たくさんの記憶があるはずなのに

思い出そうとすることも億劫だから

忘れてしまった振りの身勝手な決心に

安心しきったような解けない暗示をかけて

可笑しな現世利益的説法との契約に署名

有難いお守りやお札を全身に貼り付け

毎日の儀式や儀礼を通じて自らを洗脳する


別にそれで満足できるんだったら

自由に好き勝手やれば良いんだろうが

限定的な想念の世界の見せ物としての奇跡

心を奪われて行く程に慢心へ導く恍惚が

人生を終える時もしくは終えた後にこそ

もしや取り返しのつかない過ちであったかと

絶対的な静寂の中に響き渡る恐怖と対峙する


本当の理由であるとか起き得るべき結果を

丸い線で辿って繋いでぐるりと描いたら

自分を愛する為に立ちはだかる数々の体験

それらに一切酔いしれる事も無く素面の眼で

どこまで深奥に到達する事が出来るかと

淡々と省みる観察者としての実現欲求

たった一人切りの戦いであろうとしても

私が望みこそすれば凡ゆる他者は自らの友か


失敗を恥じようが

決して卑下せず

苦しさに抉られようと

太陽の下を歩き

月の下で笑い

星の下で眠る

そんな私という存在を


何よりも愛していたいはずなのだ