隣家に住む94歳の義母は入浴が好きである。
昨日朝、9時半頃訪ねると、すでに風呂に入って、鼻歌を歌っていた。
そのうちいつものように自分で風呂から上がるだろうと思っていた。
昼が過ぎ、また訪ねてみるとまだ入浴していた。
湯の温度は40度弱である。
のぼせている様子はなかった。
一度上がって、また入った気配はない。
声をかけたが返事があり、元気であった。
その後、心配になり、何度も声をかけた。
「もう出ませんか」「もう昼過ぎですよ」「出たほうがいいですよ」などと声をかけるのだが、鼻歌を歌い始めたり、「出ません」という返事である。
顔は幾分赤くなっている。心配になって、かかりつけの医者に電話してアドバイスをもらった。
医者はすぐに風呂から出しなさいと言う。
素っ裸の義母をなんとか浴槽から出し、衣服を着せた。
その後すぐ、血圧計で血圧を測定した。
血圧は75-122、脈拍は144。
血圧は問題なし。脈拍は異常に高い、いわゆる頻脈というのであろう。
入浴によるものか、浴槽から出すなどしたごたごたのせいか不明である。
とにかく入浴後の義母の機嫌は良かった。
素っ裸の義母を抱え上げたのは初めての経験だった。

「不老不死」ならぬ「風呂不死」の義母であった。