仕事あと保育園に息子を迎えに行く。
下駄箱で靴に履き替えている時に息子がうつむいたまま


「今日、エーン、エーン」と言った。


「今日、泣いちゃったの?どうして泣いたの?」と聞くと、
偶然通りかかった担任の先生が


「おやつの時にお菓子を転がして遊んでいるのを先生に怒られちゃったんだよね」
と優しく笑いながら教えてくれた。


「そっかぁ、お菓子で遊んじゃいけないね。泣いちゃったかぁ...」


と言った途端、ママの目から涙がポロリ。


息子が少し驚いてママの顔を見上げる。


今日ママは仕事がとてつもなくうまくいかなくて、自分の不甲斐無さに泣きそうだったのだ。その顔をマスクで隠して息子を迎えに来た。


息子の顔、担任の先生の顔、保育園の日常の温かさ、そして「泣いちゃった」という言葉に、ママの緊張の糸がぷつんと切れてしまった。


幸い先生もすぐに通り過ぎて他に人もいなかった。
ただ一人、ママの涙に気づいた息子にはエヘヘと笑ってごまかして、いそいそと駐車場に停めた車に戻った。


車に入ると息子がねんね(寝る時、泣く時、車中、ファスナー部分を握りながら息子がくるまっているフリース生地のジャンパー)でフワリとママを巻いてママの背中を優しくトントンしてくれた...

「ママ、エーン、エーン」



・・・

ずっと守ってきたのだ。


息子のことは。


落とさないように、怪我させないように、風邪ひかせないように。初めて靴下を履かせた時はそのゴムで息子の足の指が折れやしないかとハラハラした。


だけど大好きなねんねをママに巻きそっと抱きしめて背中をトントンしてくれる...


守られている。


フワリと溢れた別の涙のせいで
ママの視界のピントが緩んだ。



・・・

翌日、迎えに行った保育園の下駄箱で、息子はママを見上げて笑顔で


「今日、エーン、エーン、なーい!」


「ほんと?ママも今日、エーン、エーン、なーい!」


それから二人で笑いながらパチンとハイタッチした。