設問1
1 Fとしては、平成17年10月20日のBD間の抵当権設定契約の否認(民事再生法(以下、民再とする。)127条3項)を主張することが考えられる。
(1)まず、Dは平成18年4月14日に再生手続開始申立てをしており、これは「支払の停止等」(民再127条3項)にあたり、平成17年10月20日は「その前六月以内」にあたる。
(2)そして、Dは物上保証の際、保証料を受け取っておらず、「無償行為」にあたり、無償行為否認の要件を満たす。
2(1)これに対し、Bは無償性は破産者のみならず相手方についても必要であり、「無償行為」にあたらず否認できない、との反論が想定される。
この点、無償行為否認が緩やかな要件で認められるのは、再生債務者にとって無償な行為は有害性が強いからである。
とすれば、有害性は再生債務者にとって存すればよいと考える。よって、Bの反論は妥当でない。
(2)としても、Dは抵当権が実行されれば、求償権を取得する(民法372条、351条)ところ、これをもって有償といえる、との反論がありうる。
しかし、求償権は、抵当権実行という物上保証人の財産的出捐に対して公平の見地から与えられるものであり、抵当権設定行為の対価として与えられるものではないから、求償権を取得することをもって抵当権設定行為が有償であるということはできない。
3 以上から、Fの否認の主張は認められる。
設問2
1 Eは破産法(以下、破とする。)160条3項に基づき、Cの保証行為の否認を主張しているものと思われる。Cは平成18年3月3日に破産手続開始申立てをしており、これは「支払の停止等」にあたり、保証行為のなされた平成17年10月20日は「その前六月以内」にあたる。
2(1)ここで、Bとしては、CがAの代表者であることから、Cの連帯保証によりAが借り入れを行うことはCにとっても利益があり、有償性がある、との反論が考えられる。
(2)これに対し、Eは、Cが同族会社といえども、代表者と会社の法人格は別個の法人格であり、代表者の受ける利益は事実上の利益にすぎないとして有償性はないと再反論することが考えられる。
(3)この点について、Cに有償性が認められるか否かは、Cが代表者であること以外の事情も考慮した上で個別具体的にCに実質的利益があるかを判断すべきである。
本件で、CはAの株式の70%を保有している上、代表者であり、かつAの業務を全面的に執り行っていたことや、AとCが同日に破産手続きの申立てを行っていることからCとAは経済的に密接な関係にあったといえる。
また、Aは資金繰りが悪化しており、借入れをする必要性が高かったが、BからCの連帯保証がなければ貸すことはできないと言われていたことや、Cは代表取締役としてではなく、個人的に高校時代の友人であるDに連帯保証と物上保証を頼んでいることから、Cは連帯保証によりAに資金を得させることで、実質的な利益を得たといえる。
3 よって、Cの保証行為には有償性が認められ「無償行為」にあたらず、Bの反論が認められ、Eは否認できない。
以上