや後悔、そして未来に託す意志を確かに感じます。

クィが、ミョンヒやヘリョンに対して、失った愛情の代替を求めているのかと思っていましたが、ヤンソンの「血の香り」に、あれだけ固執してみせたのは、愛していた彼女に直結していたからなんですね。納得~~~。

 

ユンの辛さもさることながら、ヤンソンの受難には胸にきます。

何にも悪いことしてないのにね~~~。

ソンヨルがついていなかったら、と思うと、ホント、それだけでも救いです。

 

ユンは自分の無能さが 相当こたえたと見えます。自分のために失った命、たとえ生き残ってもこれから背負っていくであろう苦しみ、自分に力をつけるまでは、クィに従属したふりをすることに決めたようです。これはこれで、ユンのような清廉潔白な種類の人間には、辛い選択です。

 

ええっと、お母さん(ヤンソンの養母)は、わざと冷たいふりをしたという解釈でいいのでしょうか。ドラマ当初から、ヤンソンに辛くあたっていましたが、もともとの性格もきつそうだし、センが外につくった娘だと10年前にいきなり、連れてきて育てさせられ、自分の娘は足が悪い・・・とあっては、優しいふりなんかできなかったとしても、多少理解はできますね。それにしても、きっついお母さんだな、とは思ってましたが。

悪態つきながらも、なんだかんだ、家のことはお母さんがこなしてたんでしょう。次回、ヤンソンは家事一切できないことが暴露されます。もちろん、父の代わりに 外で稼いでくるのはヤンソンっていう役割だったのだろうけど、それにしたって、ただの悪い母親には思えないんだよね。。
なにしろ、獄につながれたときには、主人と娘を助けてくれ、ってはっきり、ソンヨルに哀願したんだし。。。

最後、辛そうに目を閉じてたし。。。センの娘だと思えばこそ、育ててきたのにっていう気持ちもあるだろうけど、血のつながりが全然ないっていうことがわかっただけで、あそこまで否定するかな。それとも、ヤンソンのせいで、センが死んだんだって、中途半端な理解をしてるのかな。ちゃんとした身分の娘なのに、もう 自分たちの犠牲にはさせられないって思ったのかもという解釈は、意訳しすぎでしょうか?