印象
偸安の念
炉辺の幸福
なつかしい玉子焼の色、みかんの橙色
それを打ち破る滔々たる夜の漆黒
太陽光の届かない夜の色
妖婆、アグニの神、運
神懸かり、神降ろしの、蟇のような老巫女
母
婆娑羅、アグニ
観音
女の涙
エゴイズムのない愛
さわやかな愛
一人の人間にもたれかかるたくさんの人々
それをつくる醜い偸安の念
人間の薄暗い、抑圧された欲
エゴイズムは悪だろうか?
野性、殺しても生きる力、弱肉強食の、他方での爽やかさ
自分ばかりを恃むひとたちなら、そのほうが爽やかではないか?
生は爽やかでありうるか
清涼たる火花
そのために生活を犠牲にすることはただしいのか
清涼たる花火を作れるのか→戯作三昧、地獄変
ただ待つ・与えられる・見るしかないのか→尾生の信、舞踏会、蜘蛛の糸、好色
可能性の垣間見と、転落するしかないカンダタ
地へと向かう?折れた梯子
自己解放を希う痛々しい叫びと、どうしようもない弱さ醜さ
秋
自分を犠牲にして、身を引いて、奪い合いの醜さから逃げること
そのあとに感じる寂しさ
裏口から戻ってくるエゴイズム
さまよえる猶太人
贖罪も独りよがりではないか
生きるために仕方なくすること
恨むまいな
あばばばば
保吉は女を後ろにしながら、我知らずにやにや笑ひ出した。女はもう「あの女」ではない。度胸の好い母の一人である。一たび子の為になつたが最後、古来如何なる悪事をも犯した、恐ろしい「母」の一人である。この変化は勿論女の為にはあらゆる祝福を与へても好い。しかし娘じみた細君の代りに図々しい母を見出したのは、……保吉は歩みつづけたまま、茫然と家々の空を見上げた。空には南風の渡る中に円い春の月が一つ、白じろとかすかにかかつてゐる。……
恥じらいと居直り
先生が死んで、しかし尚且気の軽くなるのを感じる
真っ白な蓮華