先日、発表予定だった新作ホイールの発表を延期すると書きました。
それから一晩考えてみたのですが、そもそも開発段階だからといって隠し続ける必要がないとの結論に至りました。
かなりの革新的な発案だと思っていたものが大した事ではなかった事が確認されたのも、情報公開型にシフトするきっかけにもなってます。
って事で、スゴイと思ってた新規の組み方ですが、
「 3563組 24h 」です。
こちら(組数)の手組み講座を読めばお分り頂けると思いますが、この「3563組」を理解するにはリム組数とハブ組数を分けて考える考え方が必要になります。
フリー側ハブ組数 3
フリー側リム組数 5
反フリー側ハブ組数 6
反フリー側リム組数 3
で組まれる組み方で、左右異組組(一般通称 左右異数組)の組み方です。
はじめにこの組み方が可能かどうかの解説をします。
使用パーツはリム/ハブ共に24hのものを使います。
結論から言うと可能です。位相ズレも起こりません。普通の考え方でいうと、奇数組(僕に言わせると ハブ側奇数組)は不可能なはずです。さらにいうと、リム側3本組が普通、、、というか、リム側のスポーク到達点の位相はズラさないのが普通の考え方の中でリム側5本組は大変おかしく思えますが、これも可能です。
フリー側のみで見た時のスポーク配置は上図のようになります。反フリー側は63組ですので、つまるところ普通の6本組です。
上図は35組を描き表していますが、この組み方は27組と43組をミックスさせた組み方と見ることもできます。しかしそれは組数の可変見性で変換された時の形なので、そう見えるのは当然です。
少なくとも僕はこの組み方をこれまでに見た事がないので、おそらく僕が考案した組み方といてもいいと思っているのですが、問題はこの組み方で僕が何をしたかったのか、です。
こちら(スポークテンション差)の記事で「ハブ垂入射角」という概念を解説しました。ハブ垂入射角とは、上図でいうオレンジや緑の矢印に入射する赤や青のスポーク軌道の入射角度のことです。
僕は当初、この角度が大きくなれば駆動剛性が向上すると考えていました。しかし、この角度を追求すると、211組の方が63組より良い値を叩き出します。211組と63組は可変見性を用いればすぐに同一の組み方だと判断がつきます。これはすぐに分りました。だから「ハブ側の組数を最大限にしてハブ垂入射角の比較をする」と決めていたのです。(最大でも最小でも構いませんが、どちらかに統一する事が大切)
35組の場合はハブ組数の最大値は 4本組 ですが、4本組を最大値として捉えると27組の方のペアは考えない事になってしまうので、平均値、、、というか「全てを同一に見る事ができるハブ組数の最大値でハブ垂入射角を比較する」と比較基準を変更しました。ハブ垂入射角を比較する点では、この基準は今でも正しいと言えます。
この比較基準ですと、35組は素晴らしい駆動剛性指数を叩き出します。
上の表の青の折れ線グラフは各組数ごとの駆動剛性を数値で表現し、グラフ化したものです。緑の棒グラフはあとで解説します。
左から、35組 6本組 4本組 2本組 となっています。4本組から6本組の差が僅かだと思えるほど飛躍的に駆動剛性指数が向上しています。実際は綾の取り方や数によっても変化しますのでこのグラフが絶対正確ではありませんが、この差は凄まじいものがあります。
左右のテンション差を考えた結果、フリー側に35組、反フリー側に63組(普通の6本組)を採用するのが良いとわかったので、3563組が誕生しました。
このグラフは、ホイールの組数ごとの各数値を表しています。青の折れ線は駆動剛性指数、緑の棒グラフは左右スポークテンション差の是正具合を示しています。
なんの組み方の結果かと言いますと、左から、
左右4本組 (ヨンヨン組 4343組)
左右6本組 (ロクロク組 6363組)
フリー側4本組 反フリー側6本組 (ヨンロク組 4363組)
フリー側35組 反フリー側63組 (3563組)
以下略
と、なっています。
左右で同じ組みで、スポークテンションの是正効果がゼロである事に疑問はないでしょう。のむラボのヨンロク組はそれなりの是正効果があるように見えます。ちなみに左から6番目の一番是正効果の高いものが1163組、フリー側がラジアル組の通称イソパルスです。(反フリー側は6本組ではなかった気がしますが)
この表で見ると、僕の考案した3563組は、のむラボのヨンロク組とほぼ同等の是正効果を持ちつつ、青の折れ線から分かる通り、かなり駆動剛性が高くなっています。言ってしまえば、ノーリスクで剛性向上に貢献しているわけです。これは手組みホイールの革命です!!
