河豚 鯛 天丼

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好い事も悪い事も食べ物のように飲み込んでしまえ!そんな日常の事件や思ったことを徒然と書いていきます。
タイトルは「不倶戴天」という言葉を文字ってみました。

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(準)委任契約が労働関連法規(最低賃金とか社会保険とか)の適用を免れるために「偽装請負」という形で用いられることがあることは述べたが、まだ論点がある。

それは労働者派遣という局面だ。

 

実は使用者が指揮命令ができる範囲は、雇用契約を締結した従業員だけではない。

このほかに、「出向」「派遣」という契約を結んだ先から来た人に対してであれば、指揮命令が可能だ。

 

まず「出向」について。

ある会社Aが自分の雇った従業員を「何らかの理由で」別の会社Bに面倒を見てほしいとする。

そこでA社とB社は「出向契約」を締結する。

例えば「A社は従業員CをB社に2年間出向させる。ただし、Cの人件費はA社が負担する。2年経過した後は別途協議する。」といった感じだ。

A、B、Cの三者間の合意により、この契約は有効になる。

ドラマ「半沢直樹」では、従業員に与えるポストがないことが理由となって、左遷先として別の会社に出向させていた。

もともと銀行員である人が左遷先から指揮命令を受けていたのは、出向契約があれば指揮命令が認められるからだ。

ただこれは、「人遣り」ではない。

A社、B社のいずれかがCの人件費を負担することには変わりはないが、Cを出向させたことに関してその対価をA社が得ることはない

労働基準法や職業安定法がこれを禁止しているからだ。

 

労働基準法第6条

「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。 」

職業安定法第44条

「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」

 

職業安定法第44条で「次条」と書かれている部分は労組に認められた例外的なものである。

そして「労働者供給」とは「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることで、労働者派遣法における労働者派遣は含まないもの」をいう(同法第4条第6項)。

人を遣わせても、労働者派遣法に基づく派遣であれば、それはOKだ、と職業安定法は言っているのである。

 

ということで「派遣」について。

これは厚生労働省から許可を得た事業者が行うものである。

「許可」が要るので、運転免許がないと無免許運転で逮捕されるのと同じように、許可を受けていない事業者はやっていはいけない

(旧法では「届出」を出していた事業者なら、一定の条件のもとで行うことが認められていたが、平成27年9月に法律が改正され、この制度(特定労働者派遣)は廃止された。ただし、この制度に基づいて労働者派遣を行っていた事業者は平成30年9月までなら継続することができる)

許可を受けた派遣事業者は、雇用している従業員を派遣契約を締結した先に派遣することができる。

そして派遣を受けた事業者は、派遣労働者と雇用関係にはないが、指揮命令を行うことができるのである。

 

しかしこの労働者派遣という制度は、意外と規制が多い

まず許可がいる。

許可をとるための要件も結構手間がかかる。

許可を維持するためにも厚生労働省の監視下で事業を行わなければならない。

事務所レイアウトが変わっただけで手続きが要る。

これだけでも面倒くさいが、派遣事業者と派遣を受ける事業者が結ぶ契約は、労働者派遣法や同法施行規則で「これを定めろ」と言われているものがいろいろとあって、不自由である。

そして、派遣労働者の派遣期間についてもいろいろ規制がある。

とにかく面倒くさくて、「果たして全部守り切れるだろうか」と考える事業者は派遣などやりたくないだろう。

 

この面倒くさい点が「偽装請負」が行われてしまう理由となるわけで、ひいては芸能事務所と芸能人との契約関係を分析する上で検討するべきものと思われるのだ。

次回は偽装請負をもう少し詳しくみていく。