朝の日差しが、カーテンをすり抜けて薄い光に変わってきたころ、イズミはその光で、ううーん、と目を1回強くつぶってゆっくり起きた。目をこすると体を思いっきり伸ばしてあくびをした。服を着替えてランドセルを持って下へ降りるとお母さんが台所でトントントントンと包丁の音を立てて料理を作っていて、ラヴィ―ナは食器をテーブルに並べている。イズミは、おはようとあいさつをかけようとしたがその前にお母さんが後ろを振り向いておはようといった。イズミも、おはよう、というと眠そうな顔をしたキュランがやってきた。「おはよう」寝起きの声でキュランが言った。「おはよう」お母さんとラヴィ―ナとイズミが同時に言った。朝食が終わると二人は急いでランドセルをしょって靴を履いて、ドアを開けて、「いってきまーす」といって走っていった。途中まで来たら二人は歩き始めた。すると分かれ道の左側から、ナオが出てきた。「おはよう、ナオ」イズミが言った。

「おはよう。イズミ、キュランくん」「ああ、おはよう」ナオが言うとキュランはちょっとテレながら言った。そして再び三人は歩き出した。すると三人は何かの気を感じた。後ろからこっちへやってくるようだった。そのときドドドドドッと誰かが走ってくる音がした。後ろを振り返ると誰かがものすごいスピードでこっちへ向かってくる。「な・・なんかやな予感・・・・・」キュランがつぶやくと走っている人が土煙を立てて突進してきた。そしてキュランに思いっきりぶつかった。あまりの反動でキュランは気絶してしまい、イズミが文句を言った。「ちょっ・・・ちょっと!なにすんのよーキュランが気絶しちゃったじゃないの・・・・・・・って、あれ?ツバサ!?」そうぶつかってきた人はツバサだった。「ハアハア・・・ゴメン。そ・・・それより助けてくれ。追われて・・・・ハアるんだハアハア・・・」「追われてるって・・・・・・誰に?」ナオが言うとまたツバサの来た方向からものすごいスピードで誰かが土煙を出して走ってきた。イズミたちにはだいたい予想はついていた。「や・・・・やべ!じゃあな!」ツバサは脅えて走っていった。「まってえええ!!青木くーーんーー!!そしてそのあとに土煙が声を出して追いかけていった。イズミたちはただ目を点にして見守ることしか出来なかった。「南無南無・・・・・」イズミとナオが同時に手を合わせて言った。そのとき2人はキュランが倒れていたことを思い出した。そしてキュランを急いで学校へ運んでいった。


キュランは目を覚ますと自分は保健室のベッドで横たわっていた。「あら、起きたのね。」すぐそばにいた保健室の担当の先生が言った。「あれ?何でオレってば保健室で寝てんだ?」キュランが不思議に思って先生に聞くと先生はあきれた顔をして答えた。「アナタは気絶してて学校(ここ)に運ばれたのよ。なんか最初は大きなこぶがひとつ出来てたわねえ」「へえ、誰に?」「たしか、アナタと同じクラスの神野さんと青空さんよ」それを聞くとキュランはちょっと赤くなって、ふーん、と一言言った。ふと、保健室の壁に掛けられていた時計を見ると、もうお昼に近かった。「うわ!やべ~、そろそろ行かなくっちゃ!じゃあな、先生」「ああ!ちょっと・・・・・」先生が止めようとした途中でキュランは廊下を走っていった。教室につくとゆっくりとドアを開けた。だけど教室の中は誰もいなく、シーンとしていた。「・・・・・・・?おかしいな~今の時間は国語のはずなのになあ・・・・」後ろを振り返って小さな黒板を確認していてもこの時間は国語だった。そのとき、後ろから冷たい風がなびいてきた。


一方、イズミたちは国語の授業が終わって、保健室へ行った。

「え?だって、その子なら授業が終わる前に戻ったはずよ。」先生が言うと二人はすぐさま保健室を出て、

二手に分かれていった。

その途中でツバサとであった。ツバサはものすごく脅えた顔でイズミに早口で言った。「た・・・助けてくれ!またあいつに追われてんだよ!」「ええ、またー?もう一回幻術かければいいじゃん」イズミが言った。「それが・・・・もうあいつには効かなくなっちまったんだよ!」後ろから猛スピードでみかんが走ってくる。

イズミは1回深くため息をついて、一言言った。「助けられなくはないよ」「じ・・・じゃあ、はやく助けてくれ!」「分かったよ。じゃあ少し我慢してね」イズミがにこやかに言うと、ツバサは、え?といった。その瞬間、イズミはみかんの走ってくる方向にツバサを思いっきり押し倒した。みかんは押し倒したツバサに思いっきりしがみついた。「うわああ!止めろぉ!お前、騙したな!」ツバサが叫んでいった。そのときイズミはツバサに夢中になっているみかんを思いっきり殴った。もちろんみかんは気絶してしまった。「そういうことだったか・・・ったく」ツバサが言うとふたりはみかんを保健室に連れて行った。「せんせー大変なんです。さっき野山野さんがこけて気絶しちゃいました」そしてみかんをベッドにおくと2人は走って保健室を出て行った。そのあとイズミはツバサにキュランがいなくなったことを話した。するとツバサも一緒に探してくれることになった。

だが待ち合わせしていたところまで探したがキュランは見つからなかった。

「おかしい・・・・」「キュランがいなくなるなんて・・・・・」イズミの目がうるんできた。

そのとき、ツバサが二人に質問した。「おい。本当に全部探したのか?」「・・・・・・あ!体育館!」2人が同時に叫ぶと体育館のほうに三人は向かった。

体育館の大きな引き戸をゆっくり開けると体育館はシーンとしている。そしてステージの前にカーテンから漏れ出していた光が反射していて光っているものがあった。その光っているものの近くへ行ってみるとそれはペンダントだった。そのペンダントは鎖が切れていて、ふたが開いていた。あいているふたの中を見ると、キュランとドランとその両親が映っていた。「間違いない、これはキュランのだよ!」イズミがそういった瞬間冷たい風が吹いてきて、いきなり何者かが三人を攻撃してきた。その攻撃で三人とも気絶してしまった。


三人の意識が戻ると目の前は大変なことになっていた。

そこは自分たちの知らないところだった。さっきまでは体育館だったのに今は蔦がたくさんへばりついている広間のようなところにいる。「どこなんだ・・・・・ここは・・・・・」ツバサが言った。「分からないよ・・・・・でも、もしかしたら・・・いや、絶対キュランはここを通ったんだよ。あそこに道があるから早く行こう」そして三人はその道にそって歩いていった。道をずっと歩いていくとまたさっきいた広間に着いた。だけどさっきいた広間よりかは少し違った。地面に模様が浮き出ていた。「なんだろ、これ」イズミが模様を調べようとした時、模様から光が射しだし、三人の人間が現れた。                                     続く