、、、、はい、こんなに素晴らしい発表ができると思っていたのです。(勿体ぶるのもわかるでしょ 笑)
しかしそれほど素晴らしい発案でもないとわかったという事は、以上の考え方の何かが問題だという事が確認されたという事です。。
まぁ、少し冷静になれば分かるものですが、上記の考え方に慣れきってしまうとなかなかその発想から抜け出せないものです。
何が問題だったのかというと、そもそもハブ垂入射角で駆動剛性指数を測ろうってのが間違ってた、、、というなんとも情けない事なのです。
これまで、スポーキングにより変化する駆動剛性の指標は様々なものがありました。「組数が大きい方が駆動剛性は高い」という人もいましたが、「ハブフランジ接線にスポーク軌道が近い方が駆動剛性が高い」がほぼ通説でした。
僕が考えていた「ハブ垂入射角が大きい方が駆動剛性が高い」という考え方は以下の考えに基づいていました。
「駆動剛性指数はスポーク軌道がいかにリム円周と近しいかにのみ左右される。そして、リム円周との近しさはハブフランジ接線との近しさではなく、ハブ垂入射角によって決定されるため、同じフランジ接線近しさでもハブ垂入射角が異なれば駆動剛性指数は異なる事がある。だから駆動剛性を測る時はフランジ接線との近しさではなく、ハブ垂入射角を考えなくてはいけない。」
こんな感じなんですが、多分意味不明だと思うので意訳します。
と、こーゆー事なんです。一見もっともだと思いますし、実際言っている事はあっています。
しかし、問題は、角度の基準となる垂線をどこから引くか、、、なのです。
はい。リム組数が変わらない範囲だと基準となる垂線の位置はどーでも良かったのですが、リム組数が変わると話は別です。現に上の図ではリム円周との近しさはほとんど同じなのに、ハブ垂入射角は全く異なったものとなっています。
色々と考えた結果、スポーク軌道とリム円周との近しさを一番正確に表現できるものがわかりました。これでスポーク軌道による正確な駆動剛性指数が判断できます。
「スポークのリム到達点からホイール中央へ引いた線に対するスポークの入射角」
つまり↓こーゆー事です。
この角度により駆動剛性指数は変化します。恐らくこれは正しいでしょう。そんで、便宜上さっさと角度の名前をつけるのですが、「リム垂入射角」にしました。由来は、スポークの到達点と交わるリム接線とホイール中央への垂線への入射角、、です。角度はスポーク長とERD、P.C.D.を使って、余弦定理から算出できます。(もっと簡単な算出方法もあるかもしれませんが僕は余弦定理が好きなのです。)
そんで、この新基準で先ほど革新的だと主張した3563組を見てみると、駆動剛性に関してはヨンロク組と一緒です。そして、先ほど言った通り、テンション差是正能力はヨンロク組から微減です。
左右同じ組み方のものからは良くなってますが、ヨンロク比だと若干の改悪です。僕としては「打倒ヨンロク」が最終目標なので、当然これではダメです。
ちなみに、ハブ垂入射角が大幅に増加し、縦張合力が大幅に低下した35組で左右スポークテンションの是正度が大して下がっていないのは、実効ERDが短くなりハブ横射出角が減少し、その分横張合力が向上しているからです。
と、色々ありますが、とにかく気になったものは組んでみろ!と思い、組んでみました。
少し長くなったのでこれについては次回。。
何日かに分けて書いてるので適宜補足などします。