シュロスバーグは、人生上の転機(トランジション)やその対処法である4Sシステムを提唱した人物である。特に高齢期や成人期に関心を持っており、実証的な研究を行っている。
トランジションを成人の様々な人生上の出来事として捉え、急速に変化する社会において、人生において何が起こっているのかを探索し、理解し対処できるようになることが、カウンセリングを行う上でも重要である、としている。
トランジションとは?
発達段階の移行期としての「トランジション」
発達論的視点による見方で、発達段階には共通した発達課題や移行期があることを意味している。人生やキャリアは、安定期と移行期の繰り返しであり、ライフ・サイクルという連続性のなかで捉えようとするものである。
人生上の出来事の視点からみた「トランジション」
発達段階の移行期とは異なり、結婚や離婚、引っ越しや転職、病気といった、個人におけるその人独自の出来事として捉える視点である。このトランジションは、自分の役割、人間関係、日常生活やマインドを変えてしまうような人生の中の「転機」として捉え、その対処に焦点を当てている。
2つの意味があることを抑えておきましょう
転機の分類
シュロスバーグは、転機を3つに分類している。
①予測していた転機
②予測していなかった転機
③期待していたものが起こらなかった転機
理論的背景
成人の発達を捉える4つの視点
トランジションは、個人個人の視点によっても、捉え方が異なる。人は様々であり、その人ごとに経験する出来事は異なっているという見方ができる。シュロスバーグは、これらの視点を4つに整理している。
①コンテクスチュアル(文脈的)あるいは、
カルチュアル(文化的)な視点
②ディベロップメンタル(発達的)な視点
③ライフ・スパンの視点
④トランジション(転機)の視点
カウンセリングを行う場合にも、どの視点に立つかによって、クライエントの状況の捉え方、アプローチの方法は異なってくる。シュロスバーグは、4つの視点はまったく独立したものではなく、相互に関連し合うものと述べている。
キャリコンの学科試験でも出題がありえます。細かい部分ですが覚えておきましょう
また、シュロスバーグは、
「人は生涯を通じて様々な転機や変化を経験する。この転機や変化は、決して予測できるものでも、人生途上誰もが共通して遭遇する出来事でもない。人それぞれがその人独自の転機を経験している」としている。
転機を乗り越えるための資源(4S)
様々な転機はあるが、重要なのは、出来事そのものではなく、それをどう受けとるか、それにどう対処していくかである。また、どんな転機でも、それを見定め、点検し、受け止めるプロセスを通じて乗り越えることができるとしている。その資源が4Sである。
Situation(状況)
引き金、タイミング、コントロールの状況、役割の変化、期間、過去の経験、ストレスの程度など。
Self(自己)
年齢や性別、社会的地位、健康状態、人生段階、民族性 など。
Support(周囲の援助)
望んでいる好意、肯定、助力を得られているか。
広い範囲で援助を受けられているか(配偶者、パートナー、家族、友人、同僚、同業者
組織、個人、団体)、周囲の援助をどう感じているか など。
Strategies(戦略)
状況を修正するような働きかけ、問題に持っている意味を変化させること、ストレスに対する対応。シュロスバーグは、次の問いへの答えがクライエントの対処の仕方を評価・診断するのに有効だとしている。
〇広い範囲の戦略を使っているか。
〇ときどきは、転機を変化させるような行動を取っているか。
〇ときどきは、転機の意味を変えるように試みているか。
〇ストレスを楽々と切り抜けるように試みているか。
〇何もしない方が良いときがどんなときか知っているか。
〇目の前の課題に応じて、柔軟に戦略を選択できると感じているか。
〇これらをすべて考慮した上で、戦略の程度はどのくらいか。
4Sはシュロスバーグの重要なキーワードです。確実に覚えましょう
カウンセリングへの応用
カウンセリングを実践する際にも、4Sに基づくアプローチは非常に有用である。実際、コーミアーとハックニーにより、カウンセリングの開始から終結に至るまでのプロセスがモデル化されている。
カウンセリングプロセスのなかでは、クライアントの状況により変化していくが、個人の援助に対して非常に有効なものと言える。
キャリアコンサルタント以外の対人援助職にも参考になるモデルだと思います
参考)キャリアコンサルティング理論と実際 5訂版 (木村周)