タバコを吸っていたら部下Aが話しかけてきた。
「何故、友達の結婚式に白い服を着ちゃだめなんですかね?」
「なんだよ、いきなり。いやぁ…それはまぁ、常識だから」
「僕ぁ そういう意味のないしきたり?というか因習、嫌いなんですよねぇ」
「…そうか」
「二人の門出を祝いたい!その気持ちがあれば、本当は服装だって自由でいいと思うんです。
まして色にこだわるなんて意味ないし」
「それでお前は白いスーツ着て行くつもりなのか」
「いや、僕じゃないです。彼女が友達の結婚式に行くんです」
「…まさか、白いワンピースとか薦めたんじゃあるまいな?」
「はい。既成概念にとらわれるな!と」
「アナーキーな奴め。長生きできないよ?」
「…結局喧嘩になって…あの、間違ってますかね?」
「はぁ?むしろ正しいところが一つも無いようだが」
「うーん。別に構わないと思うんですけどね~今時」
「…白いドレスは花嫁以外 着ちゃ駄目。これが常識だ」
「ですから、その理由が…」
「うるせーばか。常識に理由なんてない!ぶんなぐるぞ?」
「そんな御無体な」
「『嫁ぎ先の色に染まるため』とか、『結婚式はもともと神様に嫁ぐ儀式だった』とかいろいろな説があるが、今はそんなことは
どうでもいい。」
「え?」
「結婚式では白い服は避ける、というマナーが一般に認知されている以上、それを破るというのは『非常識な行為』というこ
とになるんだ」
「はぁ」
「非常識な行動にはそれなりの『覚悟』というものが必要になる」
「…」
「それは、『こんな式ぶち壊してやる!ぐふふ』 というテロ行為と同列の覚悟ということだ」
「いや、そんなおおげさな…」
「おおげさ? 『友人の結婚式に白い服を着ていく』という事は、もっと大きな問題が隠れてるんだが、わかるか?」
「…いえ」
「その子の周りには、それを咎めるような人間が誰もいなかったということだ」
「…」
「事前に相談する友人や親兄弟、親族まで誰一人として『それはやめとけ』という常識人がいない…
…そういう環境の中で生きてきた人間だと見なされる事になる。本人があきらめてなくても試合終了だ。」
「…あの…ちょっと電話してきていいですか?」
「もちろん駄目だ。業務中に私用電話は認められない。常識だろう?」
「そこをなんとか…」
「駄目だね。他人のイザコザはいつ見ても心が洗われるからな~」
「非常識だなあんた非常識だ」