実家の家族と温泉旅館に泊まっている訳なんですな。
温泉ですから、大浴場に行きます。
そしたらですねえ。失われているんですよ。日本が。
日本の文化が、ですよ。ええ。
脱衣場行きますなあ。
服脱ぎますなあ。
洗い場行きますなあ。
からだ洗います。
お湯かけましたあ。
湯槽浸かります。気持ちええなあ。
ゆったりします。
目えつぶります。
なんなら寝てもええなあ。
ーーのところで、60歳くらいのおっちゃんが、「ザブザブー」ゆわして入ってきたわな。
片目あけてみてたら、タオルかっさかやんか?
テメエ、脱衣場から直できたなと。
いろいろ洗うべきものは、どうしたんだ!
いま、じわじわと半径2mに広がるものがあるだろうと。
日本の文化はこれでいいのかなあ。
寂しいことよなと、瞑目しました。
それはそれ。湯に没入しましょう。
首まで浸かって……。
つってるときに、違うオヤジが頭の横を通りしな、「ジャブ、ジャブ、ジャブ」ゆってタオルを絞って行きよった。
顔にかかる、顔にー!
もー!
てめえら全員、血の池地獄で溶岩流に浸かりやがれ!
ーー気をしずめて。
温まりました。
露天風呂浸かりました。
ライトアップされた木立眺めました。
自然のなかにいる自分、感じました。
しみじみとーー。
風呂上がりましょ。
「ガラガラー」ゆうて、こども走って入ってきます。
あぶないよー、小さい声でいいます。
でも、嘘です。
内心は、
「転べーーっ!!!」
叫びました。
ーー転びませんでしたな。
本日、正しい大浴場の入り方が超時空文化遺産に指定されました。
これはすべて実話である。