分身型の生成 A I の主戦場は、「2次元」の画像や動画から立体的な「3次元」の世界に拡大しつつあります。

 

 6月下旬、天津市などが主催した「世界知能産業博覧会」。様々な生成 A I 技術やサービスが並ぶ中、人型ロボットがひときわ注目を集めていました。身長166㌢で性別は女性。医療用品質の人工皮膚が使われ、顔や手、腕の部分は人間の肌とほぼ同じ質感に感じられます。

 

いくつかの質問をしてみますと、「私の名前は『小7』です」「女性に年齢を聞いてはいけません」などと、まばたきしながら唇や頬をにこやかに動かし、身ぶり手ぶりを交えて答えてくれます。動きにややぎこちなさが残るものの、服を着れば遠目には本物の人間と見分けがつかないリアルさです。

 

遼寧省大連市にある開発企業の拠点を訪れると、展示スペースには様々な人型ロボットが30体前後ならんでおり、アインシュタインやスティーブ・ジョブズなどの動く姿が確認でき、担当者は「いずれ私たちの家にも配置され、家事や仕事を手伝ってくれるだろう」と胸を張って話します。

 

 中国政府系の研究院の予測では、中国の人型ロボットの産業規模は26年までに2000億元を超えます。また、生成 A I 技術の爆発的な普及で、「人型」は将来的に予想を超えた成長を遂げるとの見方もあります。

 

「人間に危害を加えてはならない。」1950年、SF作家アシモフが提唱したロボット工学3原則は、ロボットの暴走を防ぐため各国の研究開発現場で重視されてきました。

 

一方で昨年秋、中国版ロボット原則といえる人型ロボットの開発指針が策定されました。「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を導きとし、人型ロボットの「脳」を開発、人間と機械の相互作用の能力を強化すると定めており、生成 A I が自律的な意思を備えつつある今、アシモの原則は有名無実化しつつあります。

 

 10年後の AI開発は人間と同等の知能を持った「AGI(汎用性人工知能)」が主流になるとの見方があります。科学技術だけでなく文化や国家運営にまで影響を与える懸念が拭えません。

 

大阪大社会技術共創研究センターの赤坂亮太准教授(情報法・ロボット法)は、「強権国家の国家指導者にとって、自らの体制を維持し続ける手段になる懸念がある」と指摘されています。秩序なき進化がもたらすリスクは計り知れません。

 

< 生物は22世紀を迎えますが、はたして人類は迎えられるのでしょうか?。>