このブログでは、主に,近代史なかでも第二次大戦についての作品について書いていこうと思う。

そして、今回初めてのブログは、WOWOWで放送された「ザ・パシフィック 」(原題:THE PACIFIC)を取り上げる。
PACIFICというと太平洋・・どことなく南の楽園の楽しいドラマを連想するタイトルだが、内容は180度違って「地獄」が描かれたドラマである。

まずは番組HP のイントロダクションより。
「『ザ・パシフィック』は、第二次世界大戦の太平洋戦線を舞台に、3人の海兵隊員の体験を実話に基づいて描いている。製作総指揮は、トム・ハンクス、スティーヴン・スピルバーグ、ゲーリー・ゴーツマン。
2002年にWOWOWで放送された『バンド・オブ・ブラザース』でエミー賞とゴールデン・グローブ賞を獲得したゴールデン・トリオだ。この超一流メンバーが再び手を組み、
TVドラマでは桁外れの総製作費200億円を投じて、戦場の最前線を繊細かつリアルに映した傑作を生み出した。」(WOWOW PACIFIC HPより)


製作にスピルバーグとトム・ハンクスがかかわっているのも驚きだが、
制作費200億円も驚きだ!日本の作品には到底まねできない額である。

まず、このドラマを見た感想だが、リアルな戦闘シーンに度肝を抜かれる。
CGも使っていると思うが、かなりのシーンはちゃんと火薬を使って
実写で撮られているに違いない。

ストーリーは太平洋戦線の海兵隊員から見た戦争であり実話である。
ドラマでは全体の戦況などの説明は一切なく、戦場がどこにあるのか地図が表示されるだけ。
少し説明不足からもしれませんが、現場の兵士も直前までどこに行くのか知らされていないようなので、それが逆にリアルだったりする。

舞台となった戦場はいずれも激戦地で、
ガタルカナル島、ペリリュー島、硫黄島そして沖縄。

ご存知のとおり、これらの島々での結末は日本軍の玉砕で
幕を閉じるが、戦闘後の凄惨な現場、おびただしい数の死体が残る。
結果的に地獄を見ることになったのは勝利した米軍の方だった。

このドラマは3人の兵士のストーリからなっているが、
中でも一番印象に残ったのは「スレッジ」のストーリーだ。

主人公のスレッジは体が弱く、入隊さえもままならなかったのが、
入隊すると、いきなりペリリューの激戦地に送られることになる。
その激戦を掻い潜り、沖縄ではすっかり強い兵士になっていた。
きっと、やらなければやられるということが身についたのだろう。
敵を見ると躊躇なく発砲する。そして、万歳突撃してくる日本兵にも
冷静に、そして非情に対応していた。
それは上官や仲間の死によって敵(JAP)への怒りと、
民間人を盾にしてまでも攻撃してくる敵の卑怯さにも怒りが
増加していく。
戦争体験でよく聞くのが、「最初は(人を殺すことが)ためらっていたが、
だんだんなれてくるとなにも感じなくなる」ということだが、
まさにスレッジも戦闘を重なるにつれ、そうなっていったに違いない。
また、戦争では、一人でも多くの敵を倒すことが英雄とされていた。
彼もその理屈どおり、時には命令に背いてでも、多くの敵を殺してきた。
そんなスレッジも沖縄戦も後半で、心境の変化が現れる。
ストーリーの中で、もっとも印象的だったのは、
砲撃された家から赤ん坊の泣き声が聞こえてきて
見に行ったシーンである。

そのとき、スレッジは初めて気づかされる。
戦場の中の人間、死、そして愛。
人々の生活の中で行われた戦争によって、罪のない多くの民間人が犠牲になっていくことを。

彼はその時、失っていた人間性を取り戻し、そのことに気づいたのだ。
原爆を落とした知らせを聞いて、米兵の中でおそらく彼が一番そのことを意識したに違いない。

このドラマはWOWOWで放送されたが、
このドラマがNHKおよび民放(キー局)では放送できないのだろう。
第一に、あまりにも凄惨なシーンが多すぎる。
第二に、アメリカ兵から見た日本人は完全に敵なので、
残酷に殺されるシーンが多く
日本人(特に遺族)の感情を逆なでしかねない。
編集すればなんとかなるかもしれないが、そうするとかなりのシーンがカットされることになり、
いびつな作品になってしまうだろう。

戦争は体験しないと、なかなか本質がつかめないと思う。
この作品を見て感じたことは、一兵士からの目線でみた戦争なので、かなり擬似体験ができる。
「百聞は一見にしかず」ということわざがあるが、まさにこのことだ。
100人に「戦争はだめだ」とか「絶対にやってはいけない」と
聞くより、このドラマを1回(シリーズで)見れば
戦争がどんなにむごくて残忍で狂気の沙汰であるかよくわかるだろう。

戦争ほどいろいろな見せ方、それは敵、味方、政治、軍事、そのなかでも上層部と前線の人たち、等
があるものはないと思うが、このドラマはあくまで前線の一兵士からみた戦争である。
どうしても日本にいると日本側から見た戦争の映画やドラマしか
みないことになるが、こういった敵側(相手側)から見た作品を見ることも重要だと思う。

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